1.この映画のテーマについては賛否あるでしょう。正直説教臭すぎてセンチメンタルすぎると思います。でもまじめに戦争について、平和について考えたいという人にはドキュメンタリーだかドラマだかなんだかよくわからない表現方法にも、その繰り出される言葉を「聞いていさえすれば」ついていけるのだろうと思います。
逆に、いわゆる昔の大林映画を期待して行った人には、なんとも奇っ怪な、ロマンも情緒もない作品として映るのかも、と思いました。
しかしこの、追いついていけないぐらいの速さで繰り出される台詞と、行きつ戻りつする時間・場所と、意味ありげに、でも後半はそんなのいらなくね?と思えるような言葉まで文字として出して一見ドキュメンタリー風に見せつつも完全に作り事でございという(うそっぽい合成も含め)この映像表現が、面白かった。このエネルギーと爆発力はなんなんだろうと思いました。
大林監督は「時かけ」のようないわゆる大林監督といえばこれ!という時代よりももっと前の8ミリ自主映画時代の作風に先祖返りしているような気がします。デジタルという道具を手にして獲得した自由さが、表現を回帰させる方向に向かわせたのではないかと思いました。
そんな、あれこれ撮った素材をとにかく猛烈なテンポ感でつないで面白がっている、そのエネルギッシュな映像表現に惹かれました。こう言っては大林監督には失礼かもしれませんが、テーマなどはどうでもいいと思いました。ただひたすら、くらいらとめまいがし唖然とするような映像世界に打ちのめされました。