47.《ネタバレ》 刑事コロンボシリーズの犯人像は大きく2つに分けられると思います。1つは富も地位もあり、野心家で自信家。己の野望の為なら殺人という手段も臆することなく実行に移す人物像。もう1つは己の愛するものが今にも奪われそうで、それを守るため殺人を犯してしまう、哀れみを感じさせる人物像。こちらは少数派。勿論本作のエイドリアンはこの後者に属する。また、本作は他のシリーズ作品とはかなり異なった印象を受けます。いつもなら犯人はコロンボの執拗な食い下がりに必ず一度は感情的になってしまう場面がありますが、本作のエイドリアンからはそんな雰囲気は感じ取れない。警部もいつものユーモラスな雰囲気はかなり抑え気味であるように感じられます。作品全体の雰囲気が実に穏やかです。エイドリアンと秘書の秘められたドラマも印象に残る。ドナルド・プレザンスとピーター・フォークという俳優の持つ温かみがあって人間味を感じさせる雰囲気、この2人の魅力がとても上手く融合していますね。時間にすると短いですが、エイドリアンが崖から戻ってきてコロンボに見つかって以降ラストまでは実にいい味わいがあります。このラストはシリーズ屈指の出来だと思います。警部に見つかり、ほっとしたような笑顔を見せる。そして「刑務所は結婚より自由かもしれませんな」と言う台詞。まるでエイドリアンはそこに警部が待っているのを願っていたようにすら感じられました。 【とらや】さん [DVD(吹替)] 8点(2009-08-09 20:20:29) (良:3票) |
46.コロンボシリーズは、子供の頃放送が楽しみで欠かさず観ていました。毎回、犯人を応援していたのは言うまでもありません。この作品は犯人がワインを海に投げ捨てるシーンが強烈に印象に残っていました。30年振り位に観ました。何時もの、芒洋とした姿で覆い隠した、深い洞察力と権威に臆することの無い強靭な意志で犯人に食らい付いてゆくコロンボとは趣きが異なっています。人生でワインしか愛せなく、愛するものを守るため凶行に走ってしまったエイドリアンを見つめる眼差しに思いやりと敬意、悲しみを感じました。エイドリアンの完全犯罪の破綻がワインであるのも自縄自縛とはいえ悲しいです。コロンボの「自供してくれますね」「なによりも嬉しいお褒めの言葉です」には酔いしれました。上質なワインのように味わい深く、心地良い余韻が残る素晴らしい作品に乾杯。 |
45.《ネタバレ》 さまざまな本シリーズの犯人を見てきましたが、エイドリアンが最もコロンボに近い人物だったかと思います。偏執的で、なんかイチイチちょっと嫌味な感じで。女性に弱そうなところもそうですな。ですので、最後のシークエンスは、コロンボにしてもエイドリアンにしても、やっと分かり合える友だちに巡り会えたような、同じ病状の人を相哀れむような、そんなやさしい印象がありました。 【なたね】さん [地上波(吹替)] 7点(2019-05-17 21:54:33) (良:2票) |
《改行表示》44.《ネタバレ》 昔何度もテレビで放映され、その度見て好きになった映画だと思う。何度も見ることができたのは、ミステリーにありがちな謎解きがすべてではなく、見る者に深い感銘を与えるからであろう。 エイドリアンがワインを愛する心は尋常ではない。本当に愛して愛して、慈しむ心である。その心が故に、義弟の言動を許せなかったのだと思う。 またコロンボも彼を追いつめるのに、ワインの知識だけを学んだのではない。ワインを愛する心を身につけたからこそできたのだと思う。 結末はあざやかであり、爽やかである。欲得で結婚を迫る秘書を排し、友として心が通じたコロンボのもとへと従った。 【ESPERANZA】さん [地上波(吹替)] 8点(2011-02-09 16:09:36) (良:2票) |
