《改行表示》141.《ネタバレ》 リアルタイムでサイレント時代からトーキーを経て映画を愛し続けた方々にとっての、この作品に対する感慨は、おそらく想像以上に凄いものがあったんでしょうね!しかし現代のようにサイレント映画も手軽に楽しめるようになると、自分のような後々のファンにとっても、その感慨の断片くらいは充分に感じることが出来る、いや出来るどころか震えてしまいます。もう映画に対する究極のリスペクト、精神を病んでしまった過去の大女優、その残酷さ。大なり小なり今後、僕自身も今以上に良かった頃の思い出に幻影として取り付かれていくことがあるのだろう。徹底している、この作品の全てが徹底しまくっている。ラストシーンのスワンソン、そして元夫の執事、シュトロハイムの愛のかたち。優しさとは何か?息をのむしかない驚愕のラスト。 【よし坊】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-05 07:50:01) (良:3票) |
140.過去にしがみつく往年の大女優を往年の大女優に演じさせ、その女優の執事をする往年の大監督を往年の大監督に演じさせるというキャスティングの惨さ!!たしかにこの二人だからこその真に迫った演技ということになるのだろうが。スワンソンの圧倒的な存在感が目を見張るが(正直、圧倒的にすぎて疲れる)、この作品をより深く濃密なものにしているのはシュトロハイムの存在だ。かつての偉大な巨匠は一人の女を大女優に仕立て上げ何もかもが自由に手に入るセレブへと変貌させる。サイレントからトーキーへと変わったとき女優に求められる演技もまた変わる。よってたかって持ち上げておいてサッとひく。しかし過去のあまりの優遇ぶりに威厳を捨て去れない女優と威厳を持つ女優の崇高さを愛してしまった男の心理が合致してしまう。男は愛情とともに責任を感じていたのかもしれない。そんな男と女の悲しいドラマが、一見本筋のように描かれる三流脚本家との色恋話を凌駕する。シュトロハイムの存在はハリウッドを皮肉った作品に変質的なメロドラマとさらなる皮肉をもたらしている。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-12-18 15:07:45) (良:2票) |
139.《ネタバレ》 これは何とも言えずとても残酷な…。この映画の表皮1枚下にある意図に気付いた時、その相が一変する。男女の愛憎話、痴話話、“よくある話”。その一枚下に何と残酷な暗喩を置いたのか(いやむしろここまで露骨だと直喩なのだが)。これは、映画史の中の一時代への一種の葬送。サイレントの大女優スワンソンを主人公役に、サイレントの大巨匠シュトロハイムをその執事役に据える残酷さ。新時代の巨匠デミル監督は本人役で登場。サイレントからトーキーへ。シュトロハイムからデミルへ。遺物としてのチャップリンへの回顧。豪奢で薄暗い屋敷はサイレントという過去の栄華の暗喩(直喩)。陽の当たらなくなった過去の遺跡の中に生きるスワンソンとシュトロハイムの一方で、華やかな撮影所のライトの下、隆盛を謳歌するデミル監督。これはビリー・ワイルダーの一級のグロテスクで残酷なユーモアなのですね。ラストの凄絶な花道。魔都ハリウッドを貫く大通り。だけれどその名はサンセット。衰退。 【ひのと】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-05-15 22:38:47) (良:2票) |
138.ストーリーはフィクションだが、映画が語っていることはノンフィクションとも言える。キャストがパーフェクトで、主演のグロリア・スワンソンは実際にサイレント時代に活躍した女優、マックス役のシュトロハイムもその時代の映画監督であり、作中で彼女が見ている自らの主演映画は彼が監督し彼女が主演したQueen Kellyという実在の映画。本人役で登場するセシル・B・デミルも彼女の出演作品を撮っていて人物関係が実にリアルなのだ。ブリッジを囲むメンツもバスター・キートン、H・B・ワーナーなど実際のサイレント時代のスター。パラマウント撮影所のセットも全て実際の建物を使用、また途中出てくるドラッグストアも実際にハリウッドの俳優達が溜まっていた店であり、ハリウッド人の生活の実情と歴史がこの作品には詰まっている。お熱いのがお好き、アパートの鍵貸しますといったコメディの傑作、本作のようなハリウッドの暗部を痛烈に突くような社会派サスペンス、優れた映画監督にして脚本家であったワイルダーの鬼才ぶりに感服。 【Arufu】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-12-15 22:47:35) (良:2票) |
