3.《ネタバレ》 寓話系ってあまり好きじゃないけれど、これは別だった。
まず、作画が素晴らしい。けっして昨今のCGのような迫力を持っているわけではないけれど、一枚一枚の絵が単純なようで工夫が凝らされていて、何度も目を見張らされた。城の造型はもちろん、巨大な機械兵の手の形など、諸処に独創的なセンスが表れている。キャラクターのちょこまかした動作はとてもナチュラルで、しかも愛嬌いっぱい。とくに王様の愛犬! あの可愛さはやばい。
宮崎駿作品との類似点の多さはちょっとびっくりするほどで、無条件に宮崎駿の才能を信じていたものとしてはショックだった。魔法と科学を融合したような不思議な世界観はジブリだけのものだと信じていたのに……。もっとも、似ているのは表層的な部分に留まっているし、ジブリはジブリで独自の境地に達しているから構わないと思うけれども。
この映画でいちばんコミカルなのが臣下たちが盲目的に王様を崇める下りで、次々とまぬけな銅像が製造されるシーンでは笑ってしまった。でもそこが同時にいちばん嫌なエピソードでもあって、笑う一方で薄ら寒い思いがした。実際、独裁者ってのは傍からみると明らかにバカでしかなかったりする。こんなにも滑稽な世界がある意味では「現実的」であるということに気づかされて、心底嫌な気分になった。
そしてこの結末は……尾を引く。普通なら煙突掃除と羊飼い娘が結びついて予定調和のハッピーエンドを迎えるところを、瓦礫の山を築いて放り出してしまう。機械兵が何かを考え込むかのようにたたずむ寂しげなラストシーンと、あの素朴だけどとても美しいピアノの音楽。愚かな独裁者を倒す正義もまた浅はかなものでしかなく、跡に残るのは廃墟に過ぎない。なんともまあシビアで、辛すぎる結末だ。
よくできた寓話だと思う。遠い時代の遠い世界の物語でありながら、まぎれもなく現代の、現実の物語でもある。