2.《ネタバレ》 第二次世界大戦末期、フィリピンで敗走する日本兵の顛末を描いた戦争映画。
敗残兵が絶望にまみれながら、ウロウロと彷徨うところは、さながらロード・ムーヴィーの様相を呈している。
食糧に飢えた敗残兵たちは、人間を殺し“サルの肉”と称して、人肉を食らう。
飢えと絶望に苦しむ人間にとっては、至極当たり前の行動の様に思う。
そういった極限の状態を、市川崑監督はモノクロ映像を通して、にくいまでに巧く撮りあげている。
ラスト。
人肉を食らうぐらいならば、死を覚悟で現地の“普通の人間が集う”場所へ一人向かう。
最後まで人間らしく生きることを肯定した内容だが、それはどうだろう。
生き残ることについて本能的に動くであろう状況において、そんな奇麗事が成立するのだろうか。
しかし、あくまで同胞を殺し、その肉を食らうことは否定すべき内容でもある。
極限の状況において、死を選択するのか、それとも人肉を食らって本能的に生き延びるのか。
その場に置かれない限りは、自分がどっちを選択するかは分からない。
こういったことまで考察させられる本作は、極めて問題提起性の高い作品で、傑出した戦争映画であり、異色な戦争映画とも言えるだろう。
いずれにしても、最初から最後までグイグイ引きこまれ、楽しめたのも事実。
市川崑監督の底力を感じ取ることができた作品だった。