504. 嘗て無い密室ディスカッション・サスペンス・ドラマという斬新さは21世紀の今日まで類似品すらロクに出ず終いの正に画期的なインパクト!!”最も低予算で作られた名画”として不滅の輝きを放つシドニー・ルメット監督33歳の処女作にして最高傑作がコレ。勿論MVPは(元はTV版用に書いたとは言え)渾身のオリジナル脚本を書き上げたレジナルド・ローズ。しかし、それも凄まじいテンションを維持し続けるパワフルなルメットの演出あればこそ、これだけのクオリティとなりえたのでは?特筆すべきは12人全員のキャラクターが実に鮮やかに活写されている点だろう。並みの監督なら精々2~3人描ければ上出来の部類のハズ。そうすると、ヘンリー・フォンダの一人舞台になってしまっていた可能性は可成り高い。この点でも脚本の巧みさとルメットの上手さは群を抜いて素晴らしい。俳優もいずれ劣らぬ名演だが、個人的にはヘンリー・フォンダ演じる8番よりも、リー・J・コッブ演じる最後まで有罪を主張する3番よりも、ジャック・ウォーデン扮するナイターのコトばかり気にする好い加減な7番よりも、E・G・マーシャル扮する冷静な理論派の4番よりも、マーチン・バルサム演ずる冴えない進行役を務める1番よりも、エド・ベグリーの狂信的な10番よりも(長いっちゅーに!)、最も印象に残るのはジョセフ・スウィーニィ演じる老人の9番陪審員だ。イヤ、実にイイ味出してマス!!冒頭トイレからナカナカ姿を現さず顰蹙を買いまくるボケぶりから、一転してフォンダを支持するばかりか、冷静な4番を論破する活躍への対比は実に見事!!場面的には8番の畳み掛けるような挑発に問題となっていた少年の言葉「Kill you !!」を思わず叫び、ハッと我に返る3番のシーンなんて鳥肌モノの迫力。ああ~でも、クラクラ意見を変える12番役のロバート・ウェッバーもイイよなぁ。あと、ナイフの矛盾を指摘したスラム出身の5番を演じたジャック・クラグマンも好きだし…。そうそう、犯行現場に少年が戻った点に疑問を投げかけ、7番を厳しく問い詰めたジョージ・ヴォスコベックの11番も実にウマかった。忘れちゃいけない、何とも気の弱そうな2番を演じたジョン・フィードラー!!のど飴が場を和ませてたっけ。9番の爺さんを庇って3番をたしなめるエドワード・ビンスの6番もブルーカラー丸出し演技が良かった…って12人全員コメントしちまったよ~オイ。こんな空前絶後の本作に…10点満点以外ないっしょ。余談だが、初公開時には女性が全く出ない余りのムサ苦しさに大コケ。(某神隠しも受賞したという)ベルリン映画祭金熊賞を受賞してから一気に再評価されたそうだ。 【へちょちょ】さん 10点(2003-02-10 03:20:55) (良:8票)(笑:1票) |
503.《ネタバレ》 そもそも少年がシロだって確信している訳でもないくせに「何となく無罪」「みんなクロ判定だから」的な切り出し方をするH・フォンダの姿勢はいかがなものか。実は何かとっておきの隠し球を持っていて、それで一気に場をひっくり返すのかと思いきや、主張のほとんどは単なる屁理屈。確かに説得力はあるしいくつかは真実かもしれない。でも真実じゃないかもしれない。あくまで可能性。それなのに「可能性はある」の一点張りで有罪派に噛み付いたってしょうがないよ。しかしこの映画で一番怖いのは、そんな確信のない証言にひとり、またひとりと自分の主張を変えていく「その他」大勢。十分な議論や検証が行われることなく冤罪が成立してしまうことより、その冤罪が「長いモノに巻かれる」ことしかできない人間(日本で裁判員制度が開始された場合、大多数がこの「その他」だろう)が、その場の雰囲気でなんとなく判決を決めてしまうことの方が、僕は遥かに怖い。というわけでどっちつかずの5点(←おい!) 【とかげ12号】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-06-02 17:39:41) (良:3票)(笑:1票) |
