1.《ネタバレ》 戦争の記憶がまだ癒えぬ、終戦後八年経過したこの時期でなければできなかった秀作だと思います。鶴田浩二さんが亡くなられた時、自分はまだ十代でしたが、葬儀の際、軍歌が延々と流れる模様がワイドショーで中継され、少々「奇異」に感じたことをよく憶えています。鶴田さんが特攻隊くずれだったとか、いや特攻隊員を見送る整備兵だったとか、映画の宣伝でそういう事実をでっち上げただけとか色々な説があるみたいです。御本人はすべての説を否定も肯定もしなかったとの事。でも彼がこの映画で、空の彼方に消えゆく一特攻隊員を、決して英雄化する事無く真摯な態度で演じられたのは事実。それは誰も否定できないはず。黄門様西村晃はじめ、この映画に出演された役者さん達は、きっと敬虔な気持ちと使命感で撮影に臨まれたことと思う。独立プロ勃興の時期だから出演料も安かっただろうし。ラストシーンのナレーション、それまで感傷を極力排して描いていたせいか、一気にいろんな感情が噴き上がってくる効果を上げています。『よっちゃん、リンゴのほっぺただ』泣けました。ただただ、泣けました。もう一人の主役、繊細キャラの木村功も良かった。『ひめゆり』は結局何度も再映画化されて質が落ちていったけど、願わくばこの作品だけは安易にドラマ化やリメイクはしないでもらいたい、強く心からそう願います。