24.《ネタバレ》 文学少女が高校球児に恋をして、少しでも彼に近付く為に応援団に入る。
そんな導入部を経て、以降は「部活物」映画お約束の「挫折→修行→成功」の流れを辿ってくれるという、安心して楽しめる一品でしたね。
団長に任命されるまでの流れが強引だとか、ヒロインが恋した球児が転校までするのは不自然だとか、物語としての欠点と呼べそうな部分は沢山ある。
「GWに合宿やっただけで一人前の応援団になれる」「彼女達が応援したら、卓球部も柔道部も将棋部も、関東大会で優勝出来る」など、ツッコみを入れたくなる部分も沢山ある。
それでも、上述の通り王道の魅力をしっかりなぞる形になっているので、細部に粗があったとしても、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えました。
特に、序盤にて「即席応援団」のダメダメっぷりを見せ付けられた後、彼らが「立派な応援団」に成長した姿を見せてくれる展開とか(ベタだけど、やっぱり良いなぁ……)って、しみじみ感じちゃうんですよね。
ヒロインが一人前の「団長」になった事を「眼鏡を外す」という形で、視覚的に分かり易く表現している辺りも良い。
合宿にて、最初は練習がキツくて食事も喉を通らなかったのに、後半には皆して食欲に満ちていて、次々に皿を空にしちゃう演出なんかも、気持ち良いものがありました。
中でも一番好きなのが、夜明け前の海を、皆で座って眺める場面。
特に気の利いた台詞がある訳ではなく、本当に黙って海を見つめているだけなんだけど、何となく「青春」って感じがして、心に残るものがあるんですよね。
その直前にある「応援団を続ける意味」について皆が言い争う場面も、演技は稚拙かも知れないけど、熱意は確実に伝わってくる。
その不器用さ、未熟さが、泥臭い魅力を生み出しているように思えました。
「野球部は、応援団よりもっと厳しい練習をしている」という一言により、その野球部が快進撃を繰り広げる様を、素直に応援出来た事も大きかったですね。
この一言が有るか無しかによって、かなり印象が変わっていた気がします。
それだけに、最後の逆転サヨナラ3ランの場面は、もっと「野球物」としての魅力も感じられる演出に出来ないものかという不満もあるんですが……映画としては、その後の「応援団と野球部の和解」「エール交換」をクライマックスとした作りである為、仕方の無いところでしょうが。
肝心の応援シーンにて、ヒロインの声が思いっきり裏返っているのは「ちょっと無理し過ぎていて、痛々しい」と感じられたし、最後に学ランからセーラー服に戻って終わりというのも、拍子抜けな結末ではあります。
でも「軽い」「明るい」「爽やか」な青春映画としては、このくらいの、粗も見つかるくらいの出来栄えの方が、かえって愛嬌を感じられて、良いのかも知れませんね。
「良い」「悪い」ではなく「好き」か「嫌い」かで判断して、この映画は好きだと結論付けたくなるような……そんな好ましい映画でありました。