502.アクション映画などで、時間の割に短く感じたという誉め言葉がある。逆に言えば時間の割に長く感じたものは退屈な映画ということができ、実際そういう作品は多い。本作は90分という短さにも関わらず、いつ終わるとも知れない議論、せまっ苦しい部屋とうだるような暑さのおかげで観てる方までストレスがかかり、実際の鑑賞時間より非常に長く感じる。しかしこのストレスが逆に退屈さを消している。「早く終わってくれ」と思わずにはいられない作りのはずなのに、後から後から発される言葉にその思いは打ち消され、あの部屋にどんどん引き込まれてしまうのだ。そしてラストでストレスから一気に解放され、あの部屋から外へ出たときの爽快感。劇中の空気をここまで観る者に伝える神業に、心から素晴らしいと言わせていただく。 【えいざっく】さん [DVD(字幕)] 10点(2004-10-06 12:50:00) (良:3票) |
501.本作品に限りませんが、皆が良いという作品に低い点数をつける時は、Hフォンダの心境になります。誰だかわからない匿名サイトですらそうですから、顔の見える場面で、異を唱えるのかなりの負担でしょう。但し、この陪審員達の場合は、たまたま集まった連中で、互いの素性もよく判らない、終われば別々の後腐れの無い間柄。だからこそ、思った事を素直に言える状況にあり、意見を変えるのも心理的負担はなく、比較的たやすい。しかも自己の利益は絡まない為、論理性が比較的通りやすい状況下にあり、人間の心理云々を言うにはちょっと特殊な設定に思えます。よって感情的に有罪を主張していた連中が論理的に説得されて無罪に転じていくというオセロをひっくりかえずような理路整然した展開には、さほど驚きも感動もないです。一方普段の社会生活の中での意見の対立は、私利私欲やその後の付き合い等々の打算も働くため、論理と感情が入り乱れた一筋縄ではいかない複雑さが潜んでいると思います。そのような状況下でも何らかの意思決定はされるし、時には善悪を無視した非常に危うい決定もあるかと思うと憂鬱になります。 |
500.この映画では、少年の刑事裁判という端的な形で法治社会のあり方を示していく。確かに感動するし、素晴らしい。でも、私はここで一歩踏み込んで想像するのだ。もし、これが政治家の汚職疑惑やカルトの連続殺人疑惑であったなら、ヘンリー・フォンダはやはりこのような格好で無罪を主張しただろうか?。陪審員達も、やはりあのように気持ちよく別れることが出来ただろうか?。そして私もこの映画に感動することが出来ただろうか?、と。しかし、私は彼がやはり無罪を主張したと思いたい。法律は時に「冷たい」とか「人情味がない」などと形容される。もし悪徳政治家を弁護したなら、特に日本では確実に人非人扱いされるだろう。しかし、悪徳政治家を救うのが推定無罪という法理ならば、無実の少年を救うのも、また同じ法理であることを忘れてはいけない。「推定無罪」ばかりが印象に残りがちだが、この映画を貫いているテーマは、やはり同じように重要な法理の「法の平等」であると思う。陪審員は法律家でない、ただの一般市民だ。法律は「みんなのもの」で、一部のものではないという理念。高官であれ泥棒であれ、先入観や偏見を持ってはならない。誰が相手でも法は等しく適用されるべきなのだ、という厳しい自戒の精神がこの映画にはある。この映画を「国家権力VS大衆」の構図で読み解く向きもあろうが、(現実がどうであれ)そこには「国家や法は権力者のもので、自分たちのものではない。」という感覚がどこか潜んでいるように感じられ、この映画の「法や国家は自分たちで作り上げたもので、運用も行使も市民が行う」という自負と責任の精神とはまるで逆のものではないかと思う。この映画を観れば、法の正義や公正、陪審員の責務とは何か、といったことを通じて、人が人を裁くことの難しさや、法律に関わる人間の持つべき資質、法と社会正義の問題などを考えずにはいられない。だから大傑作なのだと私は思う。 |