43.アタシゃね、とにかくホシをあげるためなら何だってやるンですよ。いやね、殺しに良いも悪いもありゃしません。理由はなんであれ、殺しは殺しです。今回のホシもね、いつもどおり追い詰めようと思ったんです、途中まではね。でも、この人、ワイン以外のことでは感情ってもんが働かないんですよ。見てて分かったでしょ? だからしょーがない、奴さんの感情を動かすために、アタシゃ、ワインについてちょっとばかし勉強したんです。奴さんと会話の糸口つかむためにね。ワイン倉の温度調節機のこと? そりゃ、勘ですよ、勘。ワインのプロにしちゃぁ、温度調節切っちゃうなんて信じられませんけどねぇ。そんなの、アタシがホシに共感して尊敬しちゃうってことと同じでね。そりゃ、ありえません、アタシには。勘違いしないでくださいよ、ホシの立場だったらどう考えてどう行動するかは考えても、奴らの気持ちに寄り添うなんてことは出来ません。え? じゃ何であんな余韻たっぷりのラストにして、車の中で乾杯したかって? 決まってます、ホシを無事おとしたことへの安堵の表れですよ。レストランでの一件は、ありゃバクチですからな。あの人にボロ出させるには、ワインで動揺させるしかないと思ってました。計画通り行ってホッとしましたよ。全てはあの人を懐柔して真実を浮き彫りにするためのパフォーマンスだってことくらい、アタシのことよく知ってる人なら分かるでしょ? あ、そうそう、ちなみにカミさんの子守りがどーのこーのって話は、ありゃ全部出任せです。最初からカミさん連れて来るつもりなんかなかったんでね。 【すねこすり】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2010-02-02 15:09:59) (良:1票)(笑:1票) |
42.この作品に敬意を表して、ワインを飲みながら鑑賞しました(2度目)。グラスの持ち方、デカンタの役割など、ワインの知識も多少勉強になりました。一つのものを極めた者の、こだわりを逆手に取ったしかけが、ポイントですね。犯人が、最後に、秘書に結婚を迫られたことについて「刑務所は結婚より自由かもしれない」という言葉に、酔いもまわり、思わずうなずいてしまって、あわてて振り返って、かみさんがいなかったので、またうなずいてしまった。 【パセリセージ】さん 7点(2004-02-21 15:05:21) (良:1票)(笑:1票) |
41.コロンボシリーズ『最優秀作品賞』と『最優秀主演男優賞』にノミネートされて然るべき作品。主演男優賞はもちろん、ドナルド・プレザンスです。この作品、何と言うか他の作品とは『匂い』が違います。通常コロンボ作品の興味はコロンボが如何にして犯人を追い詰めるのかに集約されますが、本作は一つの優秀な『ドラマ』として観るものを引き付けていきます。そうなんです。これはミステリーというよりも正に良く出来たドラマです。それともう一つ。映画的な手法が見受けられます。たとえばカメラワーク。ワイナリーでコロンボとエイドリアンが別れるシーンでは、二人のアップから一気に引いて遠距離からのツーショットになりますが、これはブドウ畑を空撮していると思われるシーンとあわせて他のコロンボではあまり見られないシーンです。オマケにもう一つ。テレビ放送版では無かったと思うのですが、DVD版ではレストランのマネージャーとソムリエが思い切ったボケをかましてくれてます。まぁとにかく、この作品は推理物としてよりワインが大好きな男と、一人の刑事の極めてよく出来たドラマとして評価するべき作品です。警部、乾杯です。 【pony-boy】さん 8点(2003-11-22 14:01:54) (良:2票) |
40.初見の際、最後の場面にたまらなく切なくなり、家人の目を避けこっそり涙を拭ったことは、永い年月を経た今でも忘れられない思い出。「コロンボ」で泣かされるとは、予想もしていなかった。この作品は、あらゆるジャンルを超えた、極上の人間ドラマだと思う。 【トバモリー】さん 9点(2003-11-03 11:44:58) (良:2票) |
39.卑しい心の人ばかりが殺人犯となるわけではない。卑しい心の弟を殺害してしまう気持ちが重々伝わってきました。殺害に便乗する秘書も卑しいですが、この犯人は憎めない。最後のコロンボとの乾杯は名場面ですよね。 【SUPISUTA】さん [地上波(吹替)] 7点(2019-03-31 13:34:21) (良:1票) |
