3.ともさかりえさんって、非常にいい演技をする女優さんなんですね。一言で言えば、自然体。映画らしくなく、まるでほんの横にいる彼女と会話しているような、どこにでもある、普通の会話を上手く表現しています。それが一番良くあらわれていたのは、「え?」とか「なになに?」とかいう瞬間の演技。眉間の皺、ちょっととがった口許、困ったような眼、どれも媚びるわけでなく、甘えるわけでなく、突き放すわけでなく、お互いの距離を表情だけで演出してしまうのは、その上手さに感服したという気持です。それを、少しずつ、少しずつ病気の進行とともに変化させていったのは、監督の力でしょうか、女優の力でしょうか、本当にこの演技には驚かされました。それにあざといと感じる方もいるかもしれませんが、篠田昇の映像力。(岩井監督作品の撮影もほとんど彼。)彼は光線の使い方が秀逸です。現在、日本で日光を映したら一番のカメラマンなんじゃないかと思います。ストーリーのファンタジックさに少々無理があったのが惜しい気がしますが、"キタノ"という設定やそれにつながる英助とヒデミのストーリーの流れに、心を締め付けられたので良しです。神の存在や、何のために生きてんだ!ってことにもう少し突っ込んでくれたら・・・と、期待の8点です。 あ、そういえばキタノ役は青山真治でしたね。青山監督映画「EUREKA」に出演した利重剛と、利重監督映画「クロエ」に出演した青山真治。「ベルリン」助監が青山真治だったことも考えれば、なんだか深いつながりを見て取れますね。しかし、俳優としては圧倒的に利重剛が上手い!