2.《ネタバレ》 これは恐ろしくも悲しい映画。
それと同時に、サイレントならではの表現を堪能できる面白い映画です。
あくまで個人的な意見ですが、サイレントはトーキー以上に映像から伝わってくるものが多く、また、ワンショットごとの映像のインパクトも後世の映画と比べるとやはり大きいのではないかと思います。
特に、ロン・チェイニーが出てくる映画になると絶対に書かなくてはいけないのが、何と言ってもまず、あの凄みのある表情。まさに、この映画の通りサタンの化身であるかのような風貌はインパクト絶大です。そんな男がピアノを弾いたりするもんだから、かえって凄みが増すし、「死の歌」なんてピアノの旋律だけで彼女が殺されてしまうんじゃないかとまで思ってしまうほどで、ここは本当に恐怖に満ちたワンシーンです。
他にもピアノを弾くシーンが2回ほど出てきますが、音が聞こえてこないだけに想像力がいつも以上に働いてしまい、サイレント特有の余計に怖さが伝わってくるような錯覚を覚えます。
また、暖炉のギミックや小窓から覗くために懸垂をしながら上に昇っていくシーンも目を引いてこれまた面白いし、その時にカメラもそれを追って上方向に移動していったのが室内撮影では珍しいなと思い、ここはちょっと不思議な感覚があります。
ところで、Penaltyとは、また何という皮肉だろう。
街を支配しようと考えたのは脚を失ったことと因果がある為で、彼に非があるとは当然言える訳もない。脳を手術したことで善人になり、過去を悔い改める気持ちが芽生えてきたということか?などと考える以外に答えが出てきません。
新たな人生の一歩を踏み出した矢先の悲劇。撃たれた理由もわからずに死んでいってしまい、今までにないくらい胸が痛む思いがしました。