《改行表示》47.《ネタバレ》 面白かった。良作。 はっきりと分かるのは、アメリカ人にとって戦争とは朝鮮戦争以降のことだろう。朝鮮戦争やベトナム戦争にしても、クラシックな戦争で今現在の戦争というイメージではないと思う。 そういう意味では、やはり第二次世界大戦というものはさらに古典戦争の世界で、歴史の教科書に出てくるテスト対策のような話なのかもしれない。日本人が第二次大戦中の話をみて涙し、これを風化させまいという話を一生懸命作り続けているのとは違い、アメリカでは常に変わり続ける戦争の意味を賢明に現実とすりあわせようとしているかのようだ。 アメリカ人にとって、戦争はずっと続いている(お祭り的な意味ではない)イベントの一つなのだろう。そこでは常に日本人が幻想を抱く第二次大戦中の悲劇と同種かそれ以上の苦しみが現存し、それを放置し国益や自国民の生命を損なうことすら無かったことにする、他の西欧圏諸国とは違う現実主義が横たわる。 アメリカの身勝手、のように豊かな地域のアジア圏ではねじ曲げられて良いように紹介される戦争は、常にアメリカだけではなく中東との共存を描く西欧圏全体の秩序を乱す組織的な悪の存在が根源となっている。中東だろうがアジアだろうが、ビジネスの場であり生活の場でもある、単なる地球上という場所をテロリスト的な集団(いろいろな規模を包括して)が思想と暴力で蹂躙しようとする。その集団の主張をなぜかテレビや雑誌が拾って真剣な顔でアメリカ批判をする状況は少し異様ではないだろうか。 そういった批判は少なからずアメリカ国内にもあるようだが、そんな中戦地に赴いた主人公達の任務は、戦闘と呼べない相手側の脆弱性に耐えることだった。古典戦争の世界にあった闘争はそこにはなく、はっきりと異質になった現代戦争の有様は、気持ちの悪い、国家ではない思想的な何かを相手にした、それに対する準備を強いられる毎日だけだった。 武力と恣意の危険な思想集団は今もその脆弱性や攻撃誘発性を巧みに操り、同情を引き相手方の主張をぶれさせ同化しようと奔走している。それはこの映画に具体的には描かれていないが、すでに共通認識としての下敷きとしては明らかに存在する。 【黒猫クック】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-11-23 15:20:46) (良:1票) |
46.前作ロード・トゥ・パーディションがいかにも優等生的でつまらない映画になってしまったので、その反省とばかりにサム・メンデスは本来の持ち味である斜めの視点で本質をえぐり取るという皮肉精神を取り戻しています。ディア・ハンター以降、戦争映画と言えば主人公が「俺は殺人行為をやったんだ」と悩み、戦争で抱えた苦悩を背負う作品ばかりになってしまいましたが、この映画は四半世紀ぶりにその傾向に風穴をあけるような面白い姿勢で作られています。主人公が厳しい体験の中で成長するわけでもなく、悲惨な現実の中で何かの教訓を学ぶわけでもなく、「戦争行ったけど特に何もなかった」ということがテーマの変な戦争映画です。上官に向かって「俺の手で敵を殺させてくれ」と兵士が泣いて頼むという常識はずれのシーンまであります。監督も自分の試みに自覚的だったのか、ドラマ路線の戦争映画として最高の評価を受けるディア・ハンターのビデオにポルノまがいの不倫映像がダビングされてるくだりがあり、一方で「戦争映画としては非現実的だ」との批判を受ける地獄の黙示録を見て兵士が最高潮に盛り上がったりと、「『これが本当の戦争だ』と言ってた今までの戦争映画だって所詮脚色されたもんでしょ?」とでも言わんばかりの挑発ぶり。確かにこの映画の異色ぶりは相当なもので、これまでの戦争映画がどれも判を押したように「悲惨の連続」だったのに対し、この映画が描くのは「退屈の連続」。延々と退屈が続きそこに生死を分ける一瞬が突然やってくるというのが戦場の実態のようですので、「生死」並に大きな要素でありながらこれまで映画が取り上げてこなかった「退屈」という側面をはじめてテーマにしたところにも、この映画の価値はあると言えます。ただしこの監督、挑戦的な内容を扱いつつも映像や語り口に良くも悪くも「えげつなさ」がないという特徴を元々持っており、アメリカン・ビューティーにおいては過激な内容をうまくまとめてさらっと見せる手腕が良い方向で現れたものの、戦争映画においては刺激不足の原因となり、後半に猛烈な長さを感じさせられました。また最初と最後のモノローグは完全に蛇足で、何か意味ありげなあのモノローグは「何もない」がテーマのこの映画の本質をかえって見えづらくしています。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2006-11-03 22:03:58) (良:1票) |
