126.《ネタバレ》 『シン・シティ』観たとき、ミッキー・ロークがよく分からなかったのは、顔や体型をメイク技術でそうとういじってるからだろうと思ったが、けっこう素のままだったのかもしれない。本作でも、ときに口元にいたずらっ子のような往時の面影が認められてやっと納得いくが、スーパーの惣菜売り場で出会っても、「M・ローク」と名札が付いてなくちゃ気が付かないだろう。かつてのクールでセクシーなスターが、体も顔も崩れた姿をスクリーンにさらす。この映画、劇映画としてより、M・ロークのドキュメンタリーとして観てしまうし、そう観て初めて価値があるんじゃないか。マリサ・トメイと「80年代は最高だった」とうなずき合う場など、シナリオ、当てて書いているとしか思えない。それでもリングに・スクリーンに戻る「男」の姿。しばしば後ろから追い続けるカメラも、その効果を高める。話として臭くなりかけるところで、ドキュメンタリーとしての味が出て締まる。いやあ、映画スターというものは業の深い職業ですなあ。実際の人生だったらば、スーパーの惣菜売り場で働く勇気の方が偉いと思うけど、スクリーンの中の世界では、こうでなくちゃならない。かみそりでこっそり額を切っとくような世界と同列なんだもん。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-04-21 12:07:56) (良:3票) |
125.《ネタバレ》 オープニングでその男はかつてその活躍が華やかに報じられていたメジャー団体のスーパースターだったことが分かる。それから20年が経過した今、スーパーでバイトをしながら何とか生計を立て、時には家賃も払えず、「客の入りが悪かった」とギャラを安くおさえられながらも週末の場末のリングに上がり続けるかつてのスーパースターの落ちぶれた厳しい現実、疲れた背中をこれでもかと見せ付ける。その男を演じるのはやはり年をとったなあと思わざるを得ないミッキー・ローク。そういえば彼の新作をみるのは久々だ。その姿は痛々しく、そしてリアルだ。ある試合後の心臓発作をきっかけに普通のおじさんに戻ろうと奮闘するが上手くいかず、リングに生きる決心をする。自暴自棄のようでもあるが、一度はリングを降りたが自分の生きる場所はやっぱりリングしかない。そんなラストのリング上のファンに語りかけるマイクパフォーマンスとファイトが感動的だった。幕切れはあっけないけれど、これでいいと納得のいい終わり方だった。ミッキー・ロークの見事なプロレスラーぶりには敬意を表したい。鍛え抜かれた体、流血のハードコアマッチ、場外乱闘、コーナーポスト上の姿、全てが絵になっていた。そしてミッキーがマリサ・トメイを見つめる目。確かに老けた。しかしその目と視線を見ていると彼が若かりし頃、共演女優を見つめる目と視線を思い出した。そこに年齢を重ねた男のいい味と貫禄を感じさせてくれた今後の彼のますますの活躍に期待したくなった。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-06-16 19:00:41) (良:3票) |
《改行表示》124.冒頭、カメラは主人公の背中を延々と追い、そのうらぶれた様を映し出す。 そこからは、ただこの男が惨めな生活に追いやられているという状況説明だけでなく、プロレスラーとして確実にあった過去の栄光を雄弁に物語ると共に、彼が今なおリングに上がり、そこで少なからずの尊敬と敬愛を受けているということがしっかりと伝わってくる。 そういう描写の後に、ミッキー・ロークの表情が映し出された瞬間、「ああ、この人はかつてのスターレスラーだ」とリアルな存在感を持って納得させられる。 この冒頭数分間の主人公描写の時点で、この映画の成功は間違いないと確信した。 イントロダクションからは、かつてのスーパースターの復活を描いたサクセスストーリーのような印象も受けるが、今作は決してそのような綺麗な映画ではない。 主人公の風貌そのままに、汚れ、くたびれ、傷だらけの映画だ。 「満身創痍」という言葉が相応し過ぎる映画世界、そしてミッキー・ローク演じる主人公の「大馬鹿野郎」としか言いようがない生き様に対して決して共感は出来ない。 ただしかし、引き込まれ、目が離せなくなる。 