《改行表示》55.“fish story”とは、「ほら話」という意味だということを、この映画で知った。 釣り人の手柄話から意味を成しているらしい。 細かく見れば決して完成度が高いとは言い難い映画であることは間違いないが、僕はこの映画が好きだ。この“お話”がたまらなく好きなのだと思う。 何十年も前の売れないパンクバンドの最後の一曲が、数十年後の世界を救う。 「風が吹けば桶屋が儲かる」や「バタフライ・エフェクト」など、些細なアクションが別の些細なアクションへと徐々に連なり、時間も場所も超えた世界の大きな事象に繋がるという現象は、世界中で古くから語られてきたことであり、この物語のストーリーそのものには目新しさはないのかもしれない。 けれど、このストーリーの本当の魅力はまた別のところにあって、爽快感でもあり、瑞々しさでもある“それ”は、それこそが、この鬱積ばかりが溜まる世界への“救い”のように思える。 昔々の名も無い若者たちがふいに生み出した「無音」が、「運命の出会い」と、「正義の味方」と、「世界の救世主」を生む。 もしそれが「ほら話」だったとしても、その“荒唐無稽”を信じられた方が、きっと人生は楽しいし、この世界はもっと素晴らしいものになるように思う。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-06-11 16:47:17) (良:6票) |
54.《ネタバレ》 一握りの天才や偉大な指導者のおかげで、私たちの文化文明は発展を遂げてきたのだと考えます。その他大勢はその恩恵を受けてきただけ。何か申し訳ない気がする。人は“社会の歯車”と称されますが、自分の存在などちっぽけ過ぎて、小さなビスにも満たないと思えます。たった今、自分が消えたって何の支障もなく世の中は回っていく。それが現実。生きている意味を考えた途端に、自己の存在価値を見失う。だから、売れないロックバンド『逆鱗』のたった1曲の歌が世界を救うという筋書きに、強く勇気付けられました。自分も生きている意味がある、そう思えることが本当に嬉しい。『フィッシュストーリー』という楽曲にスポットが当たっていますが、見方を変えれば実に多くの人たちが世界を救う役割を担っていたことに気付きます。原作を日本語訳したハーフ顔の男、その本を家に持って帰ったおばさん、正義の味方をコックに雇った汽船会社の人事担当、多部ちゃんに数学の楽しさを教えた先生…。“友達の友達はみな友達だ”ではないけれど、世界中全ての人が何かの役に立っている。こじ付けかもしれない。でも、こんなホラ話なら大歓迎です。ただ、物語の構成自体はテクニカルだとは思いませんし、『アヒルと鴨~』もそうでしたが、ストーリーに中弛みを感じるのは中村監督の短所だと思います。でもキャスティングの的確さとメッセージを伝える技量の高さがマイナスを十分に補っていると感じます。今後も原作伊坂+監督中村のコンビに期待します! 【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-03-30 21:05:33) (良:5票) |
《改行表示》53.無関係な出来事の連なりが実は一部で少しず連なり、 人類を救うほどのきっかけを産む。 人の意思が少しだけなにかを変えてそれがどこかで別の花を咲かせる 嘘みたいだけどあったらいいな。というお話。 まずシークエンスの長さ連なりの示唆。 そうした構成がとんでもなく上手。出来上がりがしっかりと頭の中にあるのでしょう。 音楽や演出も秀逸でまさにどこに出しても恥ずかしくない そんな映画です。 きっちりとまとまりすぎている事が逆に広がりを産まなかったのが 残念でしたが十分な余韻を楽しめる美しさのある映画でした。 【病気の犬】さん [DVD(邦画)] 7点(2015-11-05 14:58:58) (良:2票) |
《改行表示》52.《ネタバレ》 原作は未読です。ストーリー自体に特筆する面白さは感じなかったのですが、日常的な人の営みが連鎖してどこかへ繋がって行くという考え方はとても大きなことを示唆していると思いました。明確な意思を持って何かを為そうとしなくても、人は世界に深く関わっていること。反対に、過去に意味を持った事象には、無関係と思える人が関わっていることが意識されました。それはこの映画のように良いことばかりでも無い。誰かがくしゃみをしたから交通事故で人が死ぬような可能性だってある訳です。ただ、人生とか生の意義を前向きに捉えるには十分な内容だと思いました。 自分のやることが何かの役に立つと考えるなら、多くの人と接触し、人の目に触れるものを残す方が貢献できる可能性も高い。このサイトに残しているレビューが100年後に人類を救うかも知れません。そんなことを考えると愉快な気分にもなります。 本編に戻って、キャストの良し悪しがハッキリ分かれる作品でした。多部ちゃんと森山クンはとても良かったです。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-04-25 17:41:32) (良:2票) |