137.《ネタバレ》 ラストがだいたい分かっているのに、面白くてモノクロの画面に引き込まれてしまった。憐れな女優の物語。「サンセット…」というタイトルと、パラマウントの撮影所でのワンシーンに全てが集約されている。旧知の照明技師が当てたスポットライトによって、スタジオ中の人が「ノーマよ!」と元大女優に駆け寄るが、光が逸れると群衆も三々五々彼女の元から散っていく。太陽が沈んでいくのと同じ、時間が絶え間なく流れるのと同じ、自分の価値が変わっていくことを心の底で判っているからこそ無駄に藻掻いて、見苦しい姿になっていくノーマ。三流の脚本家にまで捨てられ、プライドゆえ狂っていく。人間、プライドなんぞより流れる時間を楽しむくらいの余裕が必要なのだ。もしかしたら彼女はそれにも気付いていたかもしれないけれど…。あの執事も時の囚われ人で、彼をもっと掘り下げて描いたら、いっそう不気味さが益したろう。人間の内面の愚かさを巧みに映像化した秀作。明日は我が身と震えた業界人も多いのでは…。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-07-04 21:46:00) (良:2票) |
136.先日、ウィリアム・ホールデンは死後数日して、死体が見つかったということを知りました。どんな状態だったのかはわかりませんが、きっとプールに浮いていたんだろうな……と思いました。若い身空で可哀想に……とも。えっ?ホールデンは夭折したわけじゃあなかったんだよね。そ、そうだった、それだけこの映画のプールに浮いたホールデンが印象的だったってことなんです。 【元みかん】さん 7点(2004-06-13 14:24:30) (笑:2票) |
135.《ネタバレ》 (全面的に改訂)さて、本作で最も評価すべきはノーマ・デスモンドという一人の女優が辿る悲劇を通してハリウッドの諸行無常っぷりを辛辣に、それでいて娯楽性たっぷりに描いて見せたワイルダー(とチャールズ・ブラケット)の凄まじい迄の力量と先見性だろう。先ず”サイレント期の大女優”というノーマの基本設定がウマイ。過去に生きる亡霊の如き彼女の存在を描くに説得力抜群である。ホールデン扮する青年ギリスとのジェネレーション・ギャップを映像とサイレント風演技で雄弁に表現している。勿論MVPはグロリア・スワンソンを措いて他にあるまい。野心に燃えるワイルダーの演出・シナリオに敢然と受けて立った彼女の”女優魂”にはただ敬服するのみ。殊にラスト、発狂したノーマが「サロメ」の衣装で階段を降りつつクローズ・アップで迫る様は正に「鬼気迫る」の一語。ここにも又、演出と役者の幸福なる二人三脚を見る思いがした。マックス役のシュトロハイムも圧巻。こういう作品を傑作と呼ぶのである。 【へちょちょ】さん 10点(2002-12-24 05:52:47) (良:2票) |
134.「忘れられたスター」をはじめ、後世にさまざまなプロットを使い尽くされていながら、擦り切れていない部分が残っていることが、すごい。 【みんな嫌い】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-08-17 14:26:31) (良:1票) |
《改行表示》133.《ネタバレ》 「イヴの総て」つづきで私も最近になって見ました。このプール、どうやって撮ったの?とばかり考えてました。初っ端にコレを映してくるこの自信には恐れいりますよね~(意外な結末や犯人を最後の最後に明かしても面白くない作品はあまたあるじゃないですか)。登場人物たちは、身勝手でそして哀れでした、でも自分だったらそうするかも、と納得もしますね、やられた。 スワンソンやポーカー(だったっけ?)仲間役のthemselvesさんたちが実際に当時「過去の人」になりつつあったというのもえげつないです。オスカー取る力あってオスカー向きでない、怖すぎ。 【かーすけ】さん 9点(2004-10-11 15:49:29) (良:1票) |