プロレスに生き続けた老ファイターが、遂に最後までリングにしか居場所を見出せなかったと言えば聞こえは良い。 しかし、そこに映し出されているのは、愚かで、切ない一人の男の姿であり、この映画が描こうとしたことはまさにそういう人間の根本的な無様さだ。 “現実”の死を厭わず恐らく最後になるであろうリングに立つ男の姿に涙が溢れるわけではなかった。 唯一残された「居場所」、そこに立つまでの男の全ての言動が、哀しく切ない。 この映画に描かれていることも、描かれていないことも、この男の人生そのものに涙が溢れた。 リング上で闘い続けるということが、逆接的に立ち向かうべき己の人生から逃げ続けたこととイコールになる悲哀。 ただし、それが不幸だろうが幸福だろうが、決して他人はその人生を否定も肯定も出来ない。 その価値を計れるのは、紛れもないその人生を生きた本人しかいない。 「生きる」ということの普遍的な厳しさと、だからこそ垣間見える人間の煌めきが心を揺さぶる。これはそういう映画だ。 【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-02-11 01:33:57) (良:2票) |
《改行表示》123.《ネタバレ》 60歳まで現役だったジャイアント馬場を思い出す。60歳といえば還暦だ。クソジジイだ。見ていてスリルがありすぎる。対戦相手が間違って馬場を強く攻撃したら即死もありえる。彼は61歳でくたばったから生涯現役だったと言える。そういう意味ではたいしたものだ。ミッキーもラストで愛する彼女をふりきって、死ぬ覚悟でリングに上がったが、試合が終わって、まだ生きていたら格好悪いだろうな。ラストは必殺技ラム・ジャムの途中でぷっつり終わるが、あれで本当に死ねるのか?と逆に心配してしまった。このダメ俳優は猫パンチで日本人を激怒させたが、彼はああいう性格なので、ハリウッドでも総スカンを食らって干された。レスラーはまさに彼の「はまり役」といえる。かつての時代の寵児が落ち目になるという話はよくあるが、それをレスラーの体から流れる血や、ボロボロの体で表現する手法のことを、メタファーと言う。この手法がアカデミー賞候補に認められた理由だと思う。ドグマっぽい撮影方法も好感が持てる。ちなみに死にそうになったからと言って、数十年ぶりに娘の前に現れる父親ほど恐いものはない。私だったら、そんな父親が瀕死の状態で目の前に現れたら絶対にとどめをさしてやる。「おまえに嫌われたくない」とメソメソ泣く姿も、ただ感傷に浸っているだけで気持ち悪い。私の親だったら許さない。私自身が同じ経験があるので強くそう思った。親の身勝手な感傷などクソ食らえである。しょせんこういう男は家族など持てないのだ。不器用な生き方だねと言ってこのレスラーを愛することができるのはしょせん他人だからである。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 3点(2010-03-07 12:13:17) (良:1票)(笑:1票) |
《改行表示》122.《ネタバレ》 勝利のためでも、栄光のためでも、金のためでも、愛のためでもない。死の危険があろうが「リングで戦う事」こそが彼の生きるための唯一の道であっただけなのだ。現実での孤独な戦いと比べたら、リング上では怖い事なんか何もない。 男にとって、人間にとって一番大切な事は、やはりその時々の状況によって変わって当然。身も心も痛々しさと生々しさが全開で描かれ、ある意味消去法的に道を選んだようにも見える男の話だが、全く嫌な気分にならない。これが生きるって事なんじゃなかろうか。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-01-24 01:43:14) (良:2票) |
