3.《ネタバレ》 ロバート・ダウニー・Jr演じる弁護士は、裁判というものを商売としてしか見ておらず、法廷の前で緊張からえずいてしまう新米弁護士にも、依頼人に肩入れしすぎだ、みたいなこと言ってるんですけど、実の父親の裁判、そして父の弁護を自ら行う中で、自らの人生そのものをこの法廷の場に投影させることとなっていく。父親の職業は判事で、裁判こそ我が人生、みたいな人。裁判を単なる商売道具としか思っていない主人公とはおよそ相容れないし、陪審員の選択から始まる法廷戦術の数々には、茶番じみた要素があることも、この映画では否定してない。だけどそれでもやっぱり、裁判というものには、当事者たちの人生がかかっており、だからこそ血の通ったものであるべきだろう、という想い。
映画の中で小難しい理屈をひねくり回す必要なんかなくって、そういう素朴な想いを、こうやって、物語と印象的なシーンの中に溶け込ませてくれれば、充分に感動できるのですね。
セリフで語るよりも、黙って横顔で語れば、幾層倍にも雄弁であることもある。
嵐があって、ラストの穏やかな湖面がある。コレ、「雨降って地固まる」をそのまんま映画化した作品じゃないでしょうか。