1.《ネタバレ》 まず前半で重要なのは、理不尽な仕打ちにはしっかり対抗する構えを見せないと、相手がどこまでもつけ込んで来る恐れがあるということである。主人公はもともとコミュニケーション能力が不足だったのか、三度続けて適切な対応を怠ったことで集中攻撃されたようだが、しかしその後は焼却炉での反撃で迫害側の一部に打撃を与え、同時に教員の弱味も衝いた形になっていた。これを一定の勝利と捉えて、あとは川原で青いのが言ったことを心にしっかり持てばそれでもよかったと思われる。
しかし後半に入ってからは不満が多くなる。原作がどうなっているのか一応読んだところ(年少者向けなので読みやすい)、原作の筋立てを比較的忠実に追いながらも巧妙にアレンジを加えていたようだが、その変えた部分が不満の原因だったようである。
まず映画では、教員の家族関係の話を加えることで、教員もまた救われるべき者として位置づけていたらしい。しかしそのように同情を引く扱いにされてしまうと、そもそも教員たるものが児童を監禁し暴行を加えた上に殺そうとまでしておいて、本当は怖かったなどと泣きを入れれば許されるのか、という怒りがかえって誘発される(お前が死んで妹を泣かせろ)。
また映画では、主人公と教員が対等な立場で和解したかのような演出になっており、これで父親の言った“話せばわかる”式の綺麗事がそのまま通った形になっているのが気に食わない。もし相手が単純に他人を虐げたい性癖の者であったりすれば和解しようなど有害無益であり、ここは実力で対抗したからこそ要求が可能になったというように、あくまでパワーバランス的な解釈でなければ納得できない。愚直に理解を求めていれば願いが天に通じるとでもいいたいようなのは戦前の発想か。
そのように、いわば“製作側の良心”のような改変を加えたことで、かえって自分としては毛嫌いするタイプの映画になってしまっていた。ちなみに主人公の姉を死なせたのはかわいそうだ。
なお出演者では谷村美月嬢が青い顔で迫力を出しているが、背景色との調和に配慮されていたようで特に違和感もなく、最後には清潔感のある姿もちゃんと見せていた。また子役では三吉彩花という人が出ていて、明らかに美少女だがかなりの変顔をしている場面があったりする。ほか知っている範囲では近藤真彩という人の顔も見えたが、広瀬アリスは誰がそうなのかわからなかった(目立っていたはずだが)。