《改行表示》51.《ネタバレ》 何かを表現することは、世界を確実に(ほんのわずかかも知れませんが)変えていき、その積み重ねが我々の歴史を築きあげていく。なんというかそんな壮大な事を考えさせてくれる素敵な「FISH STORY(ほら話)」でした。 まあ、75年のシーンの登場人物たちがちょっとキレイ過ぎな感じがしましたけどね。 【TM】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-12-06 23:48:39) (良:2票) |
《改行表示》50.《ネタバレ》 1つ1つのエピソードはそんなたいしたことはないけれど、それがつながって世界を救うことになっちゃう爽快な結末。 1975年、1982年、1999年、2009年、2012年。 異なる時代で起きた出来事を1つにつなげる壮大な物語。 こんな大掛かりにも関わらず、すっきりまとまっていてわかりやすい。しかも2時間以内にきれいに収めてしまう。かといって、駆け足になっている感じは全くしません。1つ1つのエピソードを、じっくり丁寧に見せてくれます。そこに描かれる登場人物たちの心の機微までしっかり伝わってくるのです。 こーゆー仕掛けの作品って、奇をてらうものも多いですが、この作品は至極真っ当でストレート。そこが好感触でもあり、物足りなさでもあります。 森山未來を育てたのは濱田岳ってすぐわかっちゃうし、ミサイルの計算をしたのが多部未華子ってすぐわかっちゃいます。ですので、良くも悪くもこちらの予想を超えてくることはないでしょう。 また、どう考えても要らない人物とエピソードの存在が気になります。それが谷口と1999年。要る?私はそこだけ不協和音を感じてしまって、正直谷口も1999年も無くてよかったです。というか、無いほうが良かったです。ついでに言うなら、健太郎と悟が1999年に登場してくるのだって正直蛇足だと思っちゃうのです。 それなら、高橋真唯があのあとどうなったのか、そっちのほうを教えてほしいくらいです。 【たきたて】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-06-02 00:37:07) (良:1票) |
49.それぞれの年代の一見なんの関係もないバラバラのエピソードが一つにつながっていくというのはとても面白いし、時系列の組み換えや演出のミスリードも映画的で良く、最後にストンと落とす終わり方もこの監督、原作コンビの映画らしくてすっきりしていていい。それぞれのエピソードはどれも面白く、中でも多部未華子と森山未來のエピソードは特に印象に残り、ここから一気に引き込まれた。物語のキーとなる「フィッシュストーリー」をうたう逆鱗のパートも普通にバンド音楽ものとしてよく出来ていて面白い。録音シーンを最初から最後まで見せているところなどこだわりを感じる部分も多く、B級臭さも確かにあるものの、全体的によく出来た映画で、佳作と言っていいものになっている。しかし、個人的には「ゴールデンスランバー」や「ポテチ」に比べて少し物足りないと思う部分もあったのも事実。ラストは確かにさっきも書いたようにうまいのだけど、そこへの入り方がやや唐突に思えたのも少し残念だったかな。見て数日経つのだが「フィッシュストーリー」のメロディが今も耳に残ってる。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 6点(2017-06-03 17:31:36) (良:1票) |
《改行表示》48.過去に見たことがある作品を再鑑賞したのでレビューします。 内容はすっかり忘れてしまって居たのですが、割と好きだったと記憶しておりました。 映画が始まりしばらくは、つまらない展開が続きますが 多部ちゃんが出てくる当たりから徐々に物語に引き込まれて行きました。 しかし展開としてはブツ切りで各時代のストーリーへと移り変わり 一つの物語が徐々に深く展開していくわけではないので こういった構成が好みではないのであれば時間が長く感じられるかもしれませんが 過去の物語達が繋がって行くと何とも言えない爽快感がありますね。 昔懐かしいようで古くない。そんな独特の世界観を受け入れられるかどうかで この映画が面白いと感じるのか苦痛と思うのか別れそう。 全体を通してホラ話や何が真実なのか冗談なのか分からない事だらけ。 ある意味どうでもいい展開を最後繋がって行くと一つの壮大な物語ができあがる。 その物語は壮大でバカバカしくて、あり得ない。だからこそ面白い。 作り手のセンスの良さを感じました。 【デミトリ】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-11-30 09:22:20) (良:1票) |
