1.小さな女の子の目を通して、生のハーレムを描くというのがやはり新しかったですね。子供は正直だから、遠い未来のことよりも目の前のテレビが大事だったりする。白人になり切ろうとしているかのような親戚のおじさんおばさんを無意識に否定してたり、よそ行きのキレイな服より普段の汚い格好の方が好きだったり。ハーレムの黒人ってどんな生活をしてるんだろう?って単純な覗き見趣味だけで観ても、無意識のうちに自分たちが作り上げているイメージとのギャップにはっとさせられたりします。黒人といえば家族に必ず麻薬中毒患者や犯罪者を抱えていて、家庭内は荒れ放題でケンカばかり、とアメリカ人でさえ思っているのを敢えて、純然たるホームドラマをポン、と持って来ちゃうところがスパイク・リーの面目躍如といった感じです。夢を追うお父さんに、現実的なお母さん、生活苦や隣人紛争、コミカルに愛情たっぷりに描かれる普通のホームドラマ。黒人=不幸、のようなステレオタイプから脱却しつつも、黒人社会をもう一歩深く掘り下げること、こういうことが出来る時代になったのだなあというある種の感慨もありました。ヒステリックに人種差別撤廃を叫ぶ時代が終わったことはもちろん喜ぶべきことですが、本当の差別は言葉の上から取り除かれたにすぎません。この作品が珍しがられているということ自体がダメなんだと、スパイク・リーは無言のうちに伝えているのではないかと思います。