132.ワイルダー、ハリウッド監督7作目。この作品がブラケットと組んだ最後の作品となってしまいました。サイレントからトーキー、モノクロからカラーへ。そんな時代に刻まれるハリウッドの内幕、人間模様をリアルに写実しておりますねー。スワンソン、シュトローハイムを配すること、この作品そのものをモノクロで撮影することで、古き時代へオマージュが捧げられ、同時に風刺がなされます。作中、スワンソンが邸宅で見ている映画が、実際に自ら出演、シュトローハイムが監督した『Queen Kelly』だってんだから泣ける・・・。大スターを大スターのままに存在せしめる執事の姿は自らの存在価値をも賭けたシュトローハイムの執念のようにも見えます。そして、「映画のほうが小さくなった」のスワンソンの台詞・・・、今の時代の方が響いたりしますねー。自らに目覚めたジョーの悲劇、自らに目覚めぬスワンソンの悲劇。うならされるラストでした。 【彦馬】さん 8点(2004-05-21 19:22:37) (良:1票) |
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131.チャールズ・ブラケットと共同でシナリオを書いていた頃の作品で、いわゆるラブコメディーの傑作群とは系譜が違います。映画界の内幕をパラマウント、20世紀、ザナックなどの実名を盛り込んで、セシル・B・デミルやキートンまでもが自身の役で出演しているとは驚きです。サイレント時代の大スターを演じたグロリア・スワンソンもはまり役で、彼女のグロテスクな存在感はハリウッドという映画社会の歪みを強烈に風刺しています。召し使いの男も同様で、この二人の狂気の様がハリウッドの象徴だとするならば、そこから出て脚本を書くこともできなければ、死んでもそこから抜け出せなかった売れない脚本家は、もともと脚本家から身を起こしたビリーワイルダー監督自身の投影でしょう。ラストシーンにおけるスワンソンの狂気迫るクローズアップには、映画界の恐さと共に、どうあがいても結局はハリウッドという奇妙な社会からは抜け出せない、という自身の覚悟が込められているのではないでしょうか。いずれにしても、忘れられない残像を残す強烈なラストカットです。 【スロウボート】さん 8点(2004-01-25 03:33:28) (良:1票) |
130.(ややネタバレ)文句ナシでしょう。はじめっから終わりまで完璧。もう十何回も観てるけれど(ビデオでね)、観るたびにいろいろな発見がありますね。今日の発見は、シュトロハイムが言う「楽師たちはまだこのことを知りません」この一言があるとないとじゃ本当に大違い。その後のシーンでベッドのノーマを見たときにズシッときます。 【ディディエ】さん 10点(2003-01-22 02:07:28) (良:1票) |
129.所謂サイレントの時代には本作のタイトルと対をなす「サンライズ」という傑作があり、執事のマックス役のシュトロハイムが監督し、映画のオールタイムベストには必ず顔を出す「グリード」があり、劇中、グロリア・スワンソンが道化て扮するチャップリンの一連の作品は言うまでもないが、スワンソン自身「チャップリンの役者」に出演してたりする。スワンソンが劇中語るように映画が最も輝いていたのはサイレントの時代であり、映画は音声というものを得た替わりに見る者に与える夢を失い、また、質そのものもノーマのキャリア同様、凋落(つまりサンセット)の一途をたどっているのだろうか・・・という危機感をワイルダー自身、本作製作当時に抱えていたことは想像に難くないが、映画を撮り続けることの必然を見出そうとし、得た答えが(誤解を承知で言えば)最早映画とともに心中するしかない、というものであるがゆえ逆説的に作品に永遠の生命を吹き込む、という何とも皮肉な離れ業をやってのけたことには只々敬服するしかない。つまり、本作のオープニング、死人のモノローグから始まるという当時としてはえらく斬新であった手法も「終わりから始まる」という永遠の時間軸の中を生き続ける、ということからその必然が理解できよう。すなわちエバーグリーン。 【ダイ】さん 9点(2002-03-07 12:19:31) (良:1票) |