499. 4番陪審員がヘンリー・フォンダに問われて、たった四日前に夫婦で見た映画の共演者をよく思い出せなかったシーンがあり、「なにしろ低予算の三流映画でね」と言い訳をいわせている。この科白が台本にあることが当時出演者の気持ちを大いに引き締めたのではと想像する。自分がほれ込んだ作品だからヘンリー・フォンダの気合がはいるのは当然だが、あとの11人の役者陣が「たとえ低予算でも、たとえフォンダ以外は名前を覚えられなくても、三流ではない、一流映画を作ってみせる」と揃って奮起し、渾身の演技をみせたからこそ、秀逸な脚本、カメラワークとも相俟って、四日どころか、何年にもわたって記憶に刻み込まれる名作が生まれたのだと考えたい。若いころとは違って、今の私が一番感情移入するのは、理不尽に突っ張っていて最後の最後でNot guiltyと叫んだ3番陪審員。だって男って、たとえ自分が間違っていると内心わかっていても、面子をつぶされたと感じる形で自分の意見を180度変えるのは徹底的に嫌いな生き物だもの。それをさせられた辛さがよく出ていた。だからこそ帰り際にそれをやらせてしまったと自覚していたヘンリー・フォンダが3番陪審員に上着を着せてやり、いたわりを示すところがグッと来る。女の人にはわからない世界かもしれない。 【南浦和で笑う三波】さん 10点(2004-01-27 16:06:40) (良:3票) |
《改行表示》498.個人の意見は往々にして、集団の中に埋没してしまう。集団の中でひとり異を唱えることは信念が必要で、誤魔化しの効かない責任が伴う。ヘンリー・フォンダもトイレの中の密談で責任を問われる。12人の陪審員全員の責任であるはずの評決が、ここではフォンダひとりの肩にのせられてしまう。こんな場面が社会にはそこかしこに転がっている。セミナーという商品にまでなったくらいだ。個人の中に降りていけば必ず、その人だけの意見がある。しかし時間に追われる私達にはそれが億劫だ。そんなことよりも蒸し暑いこの部屋から早く出たいし、今夜のナイターを見逃したくない。だから右へ倣えで責任を集団の中へ捨ててしまう。 また、自分でも説明ができない感情の原泉にまで人を踏み入れさせたくもない。まして自分の意見がステロタイプな社会的刷り込みによる偏見に支配されていることなんか認められようか。アイデンティティの崩壊である。 この映画が面白いのは、事件を読み解く過程で男たちの持つ価値観も読み解かれていくところにある。人は完全な客観には成り得ないことを踏まえた上で、努めて事実を探ろうとすることの大切さを観客に訴えかける。事件の焦点をわかりやすく区切り、ひとつひとつQ&Aで決着を見せていったのも万人向けでよかった。 【337】さん 9点(2003-12-01 13:27:55) (良:3票) |
497.《ネタバレ》 後に数々の社会派作品を世に送り出したシドニールメット監督の記念すべき最初の作品なんですね、この事実に映画史の凄さを只々感じてしまいます。陪審員十二人はざっと役付けると、進行役、気が弱い者、無責任、理論的、労働者、偏見、親子関係難あり、スラム街育ち、移民、老人、優柔不断、そして中立と、この場にいる人間だけで民主主義国の話し合いが出来ちゃうっていうくらい個性派ぞろい。ここで間違っていけないのは、話し合いの末、一人の恵まれない生い立ちの少年を救うことが出来ました、という話じゃないって事。実際のところ少年は本当に無罪なのか、真犯人がいるとしたら誰なのか、そんな事は一切語られません。民主主義というもの、その物自体について考えるというのがテーマです。人が人を裁くことの難しさ、その為には納得するまでの議論を持たなければならない。汗が流れる程の暑い密室で成されるその熱い議論が、脚本の面白さで手に取りやすいものになっています。議論を重ねるに連れ一人また一人と無罪に転じていく訳ですが、私が一番気に入ったのはやはり一番最後の一人です。1時間半の間ずっと怒り怒鳴っていた彼が破り捨てた写真に写っているのは、全く別人のように笑顔で笑うお父さんなのです。何て切ないシーンなんでしょう。いさぎ良く、清々しい雨上がりのラストシーンも秀逸です。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 9点(2023-04-18 15:56:50) (良:2票) |
