2.《ネタバレ》 誘拐、ドラブルという名前の破壊工作員たちの秘密組織、黒い風車、まるでスリラーの神様・アルフレッド・ヒッチコック監督のスパイ・スリラーを思わせるような、映画好きの心をワクワクさせる、実に良いムードの映画だ。
沈んで暗い色調の英国の風景も、優しくてノスタルジックな雰囲気を湛えている。
小さな一人息子を誘拐された夫婦。夫のマイケル・ケインは、秘密情報部員だが、情報部の協力を得られず、たった一人で敢然と、可愛い息子の救出のために、事件の渦中へと飛び込んで行く。
夫は外から妻に電話をかけて、情報部にも警察にも知られずに、ひとりで会いに来てくれと伝える。
その伝え方が実に面白くて、洒落ている。
と言うのも、もちろん電話は盗聴されているので、夫は妻に約束の場所を口で言う代わりに、電話でミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の音楽を聞かせるのだ。
息子にせがまれて、夫婦が何回となく見に行った映画なのだ。
この映画の最大の見せ場とも言える、風車小屋の中の撃ち合いは、この静かなスパイ・スリラーの数少ないアクション・シーンの一つだが、職人肌のドン・シーゲル監督ならではの、スピーディーでダイナミックな演出で、見応えのある素晴らしいクライマックス・シーンになっていると思います。