7.《ネタバレ》 ムルナウというと「サンライズ」や「ファウスト」「最後の人」といった素晴らしい傑作を残してくれた監督で、この「吸血鬼ノスフェラトゥ」もまた退屈というものを感じさせてくれなかった。・・・しかし正直感想は微妙だ。
久しぶりに「今見ると大したことないな」という映画だった。
自分でもビックリだ。
これまで豊作続きだっただけに、尚且つ上で述べた作品で感動しただけムルナウだけに今作はちょっとガッカリと言えた。
ブラム・ストーカーの原作を下敷きに、ヘンリック・ガレーンといったドイツ映画家たちのアレンジを組み込んだホラー映画。
名前のアレンジはモチロン、ねずみ男のような不気味な風貌(実際ねずみだらけ)、原作とは違った結末など普通の吸血鬼映画ではない。
むしろブラム・ストーカーの世界観をまともに映画化したのがトッド・ブラウニングの「ドラキュラ」辺りからだったし、それまではカール・テドア・ドライヤーの「吸血鬼」みたいにまったく別物の吸血鬼映画が量産された。
屋敷までのやり取りが40分もあるのは展開の遅さを感じた。丁寧すぎる印象を受けた。
つうか馬車のスピード早すぎバロス。
原作にある程度沿ったストーリー、ただ少し違うのがヒロインだ。
原作は伯爵がヒロインを誘惑する。
ただ今作は「かかって来い」と言わんばかりに伯爵を呼び込む。
食虫植物の授業をする教授も真っ青なくらい。
つうか教授がマジで使えねえ。杭を伯爵にねじ込むとかそんな能動的な事はまったくと言って良いほどしない。
「血は生命なり!血は生命なり!」と叫ぶ伯爵の部下はいつも通り。ハゲ具合も教授と双璧だ。
いやー次から次へとブラム・ストーカーのファンが発狂するようなシーンばっかりだね。伯爵のハゲ具合とか。
自分の棺桶を一生懸命に運ぶ伯爵が面白い。
墓場が並ぶ海岸とか、崩れそうな古屋、影、吸血鬼=ペストとなって押し寄せるという演出も不気味だ。
ラストはぶったまげた。
何せヒロインが「身をもって」伯爵を誘い込む。
己の肉体と引き換えに伯爵を消し去る・・・こういう「ドラキュラ」もアリだと思った。
コッポラの「ドラキュラ」なんかヒロインみずからドラキュラ殺りに行くんだぜ?
凄すぎてドン引きしたよ(監督を)。