3.《ネタバレ》 実力派の舞台俳優フィリップ・トレトンが炭鉱閉鎖後の不況にあえぐフランス北部の幼稚園長に。 「田舎の日曜日」のタヴェルニエ監督はソフィー・マルソーを三銃士にしたり、「ラウンド・ミッドナイト」はジャズ、これはドキュメンタリー風と多様な作風。 炭鉱町ものはフランス映画ではそう見かけない。 市の予算が足りず常に逼迫する状況の中で奮闘する若き園長とスタッフの女性たち、彼らを頼りにする住民と無心に遊ぶ子供たち。 幼稚園という狭い場所を舞台にしながら様々な人間の思惑が交錯する中を、ダニエルは情熱をもって駆け回り、外部と折衝し、子供の瞳の奥を見つめ、語りかける。 が、問題はひきもきらない。 家庭人である彼の生活も平行して描かれ、同居する恋人の息子と和解するシーンが目をひく。 なかなか謝るきっかけをつかめずにいた少年が、母親と彼との不和にするりと滑りこんで「女ってむつかしいよな」みたいな目配せをしあって、ちゃっかり男の同盟を結ぶのがおもしろくもあり。 家族との触れ合いに癒されても余裕のないスケジュールに悲劇も起こるべくして起こってしまうが、ダニエルの去就が気になる。 本当に責任をとって辞めるのだろうか? みんなの冷えきった心をあたためた、心づくしの祭りのあとに。