9.《ネタバレ》 現代アメリカの(映画などですらあまり語られない)暗部を描く骨太なクライムサスペンス。
…とまぁ一言で言えばそういう映画なんですが、それだけではないというかそれとはちょっと違うというか。
とりま「実は犯人はこいつだった!」的犯人捜しミステリのつもりで観はじめたわけですが、犯人捜しのミステリじゃありませんでした。
あやしいのはこいつとこいつくらいしかいない…の2か所を順番に当たるだけ!犯人じゃん!っていうこの映画に一般的なミステリ要素は全くありません。
何せ(誰も頼んでないのに)唐突に真相がすべて語られちゃいますからね。
あまりに唐突すぎてこれ何かのひっかけなの?と勘繰ったくらいですから。
とにかく静かで冷え冷えとした画面の中で淡々と描かれる人間の本能からの暴力がこの映画のキモ。
暗い映画なんですが、とにかく映画全体からの圧がすごくて目が離せないんですよね。
訴えたいことは、ネイティブアメリカン居留地はこんなにひどいとこで、何かあっても捜査すらまともに行われないため(劇中でもFBIの彼女が監察医相手に、凍死じゃ呼び戻される!と戦ってました)ほっといたら若い女性のかなりの数はいつのまにか殺されちゃってる的な内容みたいなんですが、日本人にはほんとに縁がないので「そりゃひでーな」しか感想がありません。
で、これ例えば理性や警察権が及ばないような極限状況、地域(しかも未来に悲観的な状況)に少数の人間が置かれると結局こういう事になるのかな…という内容であって、かなり人間の性善説否定の映画なんですよね。
もちろん良い人もいるわけですがが、そういう人は暴力の前に負け組になるっていう。
なかなか考えさせてくれる映画ではありました。