7.《ネタバレ》 「アニメ版はクソだったのにこの映画版はとてもよかった」(←このレビューの要約を先に書いておきます)
漫画なり小説なりを別のメディアで展開する事は、それがアニメであれ実写映画であれ相当に難しく、スタッフの力量差が如実に現れるものです。
原作への無理解が悲惨な結果を生む事も多く、伊達に原作レイプという言葉があるわけではありません。
この「恋雨」のアニメ版もそうで、原作は女性ならではの視点で描かれた繊細な傑作なわけですが、それが見るも無残なおっさん思考の駄作に成り下がっていました。
私自身、原作が大好きだっただけにアニメ版放送時、最初の3分で「これはダメだろう」と怒りに震えていたのを思い出します。
最初の3分で「クソ」をわかるレベルってのも相当なものですが、こいつのアニメ版に関しては監督の原作への無理解が画面の隅々から滲み出ていて本当に一瞬でわかったわけです。
だって原作を理解していたら、そもそもあのオープニングがありえません。センスがないにもほどがあります。そんな話じゃないんだよ、と。
と、まぁアニメ版への怒りを書きだすと5万文字でも足りないのでおいとくとして、本題である映画版の話。
先に結論を書くと1時間50分という厳しい枠の中に、原作のエッセンスきちんと放り込み手堅くまとめていて、少女とおっさんそれぞれの挫折と再生の物語としてこの実写映画は成功していると思います。
まずキャスティング、原作の「俺が高校生だったらあんな目で見られたら泣いてらぁ」という長身スレンダーのキツイヒロインを演じるのは、現時点で小松菜奈しかないわけでここは最適のキャスティング。
その2000年代のモデル系美人の傍に置くのが、1970年代感漂う清野というのもキャラの対比という意味では成功だったのかな、と。(清野の演技は昭和40年かよ!と思う事もちょいちょいありましたが)
大泉もまぁ普通にキャスティングすりゃそうなるよね、って感じなわけでおおむねキャスティングはよかったと思います。(〇〇なのね松本さんの同僚役もよかったですし)
シナリオはあの原作を1時間50分に収めるために大幅な改変が必要になるわけですが、原作のキモがしっかり押さえられていたため十分許容範囲で良くまとまっていたと思います。
(細かく観れば、たとえば、病院に連れて行ったとき足の傷を見られたくないんだと店長は誤解したけど実はネイルしてない指を見られたくないだけだった…という男性が思いつかない系女性視点小ネタはいれようがあったと思うしそれがある事でそのあとのチマメネタも生きるわけですが、でもまぁそういう事を言い出すとキリがない)
まあそんな感じで、このサイト的に点数つけるとマイナス10点(そんな点ないよ)だったアニメ版と比べるとこの映画版は非常によくできていて、別のメディアに置き換えるときにスタッフの力量というのは如実に作品に反映するんだな、と改めて思う今日この頃なのです。
よくアニメ化されたものが「原作のまんま」なんて言われる事がありますが、「原作のまんま」作られている(ように見える)というのはじつは凄い事なんですよ。