2.カフカの小説にはサイレント映画の影響がある、などという論考もあって“汽車の到着”で始まりサイレント映画的に展開していく冒頭シーンを見て、これはいいかもしれんぞ、などと期待したが、どうも変身後はいわゆる文芸映画の枠に収まってしまった。舞台版の映画化と後で知ったが、さもありなん。繰り返される窓枠や額縁のイメージなんか、もっと映画的に膨らませられそうなのにもったいない。二度目の女中の演技はなかなか良かったが、肝心の家族の演技が舞台的。もっとも、ソ連後のロシアでカフカが映画化されるってこと自体には興味が湧く。