1.露西亜のアンナ・ステンを第二のグレタ・ガルボたらしめんとしたゴールドウィンの野心は結構だが、結果は歴史が証明しているので私が今更菟や角言うまでもないだろう。比較対象を間違えさえしなければ、アンナ扮する波蘭(ポーランド)娘マニヤも(それなりに)素朴で可憐な感じは出ている。しかーし、女房持ちのスランプ小説家クーパーに作品執筆をインスパイアさせ、離婚を決意させる程までの魅力は出せていない。だから展開に有無を言わせぬ説得力が不足している。それでも本作を辛うじて救っているのはMr.センチメンタルことキング・ヴィダーの見事な手腕。ガルボに遠く及ばぬ彼女が本作で(飽く迄それなりに)輝いたのもヴィダーの演出の賜物である。ポーランド移民たちのつつましい暮らしを活写するに至っては完全に彼の独壇場だ。主人公トニイ・バレットは自己中過ぎてクーパーが演じていなければ全く魅力を感じ得ないトコロだったが、ラストシーンでその印象は逆転した。アニヤが手を振る姿を窓辺で垣間見て手を振り返すや幻の如く消え失せる場面での万感を込めた表情。アレで思わずグッときてしまった。上手い。流石クーパー、天晴ヴィダー!