36.《ネタバレ》 2020年の春。
自宅待機しながら観るにはピッタリの映画じゃないかと思ったので、久々に再鑑賞。
言わずと知れた名作「裏窓」の系譜の品なのですが、主演がシャイア・ラブーフというだけでも、一気に現代的な魅力が出るから凄いですよね。
良い奴過ぎず、嫌な奴過ぎず。
二枚目過ぎず、不細工過ぎずって感じで、等身大で感情移入しやすい若者を、今回も好演していたと思います。
ただ、内容については……
肝心の「裏窓」要素が微妙というか、なんていうか(これなら「裏窓」をなぞらなくても良かったじゃん)って感じなんですよね。
「ずっと覗き見していた近所の美少女と、紆余曲折の末に結ばれる」という展開も、男に都合良過ぎで説得力を感じないし、女性がコレを観て、ときめくとも思えなかったです。
序盤にあった「父親の死」も意味が無くて、作中で「悲しみを乗り越え、成長する主人公」に繋がる事も無かったし……
「因縁のある警官」は全く活躍せずに退場するし「家から30m離れたら警報が鳴る装置」も犯人との対決で何の意味も持たなかったし……
色んな要素をアレコレ詰め込んだは良いけど、それらを活かしきれないまま「元ネタの『裏窓』と同じように犯人を退治して、めでたしめでたし」で終わらせているので、凄く中途半端なんですよね。
正直、作品の完成度という意味では、かなり低いんじゃないかと。
そんな具合に、短所を挙げだすと止まらなくなるような品なのですが……
好きか嫌いかで言うと、何故か「好きな映画」になるんですよね、これ。
いやホント、自分でも不思議。
一番の長所を挙げようとしても「主人公三人組が、張り込みごっこをする様が楽しそう」とか、そのくらいになっちゃうレベルなのに、何か好きなんです。
理由を考えてみるに「ヒロイン、男友達、母親と、死んで欲しくないと思えるキャラが全員無事に生き残る事」「血生臭い描写が少なくて、安心して観ていられる事」が大きいのかな?
あとは、音楽の使い方が良いとか、カメラワークもベタではあるけど、お約束を押さえてる(冷蔵庫のドアを閉めたら、それまで見えなかった人影がカメラに映り、主人公も驚く)とか、その辺が良かったのかも。
こういう細かい良さが色々あったので、上述の欠点についても、観ている間はそこまで気にならなかったです。
かつての自分もそうでしたが「血生臭いホラー物が苦手な青少年」に、適度な怖さとスリルを与える映画としては、合格ラインに達しているんじゃないかな……と、そんな風に思えましたね。
「自宅監禁は楽そうだけど、ストレスでおかしくなる人も結構多いの」って台詞が劇中にありましたが、少なくともこういう映画を楽しめている内は、おかしくなる心配をしないで済みそうです。