496.苦手なヘンリー・フォンダ故にスルーしてきた本作。名作の呼び声高い本作は「映画は脚本が命」を実感する紛うこと無い傑作でした。再現シーンが皆無の99%室内会話劇は何時も思う人が人を裁く事の難しさを見せつけられます。本作では有罪=死刑で人の命がかかっているところに陪審員制度の重みを感じるところです。 |
495.《ネタバレ》 11対1の不利な状況からの逆転劇。密室の会話だけの展開なのにも関わらず、論理的に分かりやすく説明して相手を納得させるあたり、かつての敵を仲間として引き入れるジャンプ漫画的な熱さを感じるのは自分だけか。ゲームのように一つ一つクリアしていく没入感がある。ただ現実はゲームではない。一人の少年の人生が掛かっており、常にヘンリー・フォンダみたいな男がいるとは限らない。一周回って少年はクロかもしれない。それでも一つの疑問から議論し尽す姿勢こそ重要であり、それを放棄することもできる民主主義の恐さと脆さを体現した名作に間違いない。 【Cinecdocke】さん [地上波(吹替)] 10点(2020-11-27 21:32:35) (良:2票) |
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494.《ネタバレ》 この映画、何回観ても面白いです。ストーリー、結末は分かっていても何度も観たくなります。自分の中では「推理物」というイメージですが、アガサ・クリスティーから金田一までいろいろ観ていますが、最終的にはこの映画に行き着いてしまいます。会議室の一室だけで進んでいくのに我々の頭の中には犯罪の場面場面が不思議にイメージでき、また焼きついてしまいます。最初観たときは、これは映画と言えるのか?と思ったのですが、何回も観ていくうちに「これが本当の映画なのか」と勝手に思うようになりました。映画とは空想・想像の世界、ならば「絵」ではなく「話」だけで観る人それぞれが、それぞれの頭の中に映像(映画)を創りあげていけばいい、と勝手に解釈しております。 【金田一耕助】さん [DVD(字幕)] 10点(2015-09-09 21:42:56) (良:2票) |
《改行表示》493.映像に魅力を感じない。なぜか脚本だけでなく演出まで緻密だと評価されてることが解せない。クローズアップを利用した巧みな心理描写などと言われている。平凡な教科書通りの作りにしか見えない。ワンシチュエーションであることは言い訳にならない。この映画よりも29年前に製作された「裁かるゝジャンヌ」はさまざまなアングルのクローズアップや細かいカット割りを駆使し、もっと緻密な心理描写を実現している。なおかつ全ての画が美しい。このころから映像的に何も進歩してないと思う。会話劇が中心で映像はおまけ。語るのは役者だけで映像は何も語らない。このような映画が名作中の名作のような扱いをされてることが虚しい。 ただ…面白かったです! 【エウロパ】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-08-04 19:48:42) (良:2票) |
《改行表示》492.《ネタバレ》 皆さん高評価なんですが、あえて低評価です。 はっきり言ってスキだらけの映画です。「一部のスキもない」というキャッチフレーズが信じられません。 ■納得できたのはナイフのみかな。 大体、難癖をつけているに等しい理由で無罪を主張している。例えば、めがねの跡がついた証人は、メガネをかけているとしても遠視かもしれないし、本を読むとかなんかの事情でたまたまかけていたかもしれない。そういった厳密な論議をすっ飛ばしている。 フォンダの主張する厳密性を貫くならば、世界はすべて信じられない、ぐらいの結論になってしまう。証人は、証言が誤りであるという疑いを持たせられる証拠がない限り、基本的に信用されるものでしょう。 そもそも、そのメガネの跡のある女性の証言を否定したら、その前の証言が正しいことになるでしょう。だって、その前の証言は、メガネの跡のある人の証言と食い違うことを根拠に否定されたんだから。 それと、映画のタイトルが思い出せないというのが、つい3時間ほど前に見た映画と、何日も前の映画と、比較にならない。 