《改行表示》45.戦場現地の奥地で王国を築いたり、悲痛な戦場の惨劇の中で“生死”に対する感覚が麻痺しまっていくというような、仰々しいことだけが“戦争の狂気”ではないということを、この映画は雄弁に語る。 言うならば、「戦争」そのものが「狂気」であり、そこにそれ以外のものは無いのではないか?だからこそ、誰も死ななくても、誰も殺さなくても、“狂気”は生まれ、そこにいる者たちを急速に蝕んでいく。 ライトなテンポで敢えて感情的にならずに、主人公たちの心情の起伏を描き出すあたりに、サム・メンデスの流石の演出力が冴える。 テーマ性としては、映画によって散々描かれてきているもののようにも見えるが、「戦争」という「狂気」の“普遍性”とでも言うべき“何気なさ”を描いたこの映画は、非常に独特だと思う。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-02-16 23:53:08) (良:1票) |
《改行表示》44.《ネタバレ》 「オマエはケニーGか」一人で爆笑していた。 冒頭とラストのオムツがどうのこうのとか、まだ砂漠にいるとかどうのこうのとかはよく分からなかったけど、それ以外はなかなか良かった。手にした銃の感触は消えないとかそんなことも言っていたが、果たしてこの映画はそんな映画だっただろうか、ちょっと疑問。 イラクとの戦闘シーン(切れた電池を取りに銃弾の中を走るシーンなど)はあったけど、アメリカ兵が死亡または負傷する目立ったシーンが、訓練と誤射というのがこの映画のすべてを物語っていると思う。それなりにサムメンデスのアイロニカルで斜に構えた感じと空虚さが交じり合った空気は悪くはないと思う。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-02-13 01:35:44) (良:1票) |
43.《ネタバレ》 特別な英雄でも臆病者でもない極々普通の一兵士の視点で、湾岸戦争の実像をシニカルに描いた戦争映画。主人公は海兵隊の斥候狙撃兵ということで、有事の際には戦場に一番乗りするのが任務。しかし当時の任務の実態は、サウジアラビアの油田警護という名目の、半年にも及ぶ砂漠での過酷な駐屯。その後、ようやく攻撃命令が発せられて前線に赴いても、多国籍軍の圧倒的兵力の前に敵はあっさり退却するか、既に空爆で壊滅している。結局、戦場に一番乗りした筈の主人公が一発も銃を撃たない内に戦争は終わる。戦場の狂気だけを内に秘めたまま中途半端に放り出されてしまった主人公の心は、砂漠へ置き去りにされたまま。彼は、哀れなベトナム帰還兵に自分の姿を見るのです、7点献上。 【sayzin】さん [試写会(字幕)] 7点(2006-02-11 00:05:18) (良:1票) |
《改行表示》42.《ネタバレ》 かつて、テレビのニュースが伝えた湾岸戦争は、空を飛ぶミサイルを捉えても、そこにいた人々の顔は見えなかった。 この映画「ジャーヘッド」は、あの時、あの場所にいた、アメリカの海兵隊の若者の目線で見た、戦場の現実を描き出す。 原作は、アメリカでベストセラー小説となった「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」。 タイトルは、お湯を入れるジャーの形をした、ヘアスタイルから海兵隊員の事を指すということだ。 海兵隊に志願したアンソニー・スオフォード(ジェイク・ギレンホール)が主人公。 厳しい試練や新人いじめを乗り越えたが、配属先のサイクス三等曹長(ジェイミー・フォックス)の訓練も過酷だった。 プレッシャーに耐えかねた、仲間の死亡事故まで起きてしまう。 そして、ようやくスオフォードらの隊は、サウジアラビアへと派遣されることになる。 しかし、狙撃兵として現地入りしたものの、当面の任務は油田の警備。 若い兵士らの士気は上がっているのに、目に見える敵のいない毎日は、待つ事が仕事なのだ。 兵士同士で、恋人から人生についてまで語り合うが、スオフォードの退屈で孤独な気持ちは強くなるばかり。 気持ちははやるが、やることがなく鬱屈していく若者の姿は、戦場特有のものというより、どこか普遍的だ。 手に汗握る銃撃戦のないスオフォードの戦争は、燃え上がる油田の幻想的な光景で最高潮を迎える。 恐怖と退屈、そして絶望的に変わらない日々。 画面の中では誰もが見たことのなかった戦争の風景を、サム・メンデス監督がくっきりと浮かび上がらせている。 【dreamer】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-01 11:49:13) |
