14.世間は夏休み。何を観ようか迷っていたら「転校生」のタイトルが飛び込んできた。
1982年版「転校生」をビデオで観て、すぐさま尾道へ行きたくなり、炎天下の中を原動機付自転車を駆って松山(愛媛)から尾道まで向かったのは、2年前の真夏だった。
リメイクが公開されていたのは知っていたが、まあオリジナルを上回るようなことはないだろうと興味は薄かったが、このタイミングでは観るしかあるまいと思った。
舞台は尾道から信州へと変わり、時代も現在へと移り変わった。
が、映画世界が描こうとする空気感は、オリジナルと通じるものを感じた。
ただ大林監督が織りなす独特の雰囲気が、現代の空気感に対して違和感があったことは正直否めない。
主人公たちの言動は、現代っ子のそれとはあまりにかけ離れている感じがして、細かい部分で“つくられている”という印象が終始拭えない。
25年前の少年少女たちの「等身大」をそのまま現代に転用しても、やはりそれは「等身大」ではない。
主人公たちに与えられる「運命」も、オリジナルのノスタルジイと切なさに溢れた顛末に対して、あまりに悲しい。
その運命は、15歳の彼らにはあまりに酷ではないか。と思わざるを得ず、設定としてもリアリティが無い。
しかし、新しい「転校生」が、82年版「転校生」と同様に成し得た“価値”がある。
それは、名女優の原石の発掘である。
82年の「転校生」が、小林聡美という名女優を発見したように、今作「転校生」でも、蓮佛美沙子という物凄い可能性を秘めた女優を発見したと思う。
現在16歳の彼女が、新しい世代の女優界を引っ張っていくことは、かなり可能性が高いことではないか。と、思う。