1.《ネタバレ》 強盗一味の若夫婦が、警察に追い詰められる。投降した夫は、身重の妻をかばって罪を一身に引き受け、服役。数年後、夫は脱獄し、妻と、写真でしか見たことのない娘のもとへと向かう・・・。ボニーとクライドが、「その後」の幸せをつかもうったって、そうはいきませんわな、というお話。冒頭、妻の妊娠を喜んでいる夫の姿から一転、一軒家にこもった彼らの、警官との銃撃戦。家の中には、警官に撃たれた仲間、家の外には、妻が撃ってしまった警官、というふうに家の中と外がシンクロしているのですが、仲間は死に、警官は命を取り留めたことが、先の展開に波紋を及ぼすことになります。逮捕された夫婦が警官に引き裂かれるように別れていく姿を映画はしっかりと捉えるのですが、やがて月日が流れて娘も生まれ、母子の安定した生活が始まると、もはや昔には戻れない。睦まじい母子の姿が、それはそれで完結したものであるかのごとく、それが誰にも簡単には侵せないものであるようにも、映画はその姿を映し出していきます。しかし実際には誰も、他者との関係は避けられないわけで、彼らをとりまく登場人物たちの姿がそこにあり、単なる脇役ではない存在感で、主人公たちの姿を縁取っていきます。夫は妻のもとへと近づきつつも、結局は永遠に交わることのない「消失点」へと向かって行っているような虚しさが漂っており、それでいて、まるでそれもまたテキサスの自然の一部であるかのようなおおらかさもあり。時に銃撃戦などの激しい場面もあれど、静かな作品、しかしその静かな緊張感をはらんだ抒情性に、強く引き込まれます。