《改行表示》121.《ネタバレ》 作り物とはどこか思えず、実際に存在するキャラクター・ストーリーとしか思えないほど、なにもかもがリアルだった。 自分はプロレスをそれほど好きではないが、普通の人よりは多少知っているレベルだ。 最近でも、68歳のアブドーラ・ザ・ブッチャーと65歳のタイガー・ジェット・シンが戦い、両者反則負けという壮絶な試合をしたそうである。 本作を見ると、自分の世界でしか生きられない男は果たして不幸なのかということを考えざるを得ない。家賃を払う金もなく、愛すべき娘に嫌われて、相手にしてくれるのはストリッパーくらい。全身は傷だらけで、心身ともにボロボロ、まさに満身創痍という状態。リングの下では明らかにカッコいいとは思えない。しかし、いったんリングに上がると、あれほどカッコいい男がいるだろうかというほど輝いている。 不器用で無様で愚直な生き方とも思えるが、その無様な姿も貫き通せば、カッコよく見えてくる。 また、自分の道を貫き通せば、後悔することはなく、自分自身が納得できるのではないか。他人と同じような生き方ができなくても、普通の人が見られる世界ではないものを味わえるはずだ。 自分の世界でしか生きられない男は決して不幸ではなくて、やはり多くの人の憧れであり、カッコよくて、ある意味で幸せな男なのである。 全うな生活を送らなくてはいけないということを頭では分かっていても、心は拒絶してしまうものでもある。 それにしても、娘との食事の約束をすっぽかす理由が、ヤクをキメて、女とヤッていたことが要因になっているということがなんとも泣かす。誰かを助けていて約束を守れなかったり、プロレスの大事な試合と天秤に掛けるという特別な事情ではなくて、リアルに約束を忘れるということが重要な気がする。 自分の世界で生きる男は、やはり全うな生き方はできないのである。 全てを捨てており、頭と心にあるのは、その世界のことだけなのかもしれない。 その分、多くの代償を払う必要があるが、きっと後悔はしないだろう。 プロレスラーだけではなくて、スポーツ選手、歌手、お笑い芸人、俳優など、かつてはスターだったのにこの世界にしがみついている人たちがいる。 明らかに全盛期を通り過ぎているにも関わらず、無様にもがき続けている。 そういう人たちを見る目が本作によって変わるかもしれない。 大切な精神を失わない限り、きっと彼らの輝きは失われないだろう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-08-02 23:29:22) (良:2票) |
《改行表示》120.《ネタバレ》 「親父の背中」という言葉がある。子供はそれを見て育ったり、それを追いかけたりする。しかし、いつの間にかそれは小さくなってしまう…。それに気づくのは、悲しくそして少し誇らしい瞬間だ。この映画が映すのも「その背中」である。 カメラの視点はランディの背後から彼を映すことが多い。歩いている彼、座っている彼。こんなにも背中が語る映画は初めてだった。その小山のように盛り上がった背中が大きくなることもあれば、小さくなることもあるから不思議だ。映画を通じて、彼の気持ちは現実世界と仮想世界(プロレス)の間で揺れ動くのだが、その心の動きが背中にもにじみ出ている。 僕がこの映画を特に好きなのは、この映画が「リアル」を映し出しているからだ。「グラン・トリノ」もそうだが、主役のランディは、決して「正しい」人間ではない。いい奴なんだが、家族への責任は果たせないし、単純だし、頭はプロレスのことでいっぱいだし。でも、彼の生き様を見ていると、なぜか心を揺さぶられる。少なくとも彼は小賢しくない。自分の生き方を真面目に追求している。その選択が正しいかどうかは分からない。でも、その態度に僕は感動した。最終的に彼はある選択を迫られるのだが、そのあたりのシーンの描き方は最早神がかっている。映画史上に残るシーンになるだろう。 巷では、ランディの姿をこの映画で劇的なカムバックを果たしたミッキー・ローク自身の姿と重ね合わせて語る節もあるようだが、そんなことは全く不要だ。一本の映画としてこの映画は素晴らしいし、そのように評価されるべきだと思う。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-08-02 00:42:43) (良:2票) |
《改行表示》119.《ネタバレ》 大絶賛です。久々に、男の生きざまを感じました。評価の割に、イマイチと思う人やミッキー・ロークの駄目っぷりに共感できない人もいるでしょう。が、あのラストのスプリングスティーンの曲を聞いたら、10点です。「あしたのジョー」の葉子と丈を思い出しました。中年男性には、グッとくるセリフ(ゲームとかロックなど)もたまりません。 レスラー仲間は、みんないい奴ばかりで、作品のプロレスLOVEも感じました。余談ですが、ミッキー・ロークの愛犬のチワワの話を知り、またミッキー・ロークを好きになりました。ランディのように、また落ちぶれても、俺は応援する。 【とりのすけ】さん [映画館(字幕)] 10点(2009-07-13 20:47:00) (良:2票) |
