294.敢えて断言。「12人の優しい日本人」は、「12人の怒れる男」よりも断然面白い!。。。ふぅ、言ってしまった。はっきり言って推理劇タッチの「怒れる男」は僕のようなアンチミステリー派にとって、あまりにも真実を一元化しすぎているし、社会派を標榜する割りには陪審員制度の問題点を真の意味で論うことなく、居丈高な民主主義の価値観や義務感によって自ら正義を負う者として規定し、皆が一つの真実を追うことに固執すること、そのことを美化しすぎているように思える。本当の真実とはこうなんだ! こうあるべきなんだ!ってね。また、登場人物たちにはそれぞれのナラティブがあり、それは当然一つに集約すべきものではないのだ。すべての思惑が一つの真実を指し示すなんてあまりにも予定調和すぎる。所詮、おめぇたちは一般市民じゃねぇのかよ。。。などと陪審員制度自体に馴染みがない僕なんかは「怒れる男」を観た時に素直にそう思ったものです。それに比べ、この「優しい日本人」は実に「いい」加減で、最期まで正義に固執しない姿勢がとても晴れやかだし、陪審員制度が日本人に合わないことを明確に主張しているように思える。なおかつ人間描写が多分にデフォルメされてはいるけどとにかく面白い。「怒れる男」のパロディ映画としても秀逸だと思うが、これは本編に対する一種のアンチテーゼでもある。所詮、人に人は裁けないと思うよ。僕は怒れる男であるより、優しい日本人でありたいと思うけどなぁ。「真実の行方」って映画があったけど、あの映画のラストシーンを「怒れる男」に対比してみると面白いかも。 【onomichi】さん 9点(2003-09-06 17:05:08) (良:5票) |
293.『12人の怒れる男』って、これ日本だったら、ってついつい考えつつ見てしまう。三谷さんもそうだったんだろうな、と凄く腑に落ちた。その感想文をドラマにしたような本作は、単なるパロディではなく、日本人論として良く出来ている。①まず情から入ってくること。被告に同情するか否かが、ポイントになる。②個人より団体戦になる。チームが出来てしまい、無罪派は有罪派に負けるなっ、で気勢が上がる。③傷害致死で妥協しようと、落としどころを探る。ここらへん、いちいち笑ったが、日本社会のいろんな場面で目にしていることばかりで、そうそう笑っててもいられない。④休憩時間で雑談っぽくなると、みなけっこう喋りだすのもリアル。一番分身のように感じたのは上田耕一で、議論とか会議とかは向いてないんです、と逃げ腰。議論がほとんど喧嘩として神経を傷めつけてくる。でも何か役に立たなくちゃと思い、有罪・無罪と書かれた専用の投票用紙をせっせと作ってる。「縁の下の役割りなら一生懸命手伝います、そっちやりますから議論は勘弁して」というスタンス。これ分っかるなあ。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-01-17 09:55:48) (良:4票) |
292.《ネタバレ》 「神々は細部に宿る」というのが三谷幸喜氏の好きな言葉です。本作は、まさに12人の陪審員すべてのキャラに息吹が宿る素晴らしい作品となっています。本家『十二人の怒れる男』にオマージュを捧げながら、日本人の国民気質、美徳といったものをコメディの俎上に乗せた脚本を中原俊が見事に料理。端から話し合いに参加しない陪審員11号(豊川悦司)、鼻血を出し椅子で横になる陪審員10号(林美智子)、ふてくされて背を向けたままの陪審員7号(梶原善)、討論をよそにパフェを食べる陪審員3号(上田耕一)を画面の片隅にとらえるなど、12人を描くカメラの人物構図が巧みで、それぞれのキャラがとても愛しく感じられます。見た目で被告を判断することの是非が、頼りなさげなおとっつぁんお母さん、客観的正義感を主張する者などを見た目で判断する我々に迫ってくるという構成もよくできています。陪審員が三々五々引き上げていくラストの長回し、その時、相島一之にハンカチを渡す林美智子、村松克己から本当は歯科医だと告げられた時の中村まり子の表情、などなど三々五々がとても意味ある三々五々でした。ということで3×5=15点をあげたいくらい、私には大好きな作品なのです。 【彦馬】さん 10点(2004-06-02 13:27:44) (良:3票) |
