1.《ネタバレ》 「イディオット(Idiot)」は「愚か者」とか、「ばか者」、「白痴」の意。さて、映画の中のイディオッツ・グループは「正常」であるにもかかわらず、社会に上手く適応できず、社会から排除されてしまいました。「精神異常な人は社会で守らなければならない。」という社会的規範を逆手に取って、彼らは精神異常の振りをして無銭飲食を繰り返し、働かずに生きています。僕は正常な人間であるイディオッツ・グループの人たちが自分を精神異常に装うことで、「自分は精神異常のふりをしているんだ。だから自分は正常なんだ。」と社会に適応できなかったという現実から目を背けようとしているように思いました。また、イディオッツ・グループは食事中にヨダレを垂らしたり、とんでも無い行動を取っているのに、一般の人は平静を装って対応します。そんな一般の人の「私は精神異常の人を差別をしませんよ」という偽善をイディオッツ・グループは裏でバカにしたりもします。そういう彼らの姿勢は、「正常」であるはずの自分たちがどうして社会から排除されてしまったのに、「異常」と判断されている「精神異常」の人たちがどうして社会から守られるのか、という「社会」、「現実」に対する皮肉なのだと思います。人間社会の不合理を鋭くえぐり、何が「正常」で何が「異常」なのか、人間とは何かという疑問を観客にぶつけた後、フォン・トリアー監督は答えを示さないまま、中途半端に映画を完結させてしまいます。何を感じ、何を思ったのか、監督に試されているような映画です。