1.作り方がホント上手いですね。自殺しようとした女が救急車に運ばれそれを見守る男から始まるオープニングからパズルのように回想シーンとその過程を組み立てていき、中盤から登場する刑事役のハーベイ・カイテルの現場検証という構成。始めは少し戸惑いますが次第に快感にすら思えてくる。前半では奔放な女性に振り回されていた主人公を哀れな犠牲者に見せておいて、後半ではその正体と愛の儚さを少しずつ露にしていく。テレサ・ラッセルが懇願しながら吐く「愛してよ!!」のセリフにはズドーンと重いもののしかかりました。常に今を見つめこの瞬間を生きようとする女、先の事が気になり相手を分析し束縛する事で愛を認識する男。この二人が相容れる事は無く、そして悲しい結末を迎える事ができない。当然この二人が物語の核ですが、H・カイテルはどことなくA・ガーファンクルに対しホモセクシュアルな感情を抱いているようなシーンや二人の過去を楽しんでいるかのようなシーンが挿入され、直接的に関わっていなくても彼を含めた三角関係とも観れます。「白いドレスの女」のような計画的悪女と言うよりは「ベティー・ブルー」のような憎めない感情的悪女がこの作品でしょう。この監督お得意の”振り返りアップ”のカットはハッとさせられてすごく好きです。