3.《ネタバレ》 「妹と出会う」というラストを作らなかったからこそ、これはアフガニスタンの現状を伝えるための映画だというメッセージが鮮明になって分かりやすかった。それにただ悲惨な人間たちを映し出して「世界にはこんな場所があるんだよ」というだけの物語ではなく、「なぜこのような悲惨な状況が生まれたのだろうか?」という問いかけも見えてくる。 地雷によって片足を失った者たちは確かに被害者だが、この映画では、彼らはエゴイストで食わせ物の一面を持っている。 そういう汚さを監督は何度も何度も意図的に映し出している。 そして主人公に、「こういう状況になったのは他でもなく、この場所にいる人間たちに問題があるのかもしれない」と言わせている。 印象的だったのがハクという少年たちが宗教を学んでいる場面。 体をくねらせながら祈る姿は悪い新興宗教を見ているようで気味が悪い。この宗教の先生は、神さまを愛する気持ちを教えるよりも悪魔を憎む気持ちを教えていた。 悪魔とはようするに、自分たちと違う宗教や自分たちと違う民族、また違う考えを持ったものたちのこと。 そういう悪魔を憎むように教えている。 戦争の原因は「貧困」だといわれ、「宗教戦争」「民族戦争」は永遠になくならないなどと言われている。このアフガニスタンは「貧困問題」「宗教問題」「民族問題」この3つの問題がすべて揃っている。 そして子供たちは毎日、宗教という名のもとに憎しみを植えつけられている。まったく救いがたい状況だ。 この問題の解決は、「誰かが救ってやること」ではなく、「アフガニスタン自らが変わろうと努力すること」だと思う。そうしない限り永遠に続くのではないかと感じた。