69.《ネタバレ》 この仕切り直し作品のノーマルな人間とミュータントの関係性は、
つまるところこれまでの人類が歩んできた誤ちの歴史の
合わせ鏡のような描かれ方をしていた。
冒頭、ナチスが後のマグニートから親を引き剥がす場面からも
それが物語られており、ナチスがユダヤ人にしてきた行為は、
行く末の人類がミュータントにする行動のそれでしかなく、
また、プロフェッサーXとマグニートが出会ってからも同様に、
リンカーン像の前で二人でチェスをするというのも、行く末の彼らが歩む道、
つまり人類の歩んできた道を暗示しているように見えた。
特色を持ったコマを使い、互いに相手のコマを潰し合い、
相手の包囲網へ入り込み、キングを潰すという目的のゲーム。
それはつまり戦争の仕組みであり、植民地や奴隷などにも比喩されてくる。
さらには世界人権宣言、黒人奴隷からの解放、
そんな非差別の象徴であるリンカーン像の前で、
チェスをするというのは、もはや直喩的な表現で人類の歴史を、
ミュータントの行く末を表現しているようにも見えた。
それらが意味するのは、ただ、観ているだけで差別され、区別される側の人間の思いに感情移入し、
差別に対する反対的な意識をなんの違和感なく自然と抱ける、その構造の見事さが素晴らしい。
また、当然のように観客から求められる、超人的な能力を活かしたアクションシーンや
訓練シーンは人物それぞれの特色を活かし、高揚感、躍動感たっぷりに描いており、
第三次世界大戦を阻止するという主軸の物語も、ケビン・ベーコン演じるショウの
圧倒的な強さも相まって緊張感たっぷりに楽しく観ることができた。
そして、プロフェッサーXとマグニートの理想像というのが、
最終的に全人類が目指すべき理想像と現実に結びついてくるところが、
何より面白く、この映画のすごいところだと思う。
次回作も是非マシュー監督で観たい。