2.黒の領域を目一杯とりながら、見せるべき身体部位や輪郭線は最小の光源によって的確に浮かび上がらせ、画面は常に見事な艶を保持している。
このB・サーティースのローキーによって、イーストウッドの顔面半分も濃い闇に塗りつぶされ、その中に潜む彼のオルターエゴを強く印象づけてくる。
仮面、覆面、ピエロ、人形もまた「裏面」を嫌でも意識させるモチーフだ。
そして、脱『ダーティ・ハリー』として自制されたガンファイトの代わりにクライマックスのアクション画面に閃くのは、稲光とヘリのサーチライト、操車場を走るレール面の照り返しである。
雷光に浮かび上がる犯人とイーストウッドの上下の切返しショット。その相似の表情が禍々しい。
次女が無邪気に語る卑語や護身用教材人形、娼婦の咥えるアイスキャンディー、ジュヌビエーブ・ビジョルドと向かい合っての筋トレで性をユーモラスに隠喩し、80年代ノワールとして倫理コードと戯れつつ、イーストウッド父娘はレイプ被害という過酷なエモーションをも担ってみせる。