3.《ネタバレ》 アメリカの野球映画のなかでも屈指の作品ではないだろうか。
『フィールド・オブ・ドリームス』のように幻想や幽霊というものを使って野球のファンタジー性を視覚化した作品ではなく、くたびれた中年の男女と有望だが欠点のある若者という等身大の野球に関わるアメリカ人を設定することによって、この映画はアメリカ人(あるいはメジャーリーガーになろうとしてなれなかったロン・シェルトン監督)と野球との結びつきや絆と云った、野球のファンタジーの原型をしっかりと描きえている。
ラストの雨のテラスの場面は感動的である。野球と反対で非直線的だからあなたは素晴らしい、という女に対して、デイビスは「君の話は全部聞きたいが」と前置きして、言うのである。「今は疲れているし、野球や量子物理学の事なんか考えたくないんだ」。この映画はそもそも野球映画である、という前提を覆す台詞でこの映画は終わる。これは日本人にはけして書けない台詞だろう。アメリカ人が(あるいは監督が)野球をどれだけ身近で永遠なものと考えているかがわかるのである。そんな深い絆を見せ付けられた後に、ホイットマンとかいう人の「野球はアメリカ人のスポーツだ」という詩に、日本人で野球好きの私としては寂しいながらも納得してしまうのである。
名シーン・名台詞は枚挙に暇がない。脚本とともにロン・シェルトン監督の最高傑作だと言えよう。
それにしてもハラワタが煮えくり返るのは『メジャーリーグ』である。この映画の設定・ディティールのほとんどを流用して作っていやがる。こんなひどいこと、なんで誰も言わないんだ。