《改行表示》41.《ネタバレ》 戦闘のこと以外は一切思考を停止し、ひたすら任務を果たす。 訓練の段階から、徐々に一つの個体、マシンとして余計なことを考えさせない訓練がなされるのだなと改めて感じた。 まあそうじゃないと、普通の神経ではとても砂漠に百数十日もいられない。 何のための戦争なんて、だから描く必要なんてない。 ただ、マシンとして戦えばいい。 疑問を持ったら神経をやられてしまう。 ジェイク・ギレンホールは、この映画でもやはり抜群。 観てるのは苦しいが、完全に振り切った演技を堪能できた。 |
40.《ネタバレ》 戦争物…と肩ひじ張らないで、見ていられる作品。 【ゆっきー】さん [DVD(字幕)] 6点(2018-04-29 17:03:18) |
《改行表示》39.正直、おもしろくはなかった。てゆーか、少々退屈でもあった。 ただ、海兵隊の日常は追体験できたかな。 【なにわ君】さん [DVD(字幕)] 3点(2015-05-06 09:31:47) |
《改行表示》38.《ネタバレ》 「戦争」と言えば第2次世界大戦の事だと思う日本人と、朝鮮、ベトナム、湾岸…と戦争を経験してきたアメリカ人とではそもそも「戦争」というものの概念が違うんだな、と考えさせられた映画。 日本人の場合、戦争というのは歴史の教科書に出てくるものであり「過去の悲劇を繰り返してはいけない」とばかりにいろんな論議が繰り返させられてるわけですが、多くの国では戦争はそもそも「またすぐにあるかもしれないもの」なんですよね。 そもそも根本的な感覚が違うものを描いた映画だけに、普通の日本人にはおそらく理解不可能な映画なんだと思います。普通の日本人である僕の場合は「映画で言いたい事はわかるけど…」って感じでございました。 【あばれて万歳】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-07-23 08:35:09) |
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37.類似作品を何作か観たことがある..本作もそうだが、映画として、面白味が無く、メッセージ性も有るんだか無いんだか..ぼやけてよく分からない..兵士目線でのリアルな日常と戦争が垣間見れたのは、それはそれで、私的に良かったのだが..もっと単純に、ストレートに物語として描いた方が良かったのでは、と思う..残念... 【コナンが一番】さん [DVD(字幕)] 5点(2013-01-26 17:15:17) |
36.《ネタバレ》 初めのうちは、馬鹿にしているのかと思えるくらい「フルメタルジャケット」の焼き直しでした。パロディでもなければ、リスペクトでもない。ひどい出来の映画かと思いましたが、後半は予想しない展開になりました。でも、ちょっとそこに至るまでが長いですね。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-10-25 22:31:17) |
35.サムメンデスの演出はノレル。この映画は湾岸戦争モノですが、「地獄の黙示録」や「ディアハンター」のような映画が好きな現代っ子が主人公。しかし砂漠が戦場で、ただでさえ単調な砂漠を背景に、そして何も起こらない毎日に、殺人マシーンと化した彼らが段々とストレスがたまってくる様子がよく出てます。監督が凡だったら、映画でも退屈で仕方が無かったと思う。でもこれは湾岸戦争だったからこんな戦場だったのでしょう。いずれイラク戦争やアフガン戦争を題材にした、また違った感じの戦争映画が出てくると思います。その時は「退屈」な映画なんて創られないと思う(誰がテロなのか分からない恐怖があったり、高い山の上の酸素の少ないところが戦場なのだから)その意味でこれはものすごく異色な戦争映画。それにしても火のついた油田のせいで暗くなった砂漠や降ってくる黒い雨が目にしみて暴れる兵士とか(痛そ~)初めて知った湾岸戦争の一面でした。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-12-17 03:18:35) |