47.《ネタバレ》 あーもうこういうの大好き。時空を超えたつながり、時系列操作、描写を途中で止めてのミスリード、何十年も前のバンドが偶然的に録音した1曲が誰も知らないうちに地球を救うという馬鹿馬鹿しさ(しかもそれ自体がフィッシュストーリーであるという二重構造)。録音のところをフルで撮っているなど、ポイントの部分にこだわっているところに、制作者の対象に対する愛情を感じます。●バンドの4人はちゃんとキャラクターができているし、レコード会社の人やプロデューサーもいかにも本当にいそうな感じだし、多部未華子ちゃんもいい存在感だし、正義の味方は正義の味方としかいいようがないしで、各登場人物の造形にも、きちんと配慮されています。●難点は、映像が全般的に綺麗すぎで、その年代だと意識して見ないとその年代に見えないこと。それと、ビートルズの解散からパンクの勃興まではそこそこ間があるので(というか、むしろその間の部分こそが重要なので)、一緒くたに語るのは変ですよ。●原作も読みましたが、映画に比べると本当に骨子のみという感じ。いろいろなパロディやお遊びの部分もあるとはいえ、よくぞここまでイマジネーションを膨らませたものだと思う。ハイジャックをシージャックに変更したのも正解。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-10-18 01:53:33) (良:1票) |
46.60年間の3世代に渡る大河ドラマ。自分はなぜ今ここにこのように存在しているのか?を考えさせられた。いろんな本や音楽や映画に出会い、そういったものが影響して、人生の選択や意思決定をして、今ここに居る。それらの作品を作った人にも各々の人生がある。そういった、人はどこかで繋がっている、人はどこかで関係しているという、人生の本質と深遠さを感じさせられた。バンドメンバーは結局その後どうなってしまったんだろう。そこが知りたかった。 【東京50km圏道路地図】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2015-10-07 10:30:08) (良:1票) |
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45.一見バラバラの馬鹿馬鹿しくさえも思えるエピソードが見事にまとまってひとつの物語になる。まさしくフィッシュストーリー! 繋がった瞬間あっと驚いたのは私だけだったろうか。好きだなあ、こういう展開は。最初やかましいだけに思えていた主題曲も、最後は好きになってしまった。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-04-15 11:12:58) (良:1票) |
《改行表示》44.《ネタバレ》 文字通り馬鹿なほら話ではあるんだけれど、これだけ壮大なほら話、馬鹿話はかえって心地良かった。 だいたい、想像ができるエピソードの繋がりを最後に時系列を直してつなげて見せてくれるのも親切かと。 何かいままで味わったことのない新鮮味のある面白さ。 原作を読んで再見。う~ん、この監督は伊坂さんと相性いいはずなんだけど、どうなんだろう。もちろん、原作の面白さを殺すようなことはしてないんだけれど、アヒルと鴨や、ポテチまでの完成度は感じられなかった。どちらかというと、映画オリジナルの部分に不必要だったり、不必要に長かったりするものが感じられて。あと、最初に濱田君をいたぶるジャイアン男とか、あるいは石丸さん演じるかまってちゃん男とか、必ずしも必要性がないのに、あからさまに不愉快な登場人物をオリジナルで作り出す意図がわからない。ただ、意外なことに、多部みか子という女優を知ってから初めて、ほんの少しだけ魅力を感じたのは、自分でも意外だった。(どこか体調でも悪いんだろうかw) 【rhforever】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-08-29 15:22:12) (良:1票) |
《改行表示》43.《ネタバレ》 個人的に『オトナ帝国』と並ぶ“涙腺崩壊ムービー”でした。映画のラスト…“逆鱗”の『フィッシュストーリー』の演奏にシンクロしながら、映画が一直線につながった瞬間、俺の涙腺は完全崩壊しました。ホント、こうやって感想を書きながらでも、また涙腺がヤバくなってきてるんですから(笑)。そうですねえ…神様に「大丈夫だよ、おまえさんの人生だって無駄じゃあないんだよ」と言ってもらえたような気がしたンですよねぇ…。 ちなみに…伏線だった“レコードの間奏部分の無音の謎”も、その真相が明らかになった瞬間、想定していたのとは違う意味でトリハダが立ちました。「届けよ、誰かに…。」 そして… 多部ちゃん可愛いすぎワロスww 【幻覚@蛇プニョ】さん [DVD(邦画)] 10点(2011-08-26 12:34:03) (良:1票) |
