2.《ネタバレ》 『列車の到着』に始まり、列車の到着に終わる。
映画の中で語られた一つの事件も、これから幾度も繰り返されるであろう束の間の出来事の一つに過ぎない、と。
着いた駅から流れ出てくる外国人労働者たちの歩み。石切場の勾配、入り江、鉄橋、官能的な葡萄畑の風景、それら南仏の実景に
同時録音と思しき環境音が生々しく響き、そして労働者たちの歌が印象的に流れている。
中景、遠景を中心とした撮影で風土と人間の存在・動きをまるごと捉える。その引きのショットの距離感が絶妙である。
女が入水自殺を図ろうとボートを漕ぎ出す水辺のショット。逃走するトニが猟銃であっけなく射殺されるショット。
それらは対象を突き放すような、それだからこそ凄味と誠実を感じさせるカメラである。