118.《ネタバレ》 プロレスの舞台裏がそれなりに描かれてますが、暴露本が流行ってしまい、すっかり社会から元々低かった地位をさらに落として低迷してしまっている業界的にはどうなんだろうな。最近はそれを分かった上で見るべき物になっている状態なんだろうか? ミッキー・ロークの歩んできた道と、かつてはトップを極めたが今はインディ団体で日銭を稼ぐロートル・レスラーの姿がマッチしてますね。数年前の「シン・シティ」でビルドアップされた身体を見てびっくりしましたが、本当にプロレスラー並の立派な体つきだったし技を受けてたのは立派。 ストーリー的にはベタであり、娘とのやり取りのオチなどは唐突感もあり違和感を感じたが、バイトをしながらもレスラーを続けるのは、観客の歓声が麻薬的な魅力があるからなど、レスラーに関しては心情を理解できているしドキュメンタリーのようで優れた脚本と思った。社会的地位が無く色モノ扱い、技を受けまくったせいで体はボロボロ、人生的にも不安しか残らない先の見えないプロレスラー達。そのプロレスラーにしかなれない男の悲哀っぷりが痛いほどきちんと描かれていた。 プロレスは他の格闘技と違い相手の技を受けて成り立つ。その中でも相手の技を全部受け、相手の力を引き出し、観客を魅了した上で勝つのがトップのレスラーだ。それはプロレスラーという限られた職業の中でも選ばれた人間しか出来ないコトだろう。でもそんな人並み外れた頑丈さ、タフさでも限界はあるんだよ。ファンは限界を超えた先を見たくないし知りたくないよ。 【ロカホリ】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-06-19 22:43:19) (良:2票) |
《改行表示》117.《ネタバレ》 -The Wrestler- これは“レスラー”という職業であり、生き方でもあるんでしょう。 小さい頃プロレスは結構流行っていて、猪木VSマサ斉藤の巌流島の戦いとかあったっけ。だけどプロレス=八百長という先入観があって、あんまり見てなかったな。当時まだお子ちゃまだったから、“相手の技を(敢えて)受ける”美学を理解できなかったんだ。 グランジの登場した'90年代をディスるシーンは物凄く共感できるし、子供とファミコン(?)するシーンも良かった。エンディングに掛かるスプリングスティーン('80年代のスーパーヒーロー)の曲も素晴らしい。輝かしい'80年代の栄光と、時代と年齢の変化に対応できなかった男の悲しさ。演じたのがミッキー・ロークだから、より心に響く作品に仕上がったと思う。 '90年代に入りパッタリ出番の減った人気俳優ミッキー・ローク。甘いマスクがいつのまにかゴツゴツのお顔になり、時々映画内のキーパーソンとして出てくる“名前だけは知られている過去の人”だった彼が、まさかプロレスラー役で映画の主役を演るなんて、世の中不思議なものですね。 「もう充分だ、俺を抑え込め」心臓に爆弾を抱えたランディを気遣うボブ(アヤトッラー)の優しさ、20年ぶりに闘う友への気遣い。観方を変えると思いっきり八百長だけど、今の私にはこのプロレスの美学も理解できる。 ランディの目線の先にパム(キャシディ)は居ない。必殺技『ラム・ジャム』を出す決心をした瞬間の、運命を受け入れた表情。もしあの場でパムの姿が見えたら、ランディは違う結末を選んでいたかもしれない。 レスラー人生の最後。そして恐らく自身の最後を、ファンの期待に応えることで自分を納得させる不器用な生き様。 ストリッパーのパムもランディ同様、歳を重ねると厳しい仕事をしている。他の生き方を選べなかった不器用さに、お互い共感できることも多かったろうに。 ボクサーの第二の人生のスタートを観せてくれた“ロッキー”のエンディングとはまた違う、だけど同じくらい熱いものがこみ上げてくるエンディングでした。 【K&K】さん [インターネット(字幕)] 8点(2022-04-26 21:01:39) (良:1票) |
