3.《ネタバレ》 画面がカラフルでとてもかわいいです。幸せな気分になりそうな配色です。
でもそれは目くらまし。これはすごく巧みな脚本です。唸らされる。
この予定調和の無さ加減といったら、爽快です。期待を裏切り続ける展開は見事。
始めは息子可愛さに大目に見ていた母親のほうが、退学後は手のひらを返したように冷たくなるとか、会社をクビになった父親のほうが妙におおらかになったりだとか。
ここに描かれているのは「子供だから許される」ということのないむき出しの世間です。日本やアメリカでは有りえないでしょう。
そして親たちの態度がとても奇妙だと思いました。ここの親は、ちょっと見にはフランス人らしく子供も一人前扱いして主義主張を尊重しているのかのように見えますが、実は全然まともに子供を相手にしていません。子供のすることはひたすら受け流しているみたい。カウンセラーもそうです。
リュドの奇異な言動に対して、「ああもう」とかいう「個人的な反応」をするだけで、フォローというものが全然ないですね。やりっぱなし、という感じ。
フランスではこれが普通なんでしょうかね。それとも意図的なものでしょうか。
ラストはグズグズになってしまい、残念です。大人になったリュドの近況で終わればよかったのではないでしょうか。完全なニューハーフとして生きる「彼女」の。
ともあれなかなか面白く見られます。リュド役の子のふてぶてしさには苦笑しますが、だから「虐待」というふうに見えないのかもしれません。隠れた良作です。