2.本作は地味ながらも、実にいい味が出ている。
銀座を中心とした風景描写も素晴らしい。
成瀬監督は、ほんとに風景描写がうまい。
そして香川京子。
成瀬監督の『おかあさん』では溌剌とした魅力をふりまいていたが、本作でもそれに匹敵する魅力を感じた。
特に、堀雄二と目を合わせた時の、あのはにかんだ表情。
あれは、当時の香川京子にしか出せない、とてつもない魅力を含んだ表情だった。
「香川京子の周りにだけ爽やかな高原の風が吹いている」
まさしくその通りである。
本作は、一般的には特別に評価の高い作品ではない。
しかし、ここでの平均点数が示す様に、本作は地味ながらも紛れもない傑作であった。