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《改行表示》116.めちゃ深い映画。 年老いてもプロレスで会場を沸かせる一方、娘との不和、貧窮、恋などリング外で待ち受けるのは厳しい現実。それは目を覆いたくなる程のリアリティで描かれるプロレスで負う傷や病気よりも痛々しい。そんな辛い現実と寿命を確実に縮めるが華やかなリングのどちらが自分のステージなのか葛藤する主人公。 プロレスにはどちらが善玉でどちらが悪玉かというシナリオが決まっているが、現実世界にはそんなものは存在しない。 ”名前”が人生において選択した道を表現している点も深い。 【whoopi】さん [DVD(字幕)] 9点(2020-03-25 13:32:27) (良:1票) |
《改行表示》115.プロレスに全く興味がなかったのでこの映画も完全無視をしていましたが・・ いやぁ全く、素晴らしい映画が眠っているもんです!昔は凄かったのに今では底辺のプロレスラー。自業自得といってしまえば身も蓋もないですが、ランディ(ミッキー・ローク)は真面目で正直な男だし人間の生き様としては非常に渋かった。いやシブすぎました。 しかしながら、この男は少々豪快過ぎる部分があり、酒で大失敗するシーンが描かれます。娘と会うのが嬉し過ぎて女と酒でハメを外すとかどんだけ子供なんだと。。いわゆる”人間としては最低の部類”といえますが、普段はプロレス仲間からは慕われており、近所のちびっ子たちと一緒にTVゲームで遊んだりする一面も見せ、純粋で真っすぐな人間的魅力というのも同時に描かれています。結果的になんとも味わい深い愚直な人間(ランディ”ザ ラム”ロビンソン)が形作られています。 この愚直でイライラするような男(漢)を脇で支えるのがストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)で、こちらは風俗業=我が子に見せられない問題、年齢問題、プライベートと仕事の分離問題などの葛藤をウマく表現しつつ、ランディを裏で支えるポジションとして機能的に配置されています。 全編ドキュメンタリー風なので映画として良いのか判りませんが、風景やシーン、表情やセリフがいちいち心に入ってきます。音楽を徹底的に排除したことで観客とランディが一体になって共感できた成功例だと思います。私はミッキーロークのことをほとんど知りませんが、このシブさは役者の内面がにじみ出ているのは容易に想像できます。主演男優賞ノミネートは納得、いや、これほどシンプルで心に響く映画も珍しいので是非賞を取っていただきたかったものです。 女には受け入れがたい最高の男泣き映画を装っていますが、実は人間の本質を描いた超ヒューマンドラマとして、男も女も、プロレスが大嫌いな人間にも広くお勧めできる素晴らしい映画です。ラストの演説~試合~暗転の説得力は近年稀にみる素晴らしさでした。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 9点(2015-10-15 16:01:45) (良:1票) |
114.《ネタバレ》 主人公の後頭部から追いかけて撮る方法で、実在のプロレスラーのドキュメンタリーを見ているよう。ザ・ノンフィクションで見るあれだ。感情移入しないわけがない。過去の栄光を味わった過去のヒーローが再起を賭けて奮闘するがなかなか思うようにはいかず。そしてその主人公がまたイイ奴ときてる。誰だって自然と応援してしまうし、自分と重ねてしまったりしてしまう技法だ。作戦勝ちのようなところもあるが、それだけじゃない。ミッキーロークであるところがまた凄い。それ自体も作戦なのだろうが。ミッキーロークの生きざまが映画を超えてかっこいい。80年代の彼を知っている者はみなその変貌に驚く。整形の失敗で過去の美貌は面影すらない。それでも現在の自分をさらけ出し、自分に重ねて落ちぶれた過去のヒーローを演じきった。昔の彼はとにかく美しかったが、今はかっこいい。今の方が大好きになった。 【ちゃか】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-10-30 12:39:18) (良:1票) |
