1.《ネタバレ》 かなり強烈な映画で、冒頭から30分位のグロテスクさ(⇒中身も外身も)には何となくあの『ネクロマンティック』的なヤバさをすらも思い出してしまって居たのですが、根本的には今作は、昨今だと『哀れなるものたち』とドンピシャで同様なテーマを擁している…という作品だったかと思うのですね。その上で今作は、その『哀れなるものたち』と比較して、完成度とか表現の洗練度とかって面では確かに敵わないか…とも思うモノの、逆にその最も描くべきエッセンシャルなナニものかの「熱量」とか或いはソレが「観た人々の心をどれだけ抉れるか・傷つけられるか(⇒ソレこそが今作の最大の目的だとして)」という面においては、全く引けを取らないとゆーか端的に勝っている・優っているとも思えたのですよね。先に、評価としては彼の作品と前後関係を付けずに、この点数としておこうかと思います。
中盤、バビーが元の家に戻って来るシーンが好きですね。「ママの言っていたコトの意味が分かった」私も思うに、世の中は須く「表裏一体」の構造を擁するモノなのであって、そのコトを(嫌と言うホドに)実感させられるとゆーのが、ある一つの重要なステップアップ⇒むしろ「スタートラインに立つ」コトにも近いのかな、と思ったりしてます。今作は、地獄の様な世界ダケしか知らない主人公のバビーが、却ってその「裏表の意味」を知るに至る中盤までの展開には意外なホドのテンポの好さと、そして脚本上の緻密さもが存在していた様にも思えていて、だからこそ後半でその「後」までをチャンと描き切っているコトも含め、全く以て志の高い=人間性のごくエッセンシャルな部分を描き抜くコトに果敢に挑戦している、という意味における素晴らしい作品だと思ったのですよね。
重ね重ね、序盤の描写の衝撃度・尖り具合に比べれば、拍子抜けするホドに平和で平穏なる今作のこの終い方自体とゆーのは、ある種の「尻窄み」「整合性の無さ」や「終わらせ方に対する迷い」というモノに見える様な気も(一瞬)してしまうのがまた確かかとも思います。ただ、私は実はその感覚って『哀れなるものたち』を観終わった時にも何となく感じられたモノだったと思い出したりもしたのですし、その上でソッチと今作と2つ並べて観てみるとゆーと、それってそもそも実に「難しい問い」であったのだな…というコトにも、何となく気付けたと今回思ったのですね。今作(或いは『哀れなるものたち』)のラストに描かれるべきモノとゆーのは、真に「人間性は何処に辿り着くべきか」という、それこそ「神のみぞ知る」という答えにしかなり得ない…と思わされたのです。その意味では最後に、今回の今作のこの終い方とゆーのは、今現在(或いは有史以来で)比較的に最も「妥当なる」この映画のラストシーン=その答えだったのではないかと、私自身は結構納得していたりもするのですよね。