1.《ネタバレ》 監督は社会派山本薩夫。で、当然の結果として、これはかなり変な座頭市だね。鈴木瑞穂演じる大原秋穂という侍が、百姓たちに、いかにすれば効率よく収穫があげられるかを説き、団結して横暴なヤクザたちに非暴力で立ち向かうことの重要性を説く。まるで左翼思想の煽動かとも思ってしまうようなやり取り。彼の思想は、理屈で説得できないものは斬るしかないという市の発送とは正反対。でも、市はその大原に惹かれていく。しかし、その非暴力思想の大原が、最終的に市の剣さばきに救われる。だからと言って、この映画は、市が正しく、大原の理想論が誤りなのだ、という単純な線引きをしない。それは全てのキャラクターにおいてもそう。善玉と悪玉の区別が容易に行かない世界。評価も分かれると思う。特に、三国連太郎のヤクザのキャラは特に後半描きこみが足りないかなとも思う。でも、私は、これ、結構好きだった。断定を避け、判断を観客に委ねるようなこの姿勢が、ある意味潔いのだ。