《改行表示》113.《ネタバレ》 叫び声がいくつも、いくつも重なって画が暗転したとき、少し感動した。でも、何に感動したのだろう。彼の人生にだろうか。 ランディが本当に実在したのは、彼の中で80年代を生きたラムというプロレスラーの中で。90年代に入ると、ショウビジネスの変遷はそこに居た誰もが考えるよりも速く、容赦が無かった。そうだ、僕たちが生きた90年代も、彼が生きた90年代も自分が考えるよりも速く移り変わっていき、そうして終わった頃にはたった10年が何十年前と同じようにレトロな記憶になってしまった。 その時代をプロレスラーとして生きたことは、彼にとって実は幸運だったのかもしれない。僕たちが今、普通に暮らしているこの瞬間も、彼が普通に暮らすことが出来なかったあの瞬間も実は何かに寄り添って生きている。でも、寄り添うことが出来る何かは彼にとって適当でも優しくもなかった。それは彼自身が蒔いた種に他ならないのだけど、そんな彼がずっと昔は誰よりも優れた人間で居られる時代にいることが出来たのは間違いない。僕たちの多くは彼のように誰よりも高いところに立って大活躍はしていないだろうから。 それを何十年も引きずっていた彼を、なすすべもなく見つめるしかないのが僕たち。そして、僕たちの中にも彼のような僕らが居て、救いをどこかで欲しがっている。そうしている内に、彼は諦観に押しつぶされて燃え尽きようとしてしまった。 ラムジャムを繰り出すあのほんの僅かな瞬間。彼の中で確かなものが完全に終わったのが聞こえた。僕らはその音を間違いなく聞いたけど、無情にもフィルムはそこまでだった。 でも、もしかしたらそれは慈悲のようなものかもしれない。だって、あの後、あれ以上続いたら涙が止まらないと思うから。 【黒猫クック】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2012-04-12 01:16:19) (良:1票) |
112.無様でかっこ悪くて、でも凄く人間味溢れる男の話。どっぷり感情移入出来ました。いやぁ切ない。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-11-09 21:30:07) (良:1票) |
111.《ネタバレ》 現実感を求めミッキー・ロークを背後から捉え擬似ドキュメンタリーのようにしていますが、それでいてクローズアップやロングショットなど単純で少々面白味に欠けながらも情動的な場面も挿んでおり、物語にしても娘に嫌われ、彼女にフられ、残るプロレスで死に向かってゆくではダメ男に虫歯ができるほど甘過ぎるのかもしれませんが…、それでもファンの前では強靭なヒーローであり続けロッカールームで孤独にクタビレ果てた傷だらけの肉体をさらすロークに、寂しそうに公衆電話をかけるロークに(ケータイより断然イイ)、文字通り必死にラム・ジャムを決めようとするロークに、泣かずにはいられないのです。 そしてもう一人、過激にポールダンスを決めるマリサ・トメイも感動的です。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-10 18:40:22) (良:1票) |
《改行表示》110.《ネタバレ》 長いですね。 これがニコラス・ケイジだったら、と考えながら見てましたけど、ミッキー・ロークにしたことで、痛々しさが増大したと思う。 …この話は、ランディの無鉄砲さを、「観客が笑える」程度にまで持っていかないと、「もたない」話だと思うんですよ。正直、「おもしろい」と思いながら見ていたわけではないし、「まだ終わらないのか」と思ってしまいました。 もちろん、生々しい描写も必要である。 が、全体として、「痛々しいけど、やっぱり笑っちゃうな」というところまで持っていかないと、ダメだと思うのです。 ア氏は、「ミッキー・ロークの演じるランディ」に思い入れが強くなりすぎて、そこんところで失敗してしまったと思います。 ストリッパーに振られるとか娘に嫌われるとかいうエピソードも、シリアスに描きすぎなのです。 「痛々しさ」を感じさせながら、「やっぱり笑っちゃう」というものを見せるのは、とても技術が要ります。 中途半端ですね。 私は、笑って終われたら10点を上げても良かったと思います。 最後の試合で、観客を大笑いさせながら、エンドロールに持っていけば、「あの歌」もセンス良く思えるというものです。 