1.《ネタバレ》 雷蔵晩年の現代劇の代表作となる犯罪サスペンス映画。かなり久しぶりに見たが、やはり雷蔵演じる塩沢がクールでニヒルでカッコよく、それだけで見入ってしまうし、森一生監督の映画にも関わらず、脚本に参加している増村保造監督の映画のような雰囲気がちゃんと出ているのがすごく、独特の日本映画離れした雰囲気が本作にピッタリと合っていて、時系列を組み替えた脚本の構成も映画の緊張感を終始持続させるのに成功していると思うし、またこれによってミステリー要素も加わり、やはり面白かった。小料理屋の主人の塩沢の裏の顔は凄腕の殺し屋という設定だが、演じる雷蔵は全く違和感を感じさせずに塩沢の表と裏の顔を演じ分けており、最初に見た時はまだちゃんと見た事がなかったので思わなかったのだが、もし長生きしていれば必殺シリーズの殺し屋とかを演じていたのではないかと思うほどの自然さがある。本作ヒロイン役の野川由美子は初期必殺シリーズによく出ているので、ある程度、本作があのシリーズの参考にされたのかなと思ったりもした。その野川由美子演じる圭子はいかにも増村監督の映画に出てくるような下品な阿婆擦れという感じがよく出ててとてもハマっていたし、カッコイイがどこか抜けているヤクザの前田を演じる成田三樹夫も持ち味がよく出てて、決してカッコイイだけではない喜劇的な部分の魅力も感じることができ、これもまたハマり役だ。(とくに塩沢の去り際の捨て台詞をそのまま圭子に平然と言い放って去っていくラストシーンが最高に笑える。この最後の最後で本作は成田三樹夫がすべて持って行ってしまった。)宮川一夫によるシャープで見事な映像や、鏑木創の耳に残るテーマ音楽の素晴らしさも相まって、間違いなく傑作といえる映画だと思う。(2021年8月29日更新)