《改行表示》34.《ネタバレ》 恐らく『戦争映画』を作る上で99%の監督が描くであろう戦闘シーンを描かなかった異作。 『ここで戦闘があるだろう』と言うシーンでも何も起こらない、次こそ何かあるかと思えばやはり何も起こらない。視聴者からすればストレスにすら感じるが、これって作中の兵士との心境をシンクロさせる見事な演出だと思う。 必死に訓練して、砂漠のど真ん中に放り出され、命の危険を感じる、それでも敵と戦い生き残ることで快感と開放感がそう言ったストレスを紛らわしてくれる。だがもしそれすら無ければ・・・・。 不謹慎な表現かもしれないが、例えばあなたがゲームをしていて、何時間もレベル上げを行い、難しいクエストをこなして装備やアイテムを集め、準備完了で魔王の城に乗り込む。一歩進むごとに様々な演出が気分を盛り上げ、コントローラーを握る手にも力が入る。だが結局敵は現れず、魔王も戦わず降参してしまった。激怒するでしょう? それがリアルの戦場で起こった場合人間がどうなるか、と言う今までにない切り口で『戦場に赴いた兵士たちの精神』を描いた作品。 うーん説明が難しい、とにかく『斬新な戦争映画』を見たければご視聴あれ。 演出も終盤の油田のシーンは非常に神秘的で面白かった。 上記の内容とは別に『スタンドバイミーの大人&戦場バージョン』みたいな響きに興味が湧いた人にもお勧めです。 【ムラン】さん [DVD(吹替)] 9点(2010-10-30 16:48:24) |
33.妻投稿■人間は自分という存在に対し、絶対的な支配権がある。唯一殺しても罪に問われないのが自分自身であるくらいその自己支配権は絶大だ。当然「死ね」と言われて死ぬ必要もないし、自分の命を守るためなら「社会人の品格」なんて踏みにじっても問題はない。それが人間の自然だ。■でも軍隊の訓練はそういう自然を不自然にし、自己支配権を組織に全部渡してしまう作業だ。その時点で実は物凄く無茶なんですよね。そういう無茶をさせられた人間が、戦闘に巻き込まれなくてハッピーハッピーかというとそうでもなく、「自分自身が安全で、殺されたり殺さなくてもいい状況」を許せなくなってしまう。「人間兵器」に自己進化した人間の、なんかすごく悲しいものが描かれていたと思う。■でもそういう人間を作り上げる事で現代社会の繁栄と安全は成り立っているんですよね。結構重い問題ですよね。 【はち-ご=】さん [DVD(吹替)] 8点(2010-09-02 22:40:22) |
32.《ネタバレ》 海兵隊兵士の品のなさがとってもリアル、でもこれが現実なのでしょう。こういう客観視というか突き放した撮り方は、監督が英国人ならではと言うことでしょうか。アメリカの最近やっている戦闘は「非対称戦争」と良く言われますが、この映画でも米軍が損害を受けるのが味方の誤爆だけで、とても判りやすい。しかしこの海兵隊の若造たちは、みんな志願して入隊したわけなので、個人的には感情移入や同情は出来なかったですね。青春群像劇として観ることも可能でしょうが、リアルに描けば兵士たちは女と酒にしか関心がないという風になってしまうし、そこはジレンマですね。しかしイラクやゲリラ相手の戦争では軍艦が撃沈される心配はなさそうだし、米軍に志願するなら海軍の艦艇乗り組みということですな(笑)。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-07 21:53:54) |
《改行表示》31.こういう戦争映画もありなのだとは理解出来るのですが、基本的な内容と使用される台詞、会話の数々は、わざわざこの「世界観」でなければならないのか...終始疑問が沸き上がり、見終わる前から不完全燃焼な気持ちになっていました。 これも現実と言われればそれまでですが、真の湾岸戦争を掘り下げ、戦争に対しての幻滅や狂気を描き、そもそもこの戦争の無意味さを語るなら、他にいくらでもテーマはあったはず...この映画を作ろうと企画した事自体に疑問を感じます。 【sirou92】さん [DVD(字幕)] 0点(2009-12-06 01:19:18) |
30.アメリカからいきなり娯楽の無いところへ行くとああなるのかなんか下品。実際イラクに派遣した人々はあんな感じなのだろうか。今までの戦争映画と違ってそんなに戦闘のシーンも少なく、人が死なないので妙にリアル(な気がする)。 【秀吉】さん [DVD(字幕)] 4点(2008-11-28 01:44:00) |
【eureka】さん [DVD(字幕)] 4点(2008-03-20 21:00:50) |
《改行表示》28.“主人公が一人も人を殺さない戦争映画”と何かに記されていたが・・。 少し前の湾岸戦争が背景。TV等で身近に感じていたが、その裏側の現代戦、人間と兵器の関わり。第二次世界大戦とは全く異質の戦場。等々見事。でも面白い作品ではなく、疲れる、虚しい作品。でも油田の燃え盛る背景は異様で美しい。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-01-28 14:49:24) |