7.《ネタバレ》 ボーイスカウトとゾンビの組み合わせといえば「バンクス/ゾンビキャンプ」(2013年)という前例がありましたが、あちらが子供向けに仕上げていたのに比べると、こちらは背伸びしたい若者向けって感じの内容でしたね。
グロい場面や、エロい場面なんかも適度に配してあるし、何よりティーンエージャーの成長物語として作ってある。
である以上、何時まで経っても大人になりきれない自分としても、大好物な品のはずなのですが……
要所要所で引っ掛かる部分があって、手放しで絶賛出来ないのが残念でしたね。
いやもうホント、出来は良いんですよ。
ゾンビ映画ってジャンルは、百本観たら八十本以上は「外れ」と感じてしまうくらい「当たり」率の低いもんなのだけど、本作は間違い無く「当たり」の部類。
映像や音楽もしっかりしていますし、途中で間延びする場面も無かったし、娯楽作品として高い水準に達していると思います。
テントを張ったり焚火したりする「ゾンビに襲われる前の楽しい一時」が、きちんと描かれてるのもポイント高いし、お約束の武器としてショットガンが登場し、豪快にゾンビの頭を吹き飛ばしてくれるのも良い。
普段は車が壊れても全然手伝ってくれなかった悪友が、ゾンビに襲われている最中には積極的に手伝ってくれる対比なんかも、上手いなぁと感心しちゃいましたね。
主人公達がボーイスカウトという設定を活かした「ホームセンターで材料を集め、自前の武器を作成する場面」も、凄く良かったです。
物語上、特に必要は無いのに爆発シーンを挟み、分かり易く「はい、ここがクライマックスですよ」と教えてくれてる感じなのも、憎めない愛嬌がありました。
じゃあ、何が気に入らなかったのかというと……
本当に些細な事なんだけど、主人公のベンの言動が問題だったんです。
勿論、彼は良い奴だし、真面目だし、自分も彼が嫌いって訳じゃないんですが、何故か肝心な部分で(えっ? 何それ?)って思うような選択したり、行動を取ったりするんですよね。
なまじ彼が「良い奴」で、自分も序盤から彼に感情移入して観ていたもんだから、途中から徐々に(この主人公は、何か違う……)って違和感を抱き始めたのが、失望に繋がっちゃったんだと思います。
そんな違和感が決定的になったのが、パトリック・シュワルツェネッガー演じるジェフの首を切断して「この、カスが」と毒付く場面。
そりゃあジェフは「嫌味なイケメン男子」という、オタク映画における最大の憎まれ役キャラだったけど(ゾンビ化した知り合いを殺しておいて、そんな態度取る?)って引いちゃったんですよね。
なんか首の斬り方も妙に恰好良く、スタイリッシュに描いて「どう? 観客の皆もスカっとしたでしょ?」と言わんばかりの演出していたのにも(悪趣味だなぁ……)と、ゲンナリするばかりでした。
ここは、お調子者の相棒であるカーターが「ざまぁみろ」と罵って死体を蹴るのを「やり過ぎだ」とベンが咎めるくらいのバランスでも良かった気がします。
あとラストシーンにて、共に苦難を乗り越え、絆を育んできたデニースではなく、ケンドルの方と結ばれるというのも、スッキリしない感じ。
作中の人物の立場になれば「映画で描かれたのは、長い人生のほんのワンシーンに過ぎない。ずっと前から好きだったケンドルを選ぶのは当たり前」って話なんでしょうけど、映画を観ている観客からすれば、出番なんて僅かしかないケンドルより、ヒロイン格であったデニースの肩を持っちゃう訳で、どうも納得出来ないんですよね。
それならせめてデニースの目線で(あぁ、ベンに振られちゃった……)的な切なさを出してくれたら、彼女に同情して、切ない余韻が残ったと思うんですけど、それも無し。
良い映画だし、面白い映画だったんですが、肝心の部分が肌に合わないっていう、非常に勿体無いパターンでした。