老人が部屋から玄関までこの時間ではたどり着けないというのも、ずいぶんとフォンダがノロノロとやっているようにしか見えない。実際にその老人にやってもらえばいいじゃん(ってか弁護人は裁判のときにやらせなかったのかね) ■これを見て、「隙がなくてすばらしい、緊迫した」と思う人がたくさんいるということは、日本で陪審員制度が始まっても、自分の頭で論理的にきちんと考えることができず、きっとフォンダみたいに頭が切れて口がうまい奴がうまく周りを誘導して、自分の思い通りの結論へ持っていくのでしょう。まったく怖い怖い。 3点分は、集団に対して、あくまで自己を貫くという姿勢に対して。 【θ】さん [DVD(字幕)] 3点(2006-12-18 17:43:32) (良:2票) |
491.20代に観て、もう30年経つのに、いまだに私のベストワン映画です。評論家の選出するベストテンより、ここでの評価の方が高いということと、それによって、こんな古い映画に若いファンが増えているということが、とても嬉しいです。脚本、演出、配役、撮影どれを取っても一級品で、芸術性と娯楽性が見事に調和した、とても完成度の高い作品だと思います。またこんないい映画に巡り会いたくて、映画ファンがやめられません。 【とらおとめ】さん 10点(2004-01-22 22:46:32) (良:2票) |
490.《ネタバレ》 この中でヘンリー・フォンダは陪審員として当たり前のことを当たり前のようにやっただけだろう。 人ひとりの生死のかかった評決で「野球があるから早く済ましちまいましょう。」は無いと思う。 その点では、ルメットがあらかじめ深く掘っておいた穴をヘンリーがせっせとうめて元に戻すという、計算高くも簡潔なプロットになっている。 しかし内容は濃く、密室という限られた空間で使えるものは全て使って繰り広げられる熱き人間ドラマには相当見応えがあった。 観終わって12人全ての登場人物の顔と性格が思いうかぶ作品はそう無いだろう。それぞれのリアルな人生を背負った男たちを役者が見事に演じ、作品の質をさらに上げている。 最後の大木のひとつが音を立てて崩れ去ったとき、大きな達成感とともに、冒頭に一度だけ映った被告の少年の顔がよぎり、万感の思いがこみ上げて来た。 緊張と弛緩のリズムも心地よく、細部まで実に良く作り込まれた「究極、至極」の一品だと、深く唸らざるを得ない。 誰も居なくなった陪審員室の散らかったテーブルが余韻を残し、雨上がりの道をさらりと去っていく男たちの姿が清々しく見えた。 たまにこういった「名作」「傑作」に出会えるのが、映画ファンとしての醍醐味を味わえる瞬間でもある。 【Beretta】さん [DVD(字幕)] 10点(2003-12-20 16:03:26) (良:2票) |
489.密室での短い間の出来事。それなのにこれだけ起伏に富んでいて面白く、スタイリッシュですらあるのは、この映画が決して「密室」を描いているわけではないからだと思う。12人は、まさに世の中にいがちな男性の典型を引っ張って来たような顔ぶれ。人が人を殺すという、この世で最も深い罪。そして、人が人を罰することが可能なのかという、永遠のテーマ。密室でいながら、実はこれ、広い広い世界について描いているのではなかろうか。この脚本を書いた人の鋭い観察眼と、それを生かしたキャストとカメラワークに、ただただ感嘆するばかりです。名画! 【ともとも】さん 9点(2003-12-14 17:30:59) (良:2票) |
488.あの限られた空間で、登場人物の会話のみでこれほど引き込まれる作品にはそうそうお目にかかれるものではない。議論もシンプルで、且つはっきりしていて余計な記憶力を使うことなく映画を観ることが出来た。匿名なはずの登場人物が、名前が無いことで逆にストーリの中で個性を感じることが出来たように感じた。おわり 【ガヴァ茶】さん 10点(2003-03-06 04:31:31) (良:2票) |
