1.映画のレビューする前に、ちょっとだけ、男女に関するわたしの個人的な気持ちを書いておきます。
かつて「男が働き、女が支える」という時代が過ぎ去り、現代では男女ともに一人で生きる力を持っている。
では今の時代なぜ男女が一緒になるのだ?共に歩むのかと考えることが多くなっております。
愛とか恋は確かに出発点でしょう。でも、単なる経済的・役割的な依存関係ではなく、
互いの違いを認め合い、心と心が寄り添いながら支え会えるのか?そうではないことが周囲にたくさん起きています。
私自身、これまで二度の離婚という経験を経て、今は会社という共通の場で支え合えるパートナーシップを築けたことで、珍しいケースと言われ、
知人からも羨ましがられるのです。
しかもわたしもこれは努力というよりも奇跡かもしれないと出逢いに感謝しているのですね。
だから、そんな私にとって、『オン・ザ・ロック』について、男女のことに講釈垂れる資格などないわけです。はい。
でも、がからこそこの映画が大好きで泣きそうなのです。
男女と親子。人生のあらゆる局面—喜びや苦悩、そして孤独や連帯感—を思い起こさせる、深い意味を持った作品でした。
ソフィア・コッポラ監督が描くこの作品は、家族のあり方や現代の男女関係の新たな形を、ユーモアと温かな情感で表現しています。
ビル・マーレイ演じる父親フェリックスは、かつて『ロスト・イン・トランスレーション』で見せた物憂げな佇まいとは異なり、
奔放でありながらもどこか懐の深い魅力を放ちます。
彼の存在は、ただ笑いを誘うだけでなく、父と娘の複雑な関係性を通して、支え合いという普遍的なテーマを浮き彫りにしているのです。
映画は、かつての固定観念にとらわれず、男女がそれぞれ自立しながらも互いに補完し合う関係性―すなわち、経済的・精神的な両面での支え合い―を描いています。
ニューヨークの美しくもどこかノスタルジックな風景の中で、フェリックスと娘ローラが繰り広げる冒険は、単なる家族ドラマに留まらず、
「愛とは何か」「なぜ二人は一緒にいるのか」といった根源的な問いをも私たちに問いかけます。
マーレイパパのブチ切れたあり方は家族にとってわがまますぎるかもしれないけど、実は決して家族を無視したことではないことが理解できるかどうか。
これは男女、親子のコミュニケーションの陥りやすい罠を示した映画でもあるのでしょう。
この映画は、人生という旅路の中で時に立ち止まり、自らの生き方やパートナーシップを見つめ直す機会を与えてくれます。
個人的には、完璧ではないものの、日々の生活の中で互いに支え合う姿こそが真の愛であると確信させる作品です。
私にとって『オン・ザ・ロック』は、人と人のつながりこそ大切だ!なんて青臭くても素敵な言葉を感じさせる傑作であり、
そのメッセージが素敵でたまらないと思うのですね。