1.《ネタバレ》 見知らぬ男がとある家族の中に入り込んで巻き起こる騒動を描く。そのシュールな設定に惹かれて鑑賞した。
加川が小林家に入り込んでいく一連のシーンは不気味なものを感じた。面と向かっての争いを好まない日本の家族ならでは起こりうる設定でスリリングである。遠慮と遠慮の隙間の中に安住する彼は少しずつ家族の絆に楔を打ち込んでいく。そもそもこの家族は、少し複雑な関係性を持っていた。小さな印刷屋を営む幹夫は小さな娘がおり、前妻と離婚した後、後妻としてかなり年下の夏希を娶っている。そしてそこに幹夫の姉である清子も出戻りで同居している。夏希にしても清子にしても、どこかこの家に住んでいることに違和感がある。ここにこの映画の肝がある。「家族とは何だろう。他人とは何だろう」ということをこの映画は問い直してくるのである。
どこまでが家族でどこからが家族ではないのか。更に言えば、日本ではたらいている外国人は日本人ではないのか。その閾はそもそも存在するのか。等々のテーマが混沌と入り混じっている映画だった。キャスト(特に古舘寛治の鵺のような存在感は出色)は好演しており、もう少し脚本を整理すればもっと面白かったと思う。どこに着地させるのか楽しみにしていたが、終盤はやりっぱなしの感が拭えなかった。どうせならもっと激しくぶっ壊して欲しかった。