291.《ネタバレ》 この映画の最も好きなところは、最後の最後の廊下のシーンです。「自分は人を職業で判断したりしない」と思っていたけれど、この映画のエンドロールで、意外とそうとは言い切れない自分に気づかされました。劇中で段々と登場人物たちの職業や私生活の状態などが見えてくるのですが、長い審議が終わって部屋を出て行く登場人物たちを映すエンディングで「実は○○やってます」と本当の職業を明かす人物が数名。エンドロールにさえ、まだサプライズをサービスしてくれるのは、なかなかの作り込みだなーと感じました。「本当は有罪なんだけど、死刑にするのは気が重いから無罪」といった感覚からスタートする『12人の優しい日本人』ですが、本当にこの人たちの優しさというか暖かさを感じるのも、廊下を歩き去っていくエンディングにこそあると思います。お笑いとおふざけがてんこ盛りのパロディなんですが、エンディングの心地よさはオリジナルよりもこっちが好きです。 【だみお】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-10-31 05:18:23) (良:2票) |
290.《ネタバレ》 結局、被告の女性は本当にやっているのか、やっていないのかは分かりませんが、審議の中で、弁の立つ物の意見に流されて、そっちに行ったかと思えば更に弁の立つ意見を述べると、そちらに流れて判決に至るという部分はいかにも日本人ぽくて、コメディーながらもひそかに怖さを感じさせる映画でした。物語は傑作です。さすが三谷幸喜! 【成迩】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2009-12-11 01:56:25) (良:2票) |
289.元ネタを知らなくても何の問題もありません。本作単独で“日本人の性質”を描いたコメディとして完成しています。めちゃくちゃ面白い。ゆえに危機感を覚えます。例えば長州小力。彼の知名度は本家を上回っています。単独で芸人「長州小力」として成立しています。本家を知らずに笑っている人も多い。「長州力」を知らない人にとっては、小力が”オリジナル”です。望む望まざるに関わらず、初めて触れた方が、その人にとっての本物になってしまうという現実。しかも小力は本家より面白い。(注:長州力も別の意味で“面白い”ですけど)。でも彼が在るのは「長州力」がいるからこそ。“パロディとして素晴らしい”“本家を超えている”という賞賛は、まずオリジナルへのリスペクトありきであると考えます。ほとんど小力レビューになってしまいましたが、自分の言いたいことは、ぜひとも“先に”『怒れる男』を観て欲しいということです。これは本作に対する最大級の賛辞でもあります。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-10-06 18:02:27) (笑:2票) |
288.原作でヘンリー・フォンダは、Let's talk moreほにゃらら、と冷静に理性的に語ります。そして、その一言が、原作のいわばライトモチーフになっていたように思います。本作で、相島さんは、女性的で、やや甲高い声で、「はなしましょ、ねえ、もっとはなしましょう、ほにゃらら」と切り出します。この場面で、どっと笑いが上がるなら、本作は成功なのだと思います。で、どうなんでしょう?????、、、、、芝居小屋なら十分にその可能性はあると思いますが、この映画でそれが可能なのだろうか????、、、、、、鼻血の場面も、芝居小屋でなら、抱腹絶倒ですよね。、、、、、、、笑いながら、ふと我に返ってみて、話すことを通じて合意を形成することの意味、真実とは藪の中にあるものではないかなど教えがすぅっと理解される。、、、、、、そうなったら本当に大成功です。、、、、で、出だしの映像のタッチが、「桜の園」じゃないですか。この映像だと、素直に笑いに入っていけない感じなんですよねえ。「桜の園」が好きだっただけに、、、。ということでこんな点にしてしまいました。 【王の七つの森】さん 5点(2004-06-13 11:05:02) (笑:2票) |
287.被告の姿を描写しないことによって、被告への感情移入をしにくくし、荒唐無稽意味深長な話し合いの「コメディー性」を際立たせて「本家」との差別化を図ったのは見事だが、いかんせん役者達の無計画なオーバーアクトは「笑いのツボ」であるはずの陪審員達の「シュールなリアリティー」を駆逐し、その芝居の甘さを「アクの強さ」だけで押されても、正直どこで笑っていいのか分からなかった。 リアリティーを失ってしまった陪審員達の話し合いは、「劇団員の楽屋のリハーサル」程度にしか見えず、評決の行方などもドタバタの中で、もうどうでも良くなった。 「本家」が偉大なる傑作なだけに、パロディーにもそれなりの完成度が求められる。 そしてその間には、まだ太平洋ほどの溝があいていたように思う。 随所に「本家」をリスペクトしたシーンも含まれてはいるが、焼け石に水だ。 日本人の滑稽さをペーソスのある笑いで描こうとしたのは分かるが、かなり消化不良。 今さら言っても遅いが、このテーマならむしろ伊丹十三監督あたりの得意分野だったのではないか。 もっと頑張れよ日本映画。 キビシ過ぎるか。 【Beretta】さん [DVD(邦画)] 4点(2003-12-27 17:27:56) (良:2票) |
