60.《ネタバレ》 アーサー・C・クラークとタッグを組んで作り上げた超迷作。
「迷える名作」を撮らせたらアメリカ無双のキューブリック渾身の作品。
これは子供にこそ見せたい映画だね。
子供は何の抵抗もなく、取り敢えずありのままを受け入れようとする。
感受性の豊かな子供は何を思うのか。
そして大人になって再び見る・・・この映画はそれだけ難解でもあり、至極単純な映画でもある。
何者かが知識を得て何かに目覚め、それを繰り返して心理に迫る。ただそれだけ。
その過程が問題だ。
類人猿が「モノリス」に触れて知識に目覚めるファーストシーン。
動きだけで伝えるその世界観は流石。
アフリカの荒涼とした大地と類人猿を「創造」したその美術。
これ役者が演じてんだぜ?
メイクと俳優たちは人間国宝になっていいよ。
猿が放った「武器」は、近未来では宇宙を駆ける「武器」となった。
現代の宇宙時代の描写も中々。
宇宙船が音もなく飛び交う宇宙。
この頃は既に「宇宙は暗黒」って認識があっただろうけど、やっぱり絵的に見栄えが悪いよな。
実際こんなに光ってたら怖いわ。
超巨大恒星がどんだけ密集してんだってくらい。
宇宙空間における描写も、今見ると科学的交渉が食い違った部分も多いが、上下の無い宇宙空間、何処までも見渡せる広大な空間、無音の世界観の表現は今観ても凄い。
月の裏側の描写がほぼ完璧ってのが凄い。
だって公開当時は誰も月の裏側に行ってなかったんだぜ?やっぱキューブリックは宇宙人だわ。
月面のモノリスでの騒動、ちょっと長く感じた。
どうせなら「HAL」と木星星団の掘り下げに時間を割いて欲しかったなー。あるいわ上記の部分を削るか。
本作は何といっても「HAL」の反乱。
虚空の宇宙は言わば「密室」。
鬱憤が溜まるのは人間だけじゃない。
機械もいずれは「オーバーヒート」がやって来る。
まして人工知能の発達したコンピューターだ。
自分を排除する=船全体の危機と結びつけちゃうんだろうな。
プログラムに忠実だったのか、それとも本当に心が宿ったのか。
あの真っ赤なランプで、無言で語りかけるような感じが怖かった。
キューブリックは本当こういう「怖さ」を描かせたら天才。
ラストは多種多様な解釈が出来るだろう。