487.12人の陪審人が個性的で、部屋の温度と比例し討論が熱くなる過程を見事に描かれている。リアルタイム進行なため、緊張感がこちらにも伝わってくる演出も素晴らしい。最終的に無罪となるが、果たしてそれでいいのだろうか。机上理論で判決を決める危うさを感じる、ヘンリー・フォンダが話術が巧みなペテン師なら・・・あの異質空間の集団心理の変化を見事に表現されているがある種の恐怖感を感じてしまう。人間が人間を裁く難しさを感じさせる映画。 【ゆたKING】さん 10点(2003-02-08 11:25:13) (良:2票) |
《改行表示》486.《ネタバレ》 “12 Angry Men”邦題まま。ホントにもう、よく出来ています。低予算で場面展開も少ないのに、ここまで引き込ませるのは、やっぱり脚本の上手さかな。アメリカの裁判映画でも、陪審の合議が注目される作品はあまり思い当たらず、“弁護人と検察官が熱弁を交わした結果≒裁判の結果。”陪審員の仕事は裁判の総まとめであり確認作業のように思える。裁判を終わりまで観て、少年は有罪だと思う11人。合理的な疑いがあるという陪審員8番が取り出したナイフで、あれほど自信を持っていた有罪の確信がガタガタと崩れていく。 私がもし参加していたなら、おそらく、一番声の大きい人(有罪に固執する3番かな)と結論がほぼ一緒なら、わざわざ声は上げないかもしれません。本作でも8番が無罪を主張したことがキッカケで、それぞれの陪審員が思っていたこと(有罪と決めつけるには疑問に思う点)を口に出し、議論が練られていきました。多数の意見に流されない、8番の勇気は見習いたいですね。 またあの空間では社会的地位は関係なく、先入観と差別意識から声高に自己主張する10番が、全員から総スカンを食らうところ。陪審員それぞれが自分の意志で起こしたアクションとして、とても印象深かったです。 ほぼ全編密室の作品ですが、時間経過の表現が上手いです。評決のあと7番がナイターを観に行くことが、無意識にこの審議のタイムリミット(=終わったらみんな開放される)を意識させます。議論が長引き、夕食の出前を取るかなんて話題も、予想に反して長引いた審議の白熱具合が伝わります。天候の変化も意図的なものでしょう。蒸し暑い午後は評決をまとめる鬱陶しさを感じさせ、議論に熱が入るとともに激しい夕立。そして最後、雨は上がる。議論がどれだけ白熱しようとも、エンディングにもあった通り、ここを出れば陪審員の12人は、ただの他人同士なんですよね。 【K&K】さん [DVD(字幕)] 9点(2024-06-10 22:59:34) (良:1票) |
《改行表示》485.《ネタバレ》 有名な作品でタイトルは知っていたが、初めて鑑賞した。噂に違わぬ名作であった。まず12人の役者と一部屋で、これほどの作品が作れるというのが凄い。脚本の力の真髄といったところだろう。 少年の生死を分ける陪審員たちの討議。と言ってもこの陪審員達、それほど熱心ではなく、11人はとっとと検察の言うとおりに有罪にして帰りたがっている有様。ところが1名だけが証拠や証言に疑問を持つところからドラマが始まる。そしてひとつひとつの証拠や証言を吟味していく中で、映像で全く表現されていないにも関わらず、視聴者には事件のあらましや裁判の様子が分かるようになっているのが上手い。 ひとつひとつの疑惑の解明は、メガネの跡など後出しが多いので、謎解きのカタルシスはあまりないが、それは重要ではない。疑問を持った1名の陪審員に他の陪審員が、そして視聴者も徐々に引き込まれていく、その心理過程が面白い。 いろいろな性格や「やる気度合」の陪審員達だが、全員が最初から最後まで守ったルールが一つだけある。それは全員一致で結論を出すこと。それは法律で決まっていることではあるが、劇中で語られているところによれば、不一致という結果を出すこともできたようだ。だが結果としてそれを良しとはしなかった。なんだかんだ言っても民主主義と陪審員制度を尊重していたのだろうと思う。もっとも不一致にしては映画が成立しないわけだが、民主主義と陪審員制度の素晴らしさと危うさが、見事に表現されていたと思う。 それぞれの陪審員の性格が極端すぎるきらいがあって、やや興ざめした部分もあるので、1点減点してこの点数で。 【EOS】さん [DVD(吹替)] 9点(2023-12-10 01:33:26) (良:1票) |