286.《ネタバレ》 オリジナルをなぞるのではなく日本人独特の価値観を盛り込みコメディ映画に昇華した脚本に拍手!大いに笑わせていただきました。 【キリン】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-12-31 04:09:32) (良:1票) |
285.《ネタバレ》 めちゃくちゃ低コストな映画ですね。でもあんな教室みたいな部屋しか出てこないのに、観てたらゾクッとしました。すごいですね。サスペンスとしても面白いし、裁判員制度の曖昧さを認識させるための映画としても評価されてしかるべき映画だと思います。そして、登場人物がいちいち本気でうざかったです。もー黙れよ、と何度思った事か。まるでNHKの「真剣10代しゃべり場」を見てるような気分でした。まぁ、そのうざさが「進まない議論」感を作りだしてたんだと思うんですけどね。 【メリーさん】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-10-09 00:42:58) (良:1票) |
|
《改行表示》284.あまり三谷幸喜の笑いは好きではなかったんやけどこれはなかなか。 職場でこんなレベルの議論することはないやろうけど、町内会や学生同士のディベートではよくある感じではないやろうか? 12人は大抵デフォルメしすぎてそのまんまこの世にはおらんやろって人ばかりやけど私にとって善人のおばちゃんだけ物凄くリアルだった。 もしかしたらこれからの人生おばちゃん以外の人らにも出会う機会があるのかもしれない。 12人の怒れる~のパロディで作ったつもりなんやろうけど、製作された1991年に18年後本当に陪審員制度ができるとは誰が予想しただろう。 【CBパークビュー】さん [地上波(邦画)] 7点(2009-08-02 23:25:59) (良:1票) |
283.《ネタバレ》 映画としては、元ネタがあるとはいえ、とっても出来がよい。面白かった。「フィーリングかなあ」の時間差2発には笑い転げた。ありがとう三谷幸喜。でも、良い子はこれが日本のオトナの現実の会議をえぐった風刺だ、なんて思ってはダメですよ。風刺じゃないんです、これは、まぎれもなく〈理想〉なんです。この陪審員協議みたいに意見のある人ばっかり集まった会議なんて……、うっそぉ! 私の半世紀を超える日本人生を振り返るとですね、この陪審員たちの協議は、まったく有り得ないほど理想的に充実した会議なのです。だって、全員とりあえず何か中身のある――有罪か無罪かどっちかの――意見を持ってて、それを表明するんだもんね。んなことあるかって。みんなくっきりキャラ立ってて魅力的じゃん。会議でキャラ出す勇気あるヤツなんて例外だよーん。それから、相手の意見に正面から反論してるでしょ。つまり、議論が立派にかみ合ってるってわけだ。それで、最後はみんなが納得する結論が出る、と。ありえない!ありえない!! あ り え な い!!! ま、取り乱してしまったが。ペーソス皆無で成功したセリフ喜劇。珍しいと思う。 【哲学者】さん 8点(2004-08-09 23:46:02) (笑:1票) |
282.《ネタバレ》 すごい!!後半部分は鳥肌が立っちゃいました!キャラクター一人一人にしっかり役割を持たせたりオリジナルをうまく進化させていました。さらに相島さんがヘンリーフォンダで歯医者のおじさんと一緒にみんなを説得していくのかと思えば最後には主人公(?)が入れ替わったりしていたり、11人が無罪だったのを有罪にひっくり返して、そしてさらにまた無罪にひっくり返すとかオリジナルを見た人でもまた楽しめるようにどんでん返しがあってすばらしいです。逆にこちらを先に見た方はオリジナルを見ると物足りなく感じるのではないでしょうか?前半部分で特に見られるあからさまに幼稚なやりとりは日本人らしさというよりも、民間人があのような場に参加することで全体の質が下がるという三谷氏の陪審員制度に対する疑問みたいなものを端的に表した点なのではないのかと思いました。 【666】さん 10点(2004-07-11 13:37:44) (良:1票) |
