3.《ネタバレ》 寅さんのパイロット版のような雰囲気です。笑えてホロリの人情喜劇。ただし控えめです。大笑いという感じではありません。まだ、笑わせ泣かせの手法が確立されていないような気がしました。本作と比べると『男はつらいよ』の洗練具合、完成度の高さがよく分かります。ハナ肇(自分たちの世代では銅像でお馴染み)も演技が上手いとは言い難い。でも自分は本作を好きになりました。親分は確かに馬鹿まるだし。御新造さんに対する気持ちも、おだてに乗りやい性格も全部バレバレ。故に周りに都合よく使われ、貧乏くじを引かされるハメに。でも本人は全然そんなことに気付かない。一所懸命が空回りするタイプ。ホント単純です。でも自分は親分さんに憧れてしまいました。冗談ではなく真面目に。自分には無いものを沢山持っているから。損得勘定なく動けること。表裏が無いこと。馬鹿を隠すことに苦労するより、馬鹿まるだしのほうが清々しい“いい生き方”に思えました。手紙で知らされた親分の最期には、不覚にも涙。「池にはまって溺死」。ちょっと笑える“らしい”死に方。植木等は言います。「大人物を亡くした」と。ふざけ半分なのは確か。でも半分は本当に尊敬していたのだと思います。それにしても命を助けられた娘さんが、親分さんを忘れていたのは切ないですね。でもそれも含めて“らしい”のかも。出来ないけれどあんな風に正直に生きてみたい。