42.《ネタバレ》 世の中の事象すべてが、小さなパーツの積み重ねであり、それらのパーツのいくつかを読み解くと、どこかに共通のプラットフォームがある。なるほど。であれば、このサイトで名高い「死霊の盆踊り」を端に発した奇跡も、世の中にはあるかもね。(未見)ですので、ワタシ、その仲間になれないですけど。なお、伊藤淳史さんは割と好きです。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-03-13 15:44:51) (良:1票) |
41.《ネタバレ》 いろんな時代の話が最後に繋がる展開がとても面白かった。無駄なこともきっと何かに繋がってるなんて夢見たいな話ですが、とても素敵な映画でした。 【osamurai】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-02-08 18:56:41) (良:1票) |
《改行表示》40.《ネタバレ》 伊坂幸太郎の小説はかなり好きで、ほとんど読んでるんですが、本作の原作は伊坂小説の中では個人的にはハズレだと思い、なんでこんなのを映画化するのだろうと思いました。 映画の方の感想ですが、原作より面白いと感じました。 しかし、継ぎはぎ、ぶつ切りの構成の仕方は最近ホントによく観る手法ですが、この映画では余り功を奏してるとは思えず、逆に歯がゆく感じました。 バンド編の切なさは好みだし、シージャック編の森山未来の本格的な身のこなしは、良い驚きを与えてくれましたが、終末の世界編では3人の人間がグダグダしゃべってるだけというのは物足りない。 悪くないんですが、全体的にちょっとパンチに欠けました。 【すべから】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-10-22 11:59:21) (良:1票) |
39.伊坂幸太郎はもともと『パルプ・フィクション』のようなことを小説でやってきた人なので、彼の作品は非常に映画的だし、実際、原作小説よりも映画化の方が面白いことも少なくない。今回は『アヒルと鴨のコインロッカー』の監督ということで安心して観られた。オチは予想を裏切るほど凄いものではないが、「次はどうなるのか?」という興味を引き立てるには充分に機能している。「フィッシュストーリー(ほら話)」という名の売れないレコードが、いかにして世界を滅亡の危機から救うのか。いくつもの時代と複数の登場人物が交錯し、奇跡の結末へと収束していく様は何とも心地よい。 【フライボーイ】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-10-17 07:12:28) (良:1票) |
38.「風が吹けば桶屋が儲かる」ってな話だね。幾つかのエピソードが最後にうまくまとまって気持ち良かった。伊坂ワールドをうまく表現してくれてると思います。歌もよかった。 【tonao】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-10-10 21:47:13) (良:1票) |
37.《ネタバレ》 時系列を交差させつつストーリーを進め、最後にパチリと物語を組上げる原作のテイストを損なわず、良い意味で映画的になっていたと感じました。「フィッシュストーリー」を軸にすべてがつながり、「?」が「!」に変わる爽快感♪いや、そりゃあー、売れないバンドの叫びが、ああなって、こうなって、そうなっちまうのは「ありえねー!!」と思うんだけどさ。でも、こんな事、あるかもしれないよなあ、なんてふと思うのです。「アヒ鴨」に続き、中村監督、ありがとうございました。8点か9点か迷いましたが、濱田さんの好演と、ジャック・クリスピンや、老夫婦の小ネタに9点!迷ってつけたこの9点が、廻りまわって人類を救う・・・かな・・・?? 【黒部三十郎】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-06-17 22:50:35) (良:1票) |
36.《ネタバレ》 今日伊坂原作のラッシュライフを観てきましたが、酷かった…それに比べると、フィッシュストーリーはとても楽しく観れました。原作は短編集の一遍なのですが、これをうまく広げて映画にしたなぁという印象です。映画を観てから原作を再読しましたが、個人的には原作より面白くなってると思います。終末のフールとくっつけたのかなというラストの設定が、フィッシュストーリー=ホラ話という意味合いにピッタリな感じのあり得なさで好きです。あと森山君のアクションはなかなかかっこ良くて見直しちゃいました。伊坂原作の映画は、撮る監督さんによって随分違う顔を見せますが、これくらいポップに描いてくれた方が合ってると思います。アヒルと鴨~の次に好きです。 【パンダ侍】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-06-17 00:05:27) (良:1票) |