このような出来で、最後に「あの歌」を聞かされると、もともと低かったテンションがさらに下がって、やりきれなくなります。 ア氏は笑いのセンスが足りません。 それとは別に、顔を大胆に整形して、ステロイドを打ちまくって肉体をビルドしたミッキー・ロークの役者魂は無視できません。 ただし、こんなに急激に大量のステロイドを使用したとなると、内臓や精神への影響が必ず出るでしょうから、心配ではあります。 ケリー・フォン・エリックはピストル自殺していますし、モーリス・ホワイトは若年性アルツハイマーです。 ステロイドは非常に危険です。そのうちミッキー・ロークの訃報を聞くことになるかもしれません。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-03-12 15:54:51) (良:1票) |
《改行表示》109.《ネタバレ》 ランディの馬鹿野朗... でも、俺はこの映画が大好きだ!! 【たくわん】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-08-30 13:06:15) (良:1票) |
《改行表示》108.《ネタバレ》 バカだなラム。愚かだ。でも、そうするしかないんだよな、きっと。 リングの上で人生の最高潮を迎え、リングの外を蔑ろにしてきたラム。 彼が生きたのはリングの上でしかない。リングから降りたら何もない。 家族も、名誉も、地位も、金もない。リングの上にいることが生きること。 だから引退なんてできない。引退したら彼には何もない。 彼にとってリングにいることは呼吸することと同じ。 彼にとってリングに立つことはトイレに行くことと同じ。 彼にとってのリングの上で戦うことはベッドで眠ることと同じ。 彼はリングの上でその全てを終わらせたのだとおもう。 バカで愚かだけど、最高にカッコいい。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-05-23 21:22:46) (良:1票) |
《改行表示》107.《ネタバレ》 あまりに痛々しく、そして悲しい映画でした。始めから終わりまで退屈することなく引き込まれました。プロレスにはまったく興味がなく、ほとんど事前知識なしで席につきましたが、冒頭のレスラ-仲間との段取り確認と、しこんだカミソリ刃による自演流血の時点からはまってしまいました。 勝手ながらロッキーのようなアメリカンドリームの映画ではないかと思っていたら、そうではありません。プロレスラー界とそこで生きる一人の老雄を等身大に描いた愚直でまじめな映画でした。 ステイプラーガンのおぞましさ。対戦相手を気遣う戦友同士の仲間意識の暖かさ。閑散とした合同サイン会と、「8ドルだよ」と自身でお代を徴収し、ウエストバッグからお釣りを返す寂しさ。メインデッシュのPコートを少しは喜んでくれた様子に安堵したものの、2時間の待ちぼうけくらいであそこまで言うかぁ?という娘の厳しさ。我慢して総菜の盛り直しを繰り返す忍耐。キャンセルされたはずの対戦が直ぐまた復活される興行の安直さ。こうした境遇の中で心身ともみまさに満身創痍でリングに上がり、観客はそれなりに熱狂するわけですが、両者の間には背負うものについて大きな温度差があるのは否めません。片や死の淵を彷徨いながらのパフォーマンス、片や入場料20ドルで一時の娯楽を求めに来た観客達。ラムの居場所はリングただひとつしかありませんが、観客は別の娯楽は無数にある。映画は敢えてその対比をクローズアップはしませが、私は非常に恐ろしく感じました。「もう十分だ!」と言う相手構わず、命をかけた大団円を迎えるランディ・ラム。同じく「もう終わりにしてくれ!」「何故そこまで?」と叫びたくなったのは私だけではないでしょう。 ところで、ラム(雄ヒツジ)とは、字面だけではかわいいイメージがあり、リングネームとしてはふさわしくないのでは?と思いましたが、プロフットボールのチーム名でもあるし、辞書を見ると「(軍艦の)衝角」や「破城槌」という凶器的な意味もあるようなので納得しました。 【風神】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-03-14 16:58:41) (良:1票) |