6.《ネタバレ》 国籍の取得を目的としている結婚を数件見たことがある。彼らに共通するのは中途半端な愛情と中途半端な決心で、このままとても上手くいくとは思えないような世界に自分自身が首を突っ込んでいるととは全く気がついていないと言う事である。この映画にも、そんな事をしてただで済むとは思えない人たちが組み立てている異世界がある。
そう言う異世界の中で生きる人たちに共通するのは、愛情や繋がりにすがる心が強いという側面で、この映画を見始めてすぐに国籍だけを取得したいという彼女に違和感を覚えた。
しかしこの違和感は日本人である私に固有の物で、国籍を取得した後様々な脱法行為で行政を食い物にする偽装する側には無いものだ。一時的な情や中途半端な道徳よりも生き方の方が重要で、物語の中でも彼らの心情が語られると妙に納得してしまう。
対価が金やポジションや命と言った、普通に生きていたらそんな危険な犯罪行為への隷従がおかしいと直ちに気がつくはずだが、そうならない彼らには正直感情移入は出来ない。
そんな中でいきなりセックスを始めてしまうあたりが妙に生々しい。子供や国籍といった欲しい物を手にした彼らが突然日本人となれ合い、本当の家族のようになってしまう例も見たが、実態は日本にいながら従来のコネクションから外れるつもりがさらさら無いことも注視すべき点である。
しかしながら、そう言った一見物語にはなりそうも無い事を見事に映画にしてしまうダルデンヌ兄弟の手腕は凄まじい物がある。面白いかどうかは別として、こう言った映画の存在は正しく重要なのだと思う。