128.《ネタバレ》 自分が今でもスターで、ファンや映画界が復帰を待望していると思い込んでいるサイレント映画時代の元大物女優と、ひょんなことから、女優の大邸宅に住み込むことになるB-pictures(低予算映画)ライターのお話。気の利いた丁寧なディテールで、ムダのない小気味のよい展開で、主要な役者がすべてハマっていて、バランスがよくて安心して身を委ねられる感じです。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 7点(2024-02-26 19:11:10) |
127.《ネタバレ》 70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54) |
《改行表示》126.《ネタバレ》 有名な名作を見逃していたので動画配信で鑑賞。 デミルやキートンが実在の役で出演しているのには驚き。当時はすごい説得力があったと思う。 しかしながら、今みてみると何とも古めかしいハリウッド映画に思え、あまり感情移入ができなかった。 【とれびやん】さん [インターネット(吹替)] 6点(2021-06-08 17:12:55) |
【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-02 15:10:55) |
124.《ネタバレ》 悪意・毒気が満載の映画。ファーストシーンのプールに浮かぶ死体の独白から、フラッシュの中での狂った女優のラストシーンの二つの名場面に挟まった怪作。これを見るまで、ワイルダーは、明るいコメディ作家だと思っていましたが、ひっくり返りました。案外、ダークな面が本質なのかも。文句なく面白いです。また、後に影響を与えた映像表現も多し。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 7点(2018-12-22 23:01:53) |
《改行表示》123.「ハリウッドは人を噛んで吐き捨てる 私は食べかすだ」 とは、映画「エド・ウッド」におけるベラ・ルゴシ役のマーティン・ランドーの台詞。 奇しくも、今作の劇中、ウィリアム・ホールデン演じる売れない脚本家が、噛んでいたガムを吐き捨てるシーンがあった。当の本人に促されたとはいえ、朽ち果てたかつての大女優の目の前でのその行為は、かの台詞を如実に表しているようで心中穏やかでなかった。 新旧のスターが入れ替わり立ち替わり、次々に映画が生み出されてはその大半が時の流れと共に忘却の彼方に消えていくハリウッドの儚さが全編に溢れる。 ショービズの世界において栄枯盛衰は宿命である。特に時代がサイレントからトーキーに移り変わる映画史上の過渡期においてはそれは殊更に顕著なことだっただろう。 時代に取り残された者の苦悩と狂気が溢れんばかりに映し出された人間描写は見事だが、それをリアルに同じ境遇のサイレント時代の大女優に演じさせるとは。 演じる方も、演じさせる方も、「映画人」としての矜持が素晴らしい。 サイレント時代の大女優ノーマ・デズモンドを演じるのは、実際のサイレント時代の大女優グロリア・スワンソン。 まさに自分自身を投影した役どころを圧倒的な存在感と鬼気迫る表現力で演じきっている。 “大階段”を降り立ちカメラに迫っていくラストシーンでは、現実と創造の境界を越えた崇高なまでのナルシズムに支配された。 光り輝く世界の裏側に確実に存在する闇と人間の脆さを、ビリー・ワイルダーが卓越した映画術で映し出したこの映画の佇まいは「名作」の呼称に相応しい。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 8点(2017-11-21 11:21:35) |
122.《ネタバレ》 何かとても生々しい感触というんですか、落ちぶれた老スターを演じるグロリア・スワンソンがすごい。ビリー・ワイルダー監督はオシャレなイメージがあるけど、本作はそんな雰囲気がほとんどない。どっちかといえばドロドロしてる感じかな?。なかなかインパクトのある内容は、若干中だるみを感じつつも最後まで引っ張っていくだけのものはゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(字幕)] 6点(2015-02-15 10:09:45) |