《改行表示》38.《ネタバレ》 初見時は小学生だったけど、印象に残った一本でした。犯人に見覚えがあったからです。「大脱走」で目が見えなくなる人。本作以前にはミスター・スポックが出たこともあって、アチラの俳優なんて数えるほどしか知らない頃だから、なんだか嬉しかったのです。同時期に放送していた和製刑事ドラマは犯人を追いかけて殴らなければ気が済まないものばかりで、このシリーズは鮮やかな対照を成していました。「知的」な刑事ドラマがあるのだと感心して、NHKの不定期放送を楽しみにしていました。 余談はさておき、シリーズの中でも「名作」に数えられる本作。それは犯人を追い込むコロンボの手法や策略よりも、犯人側へ共感させるストーリーが評価されているからでしょう。今回、ワインを愛するが故に弟を殺した動機部分よりも、秘書の脅迫に嫌気した犯人の諦観に感じ入りました。彼は秘書のことを悪く思っていなかった。むしろ、ビジネスパートナーとして好感を持っていたとも言える。でも、弱みを握って結婚を迫った彼女が心底恐ろしくなったのだと思います。男目線の感想ですが、中年女性の怖さが強烈に伝わって来ました。彼は「彼女の牢獄」よりも「本物の牢獄」の方がマシだと思った訳です。 コロンボがそこまで理解して別れのワインを用意したかどうかは分りません。「うちのかみさん」とは上手くやってるように聞こえますからね。 【アンドレ・タカシ】さん [地上波(吹替)] 6点(2014-02-11 03:49:56) (良:1票) |
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《改行表示》37.《ネタバレ》 シリーズの中でも名作と誉れの高いだけのことはある。 コロンボが共感を覚える犯人の登場はこの作品からで、それまでの犯人像は冷血で利己的な憎むべき対象として描かれることが多かった。 殺された異母弟よりも純粋にワインを愛した兄のエイドリアンに同情してしまう。 ワインの専門知識がストーリーにうまく生かされている。 ワインはボトルからデカンターへ移しかえることで息づかせる。 ここでミスがあるとワインが台無しになるので、高価なワインは誰にも任せず自分でやる。 ところが、一度だけ(義弟の殺害直後)他人にこの過程を任せている。 エイドリアンは吉報へのお礼だと説明するが、「手は震えませんからね」とチクリと核心を突くコロンボの言葉に、水面下での攻防を見るようでおもしろい。 逮捕の決め手になったのもワインの性質に関わることだった。 犯行時、ワイン庫の空調を止めたために40度を越えた猛暑でワインが酸化してしまった。 このワインがダメになったことを識別できる舌を持つのはエイドリアンを含めてもごくわずか。 皮肉な話だが、いさぎよく自供を承諾する犯人に好感が持てる。 その伏線として、何よりも大切なワインがダメになったことと、秘書に秘密を握られ迫られていたことが効いている。 もともと善人なので、重荷を下ろして楽になりたい気持ちもあったのだろう。 ラストで乾杯する二人には互いへのリスペクトを感じる名シーン。 【飛鳥】さん [DVD(吹替)] 8点(2013-11-01 21:45:06) (良:1票) |
36.あらゆる意味で格式高い一本。あくどい犯人相手に嫌味な態度で臨む「二枚のドガの絵」よりも、同情できる犯人に敬意を持って接するコロンボが見られる本作こそ、個人的には最高傑作に推したい。 【かんたーた】さん 8点(2004-11-15 19:31:24) (良:1票) |
35.《ネタバレ》 まず感心したのは、オープニング始まってわずか5分たらずの間に犯人の生い立ちや性格、又いかにワインを愛しているかということを全て描ききってしまっていること。そしてその後に弟との衝突があって、とっさの殺人に至るというのだから、これは犯人に共感せざるをえないですよ。全編を通しても犯人主点で描かれていますからね。犯人がどれほどワインを愛しているかという事は、コロンボとの会話やレストランでのエピソードなどを通して十分に理解できたし、また、真相を知ってしまった秘書との関係も絶妙でした。普通の犯人ならば、秘密を握られたことでその秘書も始末しようと考えるだろうが、この犯人は違った。結婚を迫られてもなんとか話し合いで解決しようとするんですね。その辺もまた共感し得る要因だと思います。だからこそ、ラストの「刑務所の方が結婚より自由かもしれない」というセリフが生きてくる。そして、見事なエンディング。なんというエレガントかつ美しい幕引きでしょう。実に味わい深い作品でした。 【きのすけ】さん 8点(2004-01-27 17:05:48) (良:1票) |
