1.《ネタバレ》 監督はデンマーク出身の名匠アウグスト。そこにヨーロッパ各国から結集した豪華キャスト。
それだけでもハズレは無いだろうとは思っていたのですが、期待通りの作品でした。
冒頭、橋の上から身を投げようとしていた赤いコートをまとった謎の女性が残していった1冊の本。
(この女性の正体を後半についでのように挿入しますが、これは余計だったと思います…。)
彼女を追うようにリスボン行きの特急に飛び乗る。ミステリアスで文芸的な物語の始まり。
リスボンで少しずつ明らかになっていく本の著者アマデウと、彼の周りにいた男と女たちのドラマ。
本が書かれた当時のサラザール政権下の圧政とカーネーション革命前夜に、レジスタンスとして活動した仲間達。
まだ若かった彼らの過去のドラマと、年老いた彼らが当時を回想する今のドラマ。
2つの時代のドラマが同時進行するミステリ・サスペンスであり、ロマンスでもある。
今のパートを演じる主演ジェレミー・アイアンズの名演に、
クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング、ブルーノ・ガンツら。
過去を回想する、彼ら名優が見せる時の流れの重みを感じさせる味わい深い演技は実に見応えがありました。
きっと彼は電車に乗らなかったのであろう。新たなロマンスの始まりを予感させるラストが静かな余韻を残します。