1.《ネタバレ》 さて、唐突で失礼ですが、私は障害の無い恋愛映画は嫌いです。何の障害も無く結ばれてハッピー幸せに過ごす恋人たち、そんな恋愛は映画で観ても何の糧にもならないし、実際の恋愛においても楽しくないとすら思っています。この映画で描かれる障害は“重力”です。遠距離恋愛とか親の反対とか性格の不一致とか、そんな甘っちょろい障害でなく、厳然たる一つの物理的法則が主人公二人を引き離す。これ程に絶望的な障害は中々ありません。だから二人の行く末を本気で応援できる。
また二つの世界が上下を逆様に向かい合っているビジュアルも純粋にわくわくさせるものでした。こういうアイデア自体はSF・ファンタジー小説や漫画、ゲーム等で既に何度も使われているものですが、矢張りCGの技術の進歩により、そのユニークな世界観を実写で非常に実在感ある形で観れたことはとても嬉しい。
それらの同アイデアの過去作において重力の向きが異なる世界に社会性を付加し、貧困や差別を描くという手法は定番であり、本作もその例に漏れず、(便宜上)上側の大企業が下側の世界を搾取して貧富の差を生み出していたり、という設定がありますが、個人的にはそこは匂わす程度にして主人公二人の運命をしっかり描いてほしかった気もします。少なくとも二人が最初に出会って恋に落ち、愛し合うまでの過程はもっと見せてほしかった。逆に、大企業による暴挙や、それに関する顛末は、無難に纏めたという感じで、やや蛇足に感じた。(この辺りのバランス感覚は傑作SF映画『ガタカ』を見習いたい)