1.《ネタバレ》 ナポレオンの時代から現代まで続く、金と恋に翻弄される愚行の歴史の総括、と言うか。ある一族の物語を、現代を織り込みながら、寓話的に展開していく。紫の花の咲き乱れる中を、犯人を絶対見つけてと狂い走る娘、おまえを幸せにするから、言う兄ともつれつつ進んでいくと舗装道路に出て現代に戻り、次の19世紀の物語に続いていく、といったような趣向の展開。復讐が縦糸になっている。次は、墓場から戦争の時代(『サン・ロレンツォ』の時代ね)へ移る。試験官にちびちびと祖先のことでいびられたりして、縦の歴史の確認。レジスタンスへの共鳴はあっても、手をあらためられると、ばれてしまう。本人は黙秘してレジスタンスと連帯したつもりになっても、手が・自分の身体が裏切ってしまう。俺が助けたことを忘れるなよ。けっきょく金の力で「誇りある死」を奪われてしまったわけで、一族の影の歴史の宿命というか。そして最後に現代の少年と娘。老人の述懐を聴いて、笑い出す息子と涙する娘、というふうに分離がしだいに表われてきてラストに至る。悪と善の流れはまだ受け継がれている、いう結末。こういう寓話的な世界を描くと、この兄弟の語り口はとても良かったんだけど、今どうしてるの。