2.《ネタバレ》 『七人の侍』や『ガンバの冒険』を引き合いに出すまでもなく、7人も主要キャラが居たならば、それぞれ個性を持たせようとするのが常識的な手法。ところが本作はまるで逆でした。「おばちゃん」で一括りに出来る没個性ぶり。何処にでもいそうな、人の良い、でも冴えない中年女性ばかりを集めました。7人集まっていても、全員で“一人”の人格と観て取れます(だからこそ、誤った選択を制止する者なく遭難したとも言えますが)。さて、この設定が意味する事とは?彼女らは、ほとんど自身の背景を語りません。大人は“楽しかった”昔話は好きですが、“辛い”そして“生々しい”今の境遇は語りたくないもの。皆それが分かっているから、あえて聞かないし、話さないのです。でも想像は難くありません。仕事、ローン、介護、人間関係、エトセトラ。3万円のツアー代金が「高い」と感じる庶民の懐具合。抱える悩みの見当はつきます。彼女らは特別な存在ではなく、スクリーンの前の“あなた”そのもの、ということ。みんな8人目のおばちゃん。そう考えると、どうして彼女らが遭難したのか理由が分かるというもの。“遭難してしまった”ではなく、深層心理的には“遭難してみたかった”だと思うのです。ちょっとハードなハプニング型・ピクニック。そもそも脱日常を求めるのが、旅の目的に他なりません。「私たち何処まで行けばいい?」「教えておじさん」「好きなところへ行けばいい」大丈夫、あなたは自由だよ。そう言って欲しいのが本心。でも現実には、日常へ戻らなくてはいけません。だからラストは「高原野菜、買わなきゃ」なんだと思います。優しく、素敵な、大人のための寓話でした。有名女優ゼロというキャスティングが見事に活かされていました。あれ?でも、やしろ優、出てましたっけ?