1.《ネタバレ》 この映画が面白いのは、サスペンスの基本に忠実なところでしょうか。
追われる側は追う側の作戦を知らない状況で追われ、また、追う側は追われる側の打った手を知らない状況で追うという流れでストーリーが進行していくのですが、観ている側はその先々で起こりうる状況を前もって予測出来てしまうため、劇中の登場人物よりも先に危機を察してスリルを味わうことが出来てしまうわけで、この当たり前のような演出がとてもよく出来ていて非常に見応えがあります。
この映画の場合ですと、ウィルソンが殺人が起こることを予測しそれを阻止しようとするところとか、キンドラーが梯子の上の方で横の棒を鋸で切るところなどですが、“当たり前の演出”であったとしても難しいのは、やはりテクニックやセンスが絡んでくるから。
例えば、スプラッター系でよくあるような画面上に突然バーーーン!!と現れて驚かすのは簡単だけど、観る者がその先に起こりうる出来事を前もって予測できる状況で恐怖心を煽るのは、これは作家によって上手く出来る人とそうでない人とがいると思います。
また、映画の終盤で、死んだと思っていた妻が生きていたときの夫婦間の会話もゾクゾクしますし、最後の時計台のシーンは、オブジェの持っている剣に刺されて塔から落ちてしまうという、ちょっと古臭い演出ながらも非常に切迫感溢れる感じがあって、ここの迫力はお見事でした。
映画の中で終始聞こえてくる時計の鐘の音が観終わってからもずっと耳に残るほど印象的。