281.オリジナルの優れた脚本ありき、ではあるが、単に配役を日本人にしただけのパロディではなく、より日本人が感情移入しやすいようなドラマに再構築されている。何より、謎解き部分のクオリティは原作以上かも。仮説が組み立てられては崩されるという、本格ミステリーとしても通用するくらいのドンデン返しが用意されている点が優れている。各人の個性も際立っていて、それぞれが「妬み」「猜疑心」「劣等感」といった、主たる人間性の負の感情を代弁している。原作共々、評決の行方や事件の真相は二の次で、この場に集う人間ドラマを描くことこそがメインなのである。しかし、日本に陪審員制度が出来たら、本当にこんな感じになりそうで怖いなあ。 【FSS】さん 8点(2004-05-02 11:51:08) (良:1票) |
280.《ネタバレ》 12人の怒れる男=名作。そして、12人の優しい日本人=贋作。贋作は時として名作を超えて輝くときがある。しかし名作がなければ贋作は輝けない。最初全員無罪だったのをすぐに一人有罪にした落とし前が「ごめんなさい」というせりふ。また、無記名投票の結果が一枚多いのを高い音域でつっこむ豊川。名作のこれらのシーンを思い描きつつこれらのオマージュを観てこそ楽しい。われわれがあらかじめ抱いている名作の世界観にダヨーンのおじさんの顔とか豊川の熱のこもった「おばちゃんは、おばちゃんは、」の叫び、妙にハモって心地よいです。もし名作がこの世に生まれていなくて三谷が世界で始めてこれを書いたとしたら、やはり名作と呼ばれていただろうか???名作は10点に上げました。贋作を9点にするために。 |
279.本作を見る前に「本家」を観ている事は大前提。いや笑った笑った。「本家」が典型的な男12人を描いているのに対して、こちらは典型的な日本人12人。「わたしもヤクルト」でまず大爆笑し、入って行ける。あれだけの傑作になると、島国ニッポンが何したところで本家がゆらぐ事はあり得ないんだから、ここはトコトンおバカにして大正解。それでいてちょっと毒のスパイスも効いている。わたしも陪審員やってみたいかも。 【ともとも】さん 8点(2004-01-01 23:56:31) (良:1票) |
278.《ネタバレ》 これはかなり面白いです。まづは、「十二人の怒れる男」と同じように投票するが、全員一致で無罪!ここは先に「十二人の怒れる男」を見ていないと笑えないところ。その後唯一人が有罪へ。この時点で、この男がヘンリー・フォンダだと誰もが思うはず。しかしオリジナルと有罪無罪を入れ替えただけの駄作を匂わせておいて、後半実はヘンリー・フォンダはトヨエツだったという展開へ。彼の弁論には非常に説得力があり安心感がある。これは弁護士という肩書きに、見ている我々が安心感を持って見ているからである。肩書き重視の日本人気質を十二人だけでなく観客までも巻き込んで皮肉ってくれる。が、嫌な気はしない。「実は俳優」御見事! 【R&A】さん 8点(2003-12-09 11:53:51) (良:1票) |
277.「12人の怒れる男」が大好きなので見た。俺は「12人~」を観て民主主義の理想形に感動していたため、最初この映画のふざけたパロディぶりに少し腹立っていた。でも、これはこれで優れた作品だし笑い以外にも主張があると見終わった後は思いなおした。「怒れる」で対極をなす人物として描かれていた2人が、「優しい」は同一人物の人格の中に描かれていたのが出色だと思う。まともな人とイカレた人との相対化を表しているのだろう。人間群像を描いた部分についてはオリジナルに迫るものがあった。あと本筋とは関係ないけど、刑事事件では「被告」ではなく「被告人」ではなかったっけ?それが気になった。わざわざ変えているのは何か意味があるのかなぁと思いながら観てたけど最後まで分からなかった。まあ舞台は架空の設定だから関係ないのかもしれないけど。 【satou】さん 7点(2003-06-07 05:29:40) (良:1票) |
276.すごく良くできた作品だと思います。「12人の怒れる男」とはまた別の魅力のある作品でした。ユニークな個性をもつ12人がコロコロ意見を変えるあたりは、日本版の方が感情移入しやすかったです。私も優柔不断なので、人の意見に激しく左右される登場人物たちと同じだなと。あと病的なほどに有罪を主張する相島一之さんの演技は素晴らしかったと思います。「話し合いましょう」が私の口癖になりそうです(笑) 【はがっち】さん 9点(2003-03-26 00:17:30) (良:1票) |
275.ぼちぼちでしょうか。なんかみんな演技がちょっと大げさで、笑いもベタでどうかなってとこはありましたけど、小さな部屋に閉じこめられて有罪と無罪の間を行き来するみんなの心の変化は上手く描けてたとは思います。豊川悦司好きなんですけど、相変わらずセリフ回しが下手で良かったです。 【イギリスオレンジ】さん 6点(2001-12-13 00:47:02) (笑:1票) |