《改行表示》34.これはほんとに犯人に同情しますね。それにいつもは犯人もコロンボのしつこさにエキセントリックになるのだが、これは、犯人役のD.プレザンスもなんとも優雅に演じきっていた。最後の終わり方もいつもと違ってとても好きです。それで、私はこの作品で初めてコロンボさんが子供のことを話しているのを聞いた。いつもは、かみさんの事ばかり出てくるので子供のことは気にとめなかったので。なかなか味のある作品だったです。 【fujico】さん 9点(2003-10-27 22:11:55) (良:1票) |
33.コロンボシリーズの最高傑作です。これ以上のものは私の中ではありません。ドナルド・プレザンスが愛すべき犯人役を見事に演じてます。コロンボがワインに関して勉強して、最後に乾杯するシーンは何度観てもジーンときますね。 【オオカミ】さん 9点(2002-08-17 15:44:04) (良:1票) |
32.コロンボシリーズの全ての要素が最高に昇華され出来上がった奇跡の作品。コロンボ初見の方はこの作品から見てはいけません。 【代書屋】さん [インターネット(字幕)] 10点(2022-07-10 15:38:41) |
《改行表示》31.《ネタバレ》 なかなか丁寧につくられてましたね。 ワイン命の兄と奔放な弟、殺人の動機はコロンボではありがちですが、 二人を取り巻く人間が良かったです。 特に犯人の秘書、アレはなかなかのもんです。 【ろにまさ】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2014-10-26 22:50:34) |
《改行表示》30.犯人かわいそう~!あんなバカ弟、殺されて当然なのに・・・ でもそのバカ弟も婚約者に愛されており友人からの評価も高い。そして哀れむべき兄も「変人だ」ときちんと描写されている。このように丁寧に「人間」が描かれているのところが名作であると思いました。「二級品の整理」のセリフの切なさ、人事部に案内されるコロンボ・・・文句なし!大好き!10点! 【Bebe】さん [CS・衛星(吹替)] 10点(2014-01-29 19:24:46) |
《改行表示》29.今回の犯人はワイン工場を経営する男。殺害方法がややわかりづらいも、 スッポンのようにしつこいコロンボのキャラがとにかく笑える。犯人を追いつめるラストでは、 ワイン専門家としては気づくのが少々遅すぎるという感もなきにしもあらずだが、 コロンボの仕掛けがどんでん返しぎみに効いていた。シナリオとキャラに安定感があって、 誰もが楽しめる万人向けのシリーズ。 【MAHITO】さん [地上波(吹替)] 6点(2012-05-29 06:33:15) |
28.《ネタバレ》 コロンボが真相をどう推理するか、とか、謎解きの過程を楽しむ、というよりも、ヒューマンドラマとして楽しめる作品だと思います。ただ、実際にエイドリアンのような人が自分の回りにいたら、殺された弟同様「頭がおかしいんだ」と思ってしまうでしょうね。ワインの競売の前にも「アメリカ経済に刺激を与えにいきますか」など、一般人が聞くとイラッとするようなセリフも・・・。最後、大切なワインが全部ダメになったとわかった時、彼の人生もそこで終わってしまったんですね。そして、残りの人生、刑務所で哀れに暮らすのかと思うと、同情してしまいます。 